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1.ギルド編
第22話 はじめての激怒
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「えっ?さっきエイナにぼろぼろにされていたやつが戻ってきたのか?」
「いや、違うだろ。新しいやつがまた来たんだよ!今日は多いな!」
「まぁ、どっちにしろ面白いからいいじゃねえか!」
エイナさんの上げた声、それは今までこちらには無関心だった冒険者の注目を集めるのに十分な声量を誇っていた。
急に集まって来た視線に、慣れていない僕は一瞬気圧されかけたが、だが直ぐに文句を言うべくエイナさんの方へと向き直った。
僕は確かに出来るだけ静かにしてほしいと最初言ったはずだ。
けれどもエイナさんはその僕の言葉を守らなかった。
それは相手の明らかな不手際だ。
「えっ?」
けれども、エイナさんの方へと向き直った僕は文句を言うことを忘れ言葉を失うことになった。
「あんた、何者なの!」
何故なら、エイナさんは僕の方へと憤怒のこもった視線を向けていたのだから。
シュライトさんはいま、恐らく以前の知り合いからも隠れて暮らしている。
そしてそのことを考えれば、今までの知り合いがシュライトさんの署名が入った認定書を見て驚くのはわかる。
もちろんだからといって迷惑なことに変わりはないのだが、それでもまだ理解はできる。
けれども、エイナさんが例えシュライトさんの昔の知り合いだったとしても、僕には何故、彼女が自分にこんなに怒りを露わにして来るのかその理由は分からなかった。
そしてそのせいで思わず僕は言葉を失ってしまう。
「早く答えなさいよ!」
けれどもその僕の沈黙を答えをはぐらかそうとしていると判断したのか、さらにエイナさんは怒鳴って来る。
「落ち着いてくれ!何故そんなに怒っているのか僕には分からない!せめて説明してくれ!」
その態度に、僕はこれ以上黙っていたら手を出されるかもしれない、そう判断して急いでエイナさんに叫ぶ。
「誤魔化さないで!」
だが、その僕の言葉も怒りに油を注ぐことになり、エイナさんの口調はどんどん荒くなっていく。
困り果てた僕は、落ち着くまでなんの反応も返さず、刺激しないでおこうとそう考えて……
「貴方は勇者なんでしょう!」
「っ!」
だが、次の瞬間エイナさんの言葉に動揺を漏らした。
何故ここでエイナさんの口から勇者が出てくるのが僕には分からない。
「それはいったい……」
けれどもこの言葉を無視してはいけない気がして、僕は口を開きかけて、だがその時にようやく周囲の様子に気づいた。
「おい、なんの騒ぎだよ!」
「なんか勇者とか聞こえたけども……」
そう、いつのまにかエイナさんの怒鳴り声に引き寄せられてかなりの人数の冒険者が僕達の周囲に集まっているというそのことに……
◇◆◇
いつのまにか周囲を囲んでいた冒険者、その姿を見て僕は逃げることを選択した。
ここで認定書の話をするなんて論外だ。
恐らくここで逃げれば僕は不正をしようとして、けれどもバレてギルド職員と口論になり、最終的に逃げていった間抜けという認識になるはずだ。
だとすれば無駄な騒ぎは起こらないだろう。
何せそんな話はこの場所では腐るくらいあるはずなのだから。
そして逃げてから騒ぎの落ち着いた頃に、エイナさん以外の人間がギルドの受付をしている時に昇格を頼めばいい。
つまりここは多少の汚名を被ることになったとしても、逃げる以外の選択肢はない。
そして一瞬でそう決断した僕は、素早く認定書へと手を伸ばした。
これを正式な認定書で、そしてシュライトさんから貰った大切な餞別だ。
最終的に推薦が無くなっても這い上がる自信はあるが、置いていくつもりはない。
しかし、僕の手が届くその少し前にエイナさんが認定書を取り上げた。
「誤魔化して逃げようとする気!」
「っ!」
そして次の瞬間、エイナさんはその認定書を握りつぶした。
実は認定書に使われる紙は実はかなり特殊で、それだけでかなりの価値を有する。
そしてさらに認定書は僕にとって、シュライトさんから貰った餞別だった。
恐らく誤解が解ければまた新たな認定書は発行して貰えるだろう。
けれどもこの認定書は僕にとって本当に大切なもので……
「おい、やっていいことと悪いことがあるだろうが!」
「っ!」
ーーー だから、その大切なものをエイナさん、いや、エイナが握りつぶした時僕の中でどこかが切れる音がした。
僕の怒りと共にエイナに向けた殺気に彼女の顔に驚愕が広がる。
しかし、それを無視して僕は彼女を睨みつける。
まずそもそもギルドと冒険者は契約関係にある。
もちろんその契約を冒険者が破ることがあれば多少の暴力は許される。
けれども、基本的に契約を遵守している冒険者にはギルドはある敬意を持って接しなければならない。
だからこそ、ギルド職員は自分よりもランクの低い冒険者に敬語を使っているのだ。
そして今回の僕にはなんらかの不手際があっただろうか?
否。そんなもはない。
それどころか最初から静かにしてくれとそう頼んだことさえ破られている。
「つまり、僕が今からすることは正当な権利だ」
「っ!」
だから、今回に限っては僕は遠慮などするつもりはなかった。
エイナは魔法で異空間に収納していたらしい大剣を取り出し、僕は腰につけた剣の柄を握る。
そして次の瞬間、2人の冒険者、それも両方とも超常の力を持つもの同士の戦いが始まった。
「いや、違うだろ。新しいやつがまた来たんだよ!今日は多いな!」
「まぁ、どっちにしろ面白いからいいじゃねえか!」
エイナさんの上げた声、それは今までこちらには無関心だった冒険者の注目を集めるのに十分な声量を誇っていた。
急に集まって来た視線に、慣れていない僕は一瞬気圧されかけたが、だが直ぐに文句を言うべくエイナさんの方へと向き直った。
僕は確かに出来るだけ静かにしてほしいと最初言ったはずだ。
けれどもエイナさんはその僕の言葉を守らなかった。
それは相手の明らかな不手際だ。
「えっ?」
けれども、エイナさんの方へと向き直った僕は文句を言うことを忘れ言葉を失うことになった。
「あんた、何者なの!」
何故なら、エイナさんは僕の方へと憤怒のこもった視線を向けていたのだから。
シュライトさんはいま、恐らく以前の知り合いからも隠れて暮らしている。
そしてそのことを考えれば、今までの知り合いがシュライトさんの署名が入った認定書を見て驚くのはわかる。
もちろんだからといって迷惑なことに変わりはないのだが、それでもまだ理解はできる。
けれども、エイナさんが例えシュライトさんの昔の知り合いだったとしても、僕には何故、彼女が自分にこんなに怒りを露わにして来るのかその理由は分からなかった。
そしてそのせいで思わず僕は言葉を失ってしまう。
「早く答えなさいよ!」
けれどもその僕の沈黙を答えをはぐらかそうとしていると判断したのか、さらにエイナさんは怒鳴って来る。
「落ち着いてくれ!何故そんなに怒っているのか僕には分からない!せめて説明してくれ!」
その態度に、僕はこれ以上黙っていたら手を出されるかもしれない、そう判断して急いでエイナさんに叫ぶ。
「誤魔化さないで!」
だが、その僕の言葉も怒りに油を注ぐことになり、エイナさんの口調はどんどん荒くなっていく。
困り果てた僕は、落ち着くまでなんの反応も返さず、刺激しないでおこうとそう考えて……
「貴方は勇者なんでしょう!」
「っ!」
だが、次の瞬間エイナさんの言葉に動揺を漏らした。
何故ここでエイナさんの口から勇者が出てくるのが僕には分からない。
「それはいったい……」
けれどもこの言葉を無視してはいけない気がして、僕は口を開きかけて、だがその時にようやく周囲の様子に気づいた。
「おい、なんの騒ぎだよ!」
「なんか勇者とか聞こえたけども……」
そう、いつのまにかエイナさんの怒鳴り声に引き寄せられてかなりの人数の冒険者が僕達の周囲に集まっているというそのことに……
◇◆◇
いつのまにか周囲を囲んでいた冒険者、その姿を見て僕は逃げることを選択した。
ここで認定書の話をするなんて論外だ。
恐らくここで逃げれば僕は不正をしようとして、けれどもバレてギルド職員と口論になり、最終的に逃げていった間抜けという認識になるはずだ。
だとすれば無駄な騒ぎは起こらないだろう。
何せそんな話はこの場所では腐るくらいあるはずなのだから。
そして逃げてから騒ぎの落ち着いた頃に、エイナさん以外の人間がギルドの受付をしている時に昇格を頼めばいい。
つまりここは多少の汚名を被ることになったとしても、逃げる以外の選択肢はない。
そして一瞬でそう決断した僕は、素早く認定書へと手を伸ばした。
これを正式な認定書で、そしてシュライトさんから貰った大切な餞別だ。
最終的に推薦が無くなっても這い上がる自信はあるが、置いていくつもりはない。
しかし、僕の手が届くその少し前にエイナさんが認定書を取り上げた。
「誤魔化して逃げようとする気!」
「っ!」
そして次の瞬間、エイナさんはその認定書を握りつぶした。
実は認定書に使われる紙は実はかなり特殊で、それだけでかなりの価値を有する。
そしてさらに認定書は僕にとって、シュライトさんから貰った餞別だった。
恐らく誤解が解ければまた新たな認定書は発行して貰えるだろう。
けれどもこの認定書は僕にとって本当に大切なもので……
「おい、やっていいことと悪いことがあるだろうが!」
「っ!」
ーーー だから、その大切なものをエイナさん、いや、エイナが握りつぶした時僕の中でどこかが切れる音がした。
僕の怒りと共にエイナに向けた殺気に彼女の顔に驚愕が広がる。
しかし、それを無視して僕は彼女を睨みつける。
まずそもそもギルドと冒険者は契約関係にある。
もちろんその契約を冒険者が破ることがあれば多少の暴力は許される。
けれども、基本的に契約を遵守している冒険者にはギルドはある敬意を持って接しなければならない。
だからこそ、ギルド職員は自分よりもランクの低い冒険者に敬語を使っているのだ。
そして今回の僕にはなんらかの不手際があっただろうか?
否。そんなもはない。
それどころか最初から静かにしてくれとそう頼んだことさえ破られている。
「つまり、僕が今からすることは正当な権利だ」
「っ!」
だから、今回に限っては僕は遠慮などするつもりはなかった。
エイナは魔法で異空間に収納していたらしい大剣を取り出し、僕は腰につけた剣の柄を握る。
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