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1.ギルド編
第23話 決着
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突如始まった戦い、先手を取ったのは抜き身の状態で剣を取り出したエイナだった。
「はぁぁぁぁああ!」
僕とエイナの間の机を踏み、僕の方へと大剣を振りかぶった状態で走ってくる。
そして未だ鞘に手をかけた状態で、剣を抜けてさえいない僕へと大剣を横殴りに振るう。
その時のエイナの顔には僕に対する敵意がありありと浮かんでいた。
けれども、この場で僕を殺してはならないことがわかる程度には冷静だったのか、僕へと向けられていたのは大剣の腹だった。
それを見て、相手を傷つけないように気遣える程の冷静さがあるならば僕の話を聞けよ、と僕は一瞬怒りを覚える。
けれどももちろん怒りで我を忘れるわけにもいかず、今は一旦僕はそのことを頭から締め出す。
そして攻撃を防ぐべく剣を抜こうと柄を握った手に力を込めようとして……
「っ!」
……けれどもこちらへと、かなりの速度で向かってくる大剣の姿に僕は剣を引き抜くことをやめた。
剣を引き抜いても無駄だと僕は判断したのだ。
もちろん、それはエイナの剣速が早く、剣を引き抜いていたら防御が間に合わなくなるなんて理由ではない。
たしかにエイナの剣速は想像以上に早かった。
けれどもそれは所詮刃の腹を見せた状態で振るってのことだ。
通常の冒険者ならともかく、僕ならば素早く剣を抜いて大剣と自身の前に剣で防御する自信はある。
けれども、その場合僕の剣は折れるだろう。
僕のもらった剣はシュライトさんに貰ったかなりの業物だ。
けれども細身で、かなり頼りない。
そしてそもそも剣というのは実はかなり脆いのだ。
それは僕の湿地での経験。
まぁ、それは魔力強化という滅茶苦茶な剣の使い方をしていたからというのも間違いなく含まれているのだろうが。
けれども今回はおそらくエイナの使っている大剣もかなりの業物だ。
亜空間から取り出したことがそのことを示している。
そしてあの大質量に対して、下手な防御は武器を失うだけの結果に終わる。
つまり、例えこの一撃を止めることができたとしてもその代わりに武器を失ってしまったなんてことが起こりかねない。
そう僕は判断する。
ーーー そして僕は鞘から剣を抜かずに、柄頭で大剣の腹を受け止めた。
「っ!」
柄頭で受けるため、無理な体勢になったせいか大剣の重みがダイレクトに伝わってくる。
けれども僕は必死に身体に魔力を起こし、魔力強化で何とか大剣を押しこんだ。
「はっ?」
そしてそのあり得ない光景にエイナの目が大きく見開かれる。
当たり前だろう。
こんなこと普通は絶対に出来ない。
何せシュライトさんでさえ出来ないようなことなのだから。
もちろんだからと言って、エイナの剣を柄頭で受けた僕がシュライトさんを超える剣技を身につけているなどの理由ではない。
正直剣の腕だけの話をすれば僕は並みの冒険者程度のものしか持っていないだろう。
一ヶ月でそれだけの実力を身につけたというのは確かに賞賛されることのような気もするが、けれどもその程度の剣技では奇跡が起きたとしてもこんな芸当はできない。
そのはずなのに、僕がこんなことをできた理由、それは反射神経や、動体視力など、また脳の動きをを魔力強化していたからだった。
つまりあの一瞬僕は頭を加速させて周囲が止まっているように状態にして、あの芸当を成功させたのだ。
「何が……」
しかし、そんな理由を知らないエイナは僕が凄腕の遣い手だとでも勘違いしたのか、顔には隠しきれない驚愕が浮かんでいた。
それからその驚愕は少しづつ、僕への恐怖へと変わってゆく。
そしてそのエイナの様子に、ようやくエイナは僕の実力を悟ったことに気づいて笑う。
「くそっ!」
その瞬間、エイナの顔に隠しきれない屈辱が浮かんだ。
恐らく彼女はこの勝負は勝って当たり前のもの、僕は何か不正をしてシュライトさんに推薦させた卑怯者だとそんなことを思い込んでいるのだろう。
実際僕は体力がないわけでも、剣が使えないわけでもないが、決して達人ではない。
身体の動かし方から、強くないと判断されてもおかしな事ではない。
ーーー だが、僕の本当の実力は剣技ではなく、魔力なのだ。
幾らシュライトさんとの鍛錬がきつかったとしても身体に技術を叩き込むのにたった一ヶ月などあり得ない。
一年程度必死に訓練してCランクレベルの剣技を身につけられるかどうかと言った所だろう。
けれども魔力は違う。
魔力を必死に鍛えれば一ヶ月でシュライトさんと互角に戦えるようになる。
まぁ、それも異世界人であることによる様々な条件が重なった結果だが。
それに僕の強みは鍛え抜かれた魔力だけではない。
地球という優れた知識を基本に、組み立てた魔力操作は僕の杜撰な剣技を達人をも超える神速の斬撃に変える。
だから僕はエイナに負けることなどあり得ないとそう確信していた。
しかし彼女はそのことを知らない。
ただ、相手は弱いはずなのに何故か勝てず馬鹿にされたと、そう判断したのだろう。
「うわぁぁぁぁあ!」
つまり僕に挑発された、と思い込んだエイナの顔に怒りが浮かぶ。
そしてその怒りのままにエイナは大剣を頭上に持ち上げた。
もちろん、刃が僕の方へと向いた状態で。
「ぅぁっ、」
「これで、終わり」
だが、その剣が僕へと振り下ろされることはなかった。
大剣を両手で掴んで振り上げた際に、がら空きとなった腹部を僕が剣の柄で殴打したのだ。
そしてエイナはその僕の攻撃にあっさりと意識を失い、あっさりと勝負はついた。
「はぁぁぁぁああ!」
僕とエイナの間の机を踏み、僕の方へと大剣を振りかぶった状態で走ってくる。
そして未だ鞘に手をかけた状態で、剣を抜けてさえいない僕へと大剣を横殴りに振るう。
その時のエイナの顔には僕に対する敵意がありありと浮かんでいた。
けれども、この場で僕を殺してはならないことがわかる程度には冷静だったのか、僕へと向けられていたのは大剣の腹だった。
それを見て、相手を傷つけないように気遣える程の冷静さがあるならば僕の話を聞けよ、と僕は一瞬怒りを覚える。
けれどももちろん怒りで我を忘れるわけにもいかず、今は一旦僕はそのことを頭から締め出す。
そして攻撃を防ぐべく剣を抜こうと柄を握った手に力を込めようとして……
「っ!」
……けれどもこちらへと、かなりの速度で向かってくる大剣の姿に僕は剣を引き抜くことをやめた。
剣を引き抜いても無駄だと僕は判断したのだ。
もちろん、それはエイナの剣速が早く、剣を引き抜いていたら防御が間に合わなくなるなんて理由ではない。
たしかにエイナの剣速は想像以上に早かった。
けれどもそれは所詮刃の腹を見せた状態で振るってのことだ。
通常の冒険者ならともかく、僕ならば素早く剣を抜いて大剣と自身の前に剣で防御する自信はある。
けれども、その場合僕の剣は折れるだろう。
僕のもらった剣はシュライトさんに貰ったかなりの業物だ。
けれども細身で、かなり頼りない。
そしてそもそも剣というのは実はかなり脆いのだ。
それは僕の湿地での経験。
まぁ、それは魔力強化という滅茶苦茶な剣の使い方をしていたからというのも間違いなく含まれているのだろうが。
けれども今回はおそらくエイナの使っている大剣もかなりの業物だ。
亜空間から取り出したことがそのことを示している。
そしてあの大質量に対して、下手な防御は武器を失うだけの結果に終わる。
つまり、例えこの一撃を止めることができたとしてもその代わりに武器を失ってしまったなんてことが起こりかねない。
そう僕は判断する。
ーーー そして僕は鞘から剣を抜かずに、柄頭で大剣の腹を受け止めた。
「っ!」
柄頭で受けるため、無理な体勢になったせいか大剣の重みがダイレクトに伝わってくる。
けれども僕は必死に身体に魔力を起こし、魔力強化で何とか大剣を押しこんだ。
「はっ?」
そしてそのあり得ない光景にエイナの目が大きく見開かれる。
当たり前だろう。
こんなこと普通は絶対に出来ない。
何せシュライトさんでさえ出来ないようなことなのだから。
もちろんだからと言って、エイナの剣を柄頭で受けた僕がシュライトさんを超える剣技を身につけているなどの理由ではない。
正直剣の腕だけの話をすれば僕は並みの冒険者程度のものしか持っていないだろう。
一ヶ月でそれだけの実力を身につけたというのは確かに賞賛されることのような気もするが、けれどもその程度の剣技では奇跡が起きたとしてもこんな芸当はできない。
そのはずなのに、僕がこんなことをできた理由、それは反射神経や、動体視力など、また脳の動きをを魔力強化していたからだった。
つまりあの一瞬僕は頭を加速させて周囲が止まっているように状態にして、あの芸当を成功させたのだ。
「何が……」
しかし、そんな理由を知らないエイナは僕が凄腕の遣い手だとでも勘違いしたのか、顔には隠しきれない驚愕が浮かんでいた。
それからその驚愕は少しづつ、僕への恐怖へと変わってゆく。
そしてそのエイナの様子に、ようやくエイナは僕の実力を悟ったことに気づいて笑う。
「くそっ!」
その瞬間、エイナの顔に隠しきれない屈辱が浮かんだ。
恐らく彼女はこの勝負は勝って当たり前のもの、僕は何か不正をしてシュライトさんに推薦させた卑怯者だとそんなことを思い込んでいるのだろう。
実際僕は体力がないわけでも、剣が使えないわけでもないが、決して達人ではない。
身体の動かし方から、強くないと判断されてもおかしな事ではない。
ーーー だが、僕の本当の実力は剣技ではなく、魔力なのだ。
幾らシュライトさんとの鍛錬がきつかったとしても身体に技術を叩き込むのにたった一ヶ月などあり得ない。
一年程度必死に訓練してCランクレベルの剣技を身につけられるかどうかと言った所だろう。
けれども魔力は違う。
魔力を必死に鍛えれば一ヶ月でシュライトさんと互角に戦えるようになる。
まぁ、それも異世界人であることによる様々な条件が重なった結果だが。
それに僕の強みは鍛え抜かれた魔力だけではない。
地球という優れた知識を基本に、組み立てた魔力操作は僕の杜撰な剣技を達人をも超える神速の斬撃に変える。
だから僕はエイナに負けることなどあり得ないとそう確信していた。
しかし彼女はそのことを知らない。
ただ、相手は弱いはずなのに何故か勝てず馬鹿にされたと、そう判断したのだろう。
「うわぁぁぁぁあ!」
つまり僕に挑発された、と思い込んだエイナの顔に怒りが浮かぶ。
そしてその怒りのままにエイナは大剣を頭上に持ち上げた。
もちろん、刃が僕の方へと向いた状態で。
「ぅぁっ、」
「これで、終わり」
だが、その剣が僕へと振り下ろされることはなかった。
大剣を両手で掴んで振り上げた際に、がら空きとなった腹部を僕が剣の柄で殴打したのだ。
そしてエイナはその僕の攻撃にあっさりと意識を失い、あっさりと勝負はついた。
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