異世界巻き込まれ転移譚~無能の烙印押されましたが、勇者の力持ってます~

影茸

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1.ギルド編

第48話 英雄認定

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 ポイズンウルフの毒に侵され、死を覚悟して目を閉じた僕。
 けれども、目を開けた時僕を待っていたのは死後の世界の天使などではなく……

 「英雄様が起きたぞぉ!」

 ……やたらハイテンションな老人だった。
 いや、なにこれ?
 と、一瞬僕の思考は止まったが、そのおじいちゃんが白衣を見に纏っていることに気づき、彼が医者であることを悟る。

 「はぁ……助かったのか……」

 そして、毒に侵されているとはとても思えない軽い身体に、大きな安堵の息をもらした。
 どうやらポイズンウルフの毒に関しては無事解毒されているらしい。
 ポイズンウルフのような毒に関しては特別な治癒術式が必要だとか聞いたことがあるのだが、運良く使える人がこの場にいたのだろうか。

 「おぉ!」

 そんなことを考えながら身体を動かして見た僕は、すんなりと動くその動きに思わずそう感嘆の声を漏らしていた。
 あの時、僕はポイズンウルフの毒を除いてもボロボロの状態だった。
 何せ魔力を何度も暴走させ、最終的には身体が限界に至る状態まで追い込んだのだ。
 そしてその身体の状態では傷ついて直ぐならともかく、シュライトさんのポーションでも傷ついて時間が経ってから飲んでも後遺症が残るのではないかと思い込んでいたのだが、まるで身体にはそんな様子が見られなったのだ。

 「てことは、ギルド職員は大丈夫か。何せポーションで回復していたもんな……」

 とそこまで考えて、ようやく僕は事件がとりあえずは無事に終わったことを悟り安堵した。

 「どうやら、身体に不調は無いようですな英雄殿。私の治療が間に合って良かった良かった」

 「貴方が僕の治療をしてくれたのですか!ありがと……え?」

 そしてそう話しかけて来てくれたおじいちゃんに僕は改めて頭を下げてお礼をしようとして……

 ……けれども、その老人の言葉の中に聞き逃してはならない単語かあったことに気づいて固まった。
 いや、気のせいに違いない。
 何故突然英雄なんて呼ばれるようになるのだ。
 そんなことがあり得るわけがない、と僕はそう思い込もうとして……

 「英雄殿、どうしました?」

 しかし、そんな現実逃避は老人の言葉によって意味をなくした……

 「あの……」

 「はい?」

 「何でそんな風に呼ばれるようになったのか、教えてもらえません?」

 そして僕は突然の異常事態に対応できず、頭痛がし始めた頭を抱えながらそう口を開く。

 「ええ、分かりました」

 そんな僕の態度に、一瞬老人は何でそのことを知らないのか、とでもいうように顔に驚愕を浮かべたが、次の瞬間今まで僕が寝込んでいたことを思い出し、にこやかな笑みとともに口を開いた……







 ◇◆◇






 今回の件、ポイズンウルフに対して無謀な戦いを繰り広げ、ギルドへの危険をもたらしたのは僕とギルド職員二人の不注意によるものだった。
 だからこそ、例えポイズンウルフをたった二人で倒すなどという、偉業を為しとげたとしても、僕は自分が讃えられるなんて思っていなかった。
 何せ、こんな無謀な戦いに挑むことになったのは僕の自業自得なのだから。

 ……しかし、現実はそうではなかった。

 まず僕に対しては、外から来た人間でポイズンウルフの痕跡に自信を持てるわけがない、ということを加味され、ポイズンウルフを倒した英雄として冒険者たちに伝えられたらしい。
 そしてその代わりに本来なら責任を負うべきになるはずだった、僕と一緒に戦ったギルド職員、パラスだが……

 ……何故か彼も僕ほどではなくとも、英雄として冒険者達に騒ぎ立てられていた。

 つまり、ポイズンウルフを倒した僕たちには殆ど責任の追及がされなかったのだ。
 しかし、本来ならばそんなことはあり得ないはずだった。
 何せ、無事だったとはいえ、一度はギルドを危険に晒したのだ。
 それだけで済むわけがない。
 しかしそれなのに何故僕たちが責任を取る必要がなかったかというと……

 逃げ出していた方のギルド職員、彼に全ての責任が被せられていたらしい……

 そして彼は現在、全ての罪を被せられて牢獄されていて……

 「うん、それはいい」

 そのことを聞いた僕はそう頷いた。
 それは自業自得で、全く庇う気にもならない。

 「……だけど、英雄はやめて下さい」

 ……けれども、自分につけられた名前も普通に苦行だった。
 項垂れ、羞恥に悶える僕。

 けれども、その僕の苦しみを悟る人間はこの場所には存在しなかった……
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