6 / 52
婚約者オフィーリア
公爵令嬢・マーガレットは学園卒業と共に国を出た。
第二皇子妃としての教育を受けて、そのまま婚姻となる。
見送りに出向いたオフィーリアの手を温かな両の手で包みながら、「オフィーリア、殿下をお願いしますね。」とマーガレットは云った。
内々で王太子妃と内定していたであろうマーガレット。
敬愛するマーガレット。
自分に王太子妃など、と不安に曇らせるオフィーリアの深翠の瞳を、マーガレットの蒼い瞳が真っすぐに見つめる。
王太子と同じ色の瞳に、まるで王太子に見つめられているような錯覚を覚えながらも、一人旅立つマーガレットの心中を思えば頷くしかない。
「マーガレット様、どうか、どうかお幸せに」
言葉に詰まりながら伝えたオフィーリアに
「ええ、勿論ですとも」と、マーガレットは美しく微笑んだ。
胸が苦しくなる。
本来ならばマーガレットこそが殿下に寄り添い支え得る人なのだ。
王太子妃に立つなど思いもしていなかったオフィーリアは、王太子妃としての未来も王妃としての己も全く思い浮かべられなかった。
********
婚約候補であった時には月に一度の王太子との会合は、婚約者となってからは週に一度と相成った。
元より聞き役ばかりで、話を振られれば応える程度であったオフィーリアにとって、王太子と二人きりの茶会は覚悟を要した。
それまで自邸にて行われた妃教育は、その場を王城へと移されて、学園が休みの日に登城する。
教育が終わると、その後に王太子との会合となる。
応接室にて香り豊かな紅茶で饗され、王太子の訪れを些か緊張の心持ちで待つ。
王太子・アンドリューとは、もう一年以上の付き合いとなる。
今更、初顔合わせと云うわけではないのだが、二人きりなのは初めてである。
「待たせたね」
穏やかな声色で、約束の刻限より10分ばかり遅れたアンドリューが訪れた。
「はぁ~、疲れた疲れた。君も学園の休みの日まで教育とはお疲れ様だね。」
気さくな物言いも粗野に感じさせず、気のおけない柔らかさな雰囲気を覚えさせるのは流石は王太子である。
多忙は王太子の方であろう。
彼の時間を奪っているような後ろめたさを感じるのは仕方のない事だろう。
「失礼」という一声と共に徐ろに隣に椅子を置いたアンドリューに、オフィーリアは声を出すことが出来なかった。
ガタンと小さな音が立って、椅子に座したかと思うと、よっこらしょとばかりにオフィーリアの太腿に頭が乗る。
あっ、と思わず小さく声が漏れると同時に、「殿下!」という、囁くような、それでいて窘めの強さを持つ侍従の声が重なる。
頭をオフィーリアの腿の上に、身体は隣に並べた椅子に乗せて、所謂「膝枕」である。
驚き戸惑うオフィーリアにアンドリューは
「少し眠らせてもらうよ。半刻したら起こしてしれないか。ああ、君も楽にして休んで。」と宣った。
第二皇子妃としての教育を受けて、そのまま婚姻となる。
見送りに出向いたオフィーリアの手を温かな両の手で包みながら、「オフィーリア、殿下をお願いしますね。」とマーガレットは云った。
内々で王太子妃と内定していたであろうマーガレット。
敬愛するマーガレット。
自分に王太子妃など、と不安に曇らせるオフィーリアの深翠の瞳を、マーガレットの蒼い瞳が真っすぐに見つめる。
王太子と同じ色の瞳に、まるで王太子に見つめられているような錯覚を覚えながらも、一人旅立つマーガレットの心中を思えば頷くしかない。
「マーガレット様、どうか、どうかお幸せに」
言葉に詰まりながら伝えたオフィーリアに
「ええ、勿論ですとも」と、マーガレットは美しく微笑んだ。
胸が苦しくなる。
本来ならばマーガレットこそが殿下に寄り添い支え得る人なのだ。
王太子妃に立つなど思いもしていなかったオフィーリアは、王太子妃としての未来も王妃としての己も全く思い浮かべられなかった。
********
婚約候補であった時には月に一度の王太子との会合は、婚約者となってからは週に一度と相成った。
元より聞き役ばかりで、話を振られれば応える程度であったオフィーリアにとって、王太子と二人きりの茶会は覚悟を要した。
それまで自邸にて行われた妃教育は、その場を王城へと移されて、学園が休みの日に登城する。
教育が終わると、その後に王太子との会合となる。
応接室にて香り豊かな紅茶で饗され、王太子の訪れを些か緊張の心持ちで待つ。
王太子・アンドリューとは、もう一年以上の付き合いとなる。
今更、初顔合わせと云うわけではないのだが、二人きりなのは初めてである。
「待たせたね」
穏やかな声色で、約束の刻限より10分ばかり遅れたアンドリューが訪れた。
「はぁ~、疲れた疲れた。君も学園の休みの日まで教育とはお疲れ様だね。」
気さくな物言いも粗野に感じさせず、気のおけない柔らかさな雰囲気を覚えさせるのは流石は王太子である。
多忙は王太子の方であろう。
彼の時間を奪っているような後ろめたさを感じるのは仕方のない事だろう。
「失礼」という一声と共に徐ろに隣に椅子を置いたアンドリューに、オフィーリアは声を出すことが出来なかった。
ガタンと小さな音が立って、椅子に座したかと思うと、よっこらしょとばかりにオフィーリアの太腿に頭が乗る。
あっ、と思わず小さく声が漏れると同時に、「殿下!」という、囁くような、それでいて窘めの強さを持つ侍従の声が重なる。
頭をオフィーリアの腿の上に、身体は隣に並べた椅子に乗せて、所謂「膝枕」である。
驚き戸惑うオフィーリアにアンドリューは
「少し眠らせてもらうよ。半刻したら起こしてしれないか。ああ、君も楽にして休んで。」と宣った。
あなたにおすすめの小説
【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
私のことを愛していなかった貴方へ
矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。
でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。
でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。
だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。
夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。
*設定はゆるいです。
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
【感謝】
第19回恋愛小説大賞にて奨励賞を受賞しました。
ありがとうございます。
君に愛は囁けない
しーしび
恋愛
姉が亡くなり、かつて姉の婚約者だったジルベールと婚約したセシル。
彼は社交界で引く手数多の美しい青年で、令嬢たちはこぞって彼に夢中。
愛らしいと噂の公爵令嬢だって彼への好意を隠そうとはしない。
けれど、彼はセシルに愛を囁く事はない。
セシルも彼に愛を囁けない。
だから、セシルは決めた。
*****
※ゆるゆる設定
※誤字脱字を何故か見つけられない病なので、ご容赦ください。努力はします。
※日本語の勘違いもよくあります。方言もよく分かっていない田舎っぺです。
【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした
凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】
いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。
婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。
貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。
例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。
私は貴方が生きてさえいれば
それで良いと思っていたのです──。
【早速のホトラン入りありがとうございます!】
※作者の脳内異世界のお話です。
※小説家になろうにも同時掲載しています。
※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)
【完結】大好きな貴方、婚約を解消しましょう
凛蓮月@騎士の夫〜発売中です
恋愛
大好きな貴方、婚約を解消しましょう。
私は、恋に夢中で何も見えていなかった。
だから、貴方に手を振り払われるまで、嫌われていることさえ気付か
なかったの。
※この作品は「小説家になろう」内の「名も無き恋の物語【短編集】」「君と甘い一日を」より抜粋したものです。
2022/9/5
隣国の王太子の話【王太子は、婚約者の愛を得られるか】完結しました。
お見かけの際はよろしくお願いしますm(_ _ )m
【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
しかし、仲が良かったのも今は昔。
レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。
いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。
それでも、フィーは信じていた。
レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。
しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。
そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。
国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。