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追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される

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 大陸の南東に位置するエスト・グランテ王国では、代々竜の血を継ぐ者が王として君臨していた。世界のどこかにいるという『竜の聖女』を手にすることが出来た者が、真の王になれると言われている。
 だが、この数年の間、『竜の聖女』は現れてはいなかった。
 エスト・グランテ王国の国王は世襲制をとっていたが、現在の国王は愚王とされ、国民の心は荒み、疲弊していた。
 そのため国民の間に、『竜の聖女』の再来を望む声が増えてきていたのだった。



※※※



「禍々しい金の瞳に、藍色の髪をした娘・ラピスラズリよ! お前が我が村に災厄をもたらしたのだ!」

 当時住んでいた砂漠のオアシスにある村の村長から、ラピスが追放された時に言われた言葉だ。

(村に飢饉が及んだ原因が私だと、大人たちは言い張っていた。とろとろしている私に、怒りの矛先を向けやすかったのかも……)

 あの頃はまだ十二歳だったラピスは、大人たちに連れられ、商人に売られてしまった。そうして、奴隷を意味する首輪をつけられた彼女は、見世物小屋に入れられた。

(追放されたショックもあったけれど、代わる代わる色んな人から好奇の視線を毎日のように浴びせられて、すごく辛かった)

 そんな中、彼女はとある貴族に買い取られることになった。

「俺の屋敷に、来てもらえるかな?」

 そう言って迎えに来てくれた彼が、今のラピスの主人であるシュタール・エスト・グランテだった。
 ラピスを買う予定の人間は、他にいたらしい。

(けれど、その十倍以上の大金をシュタール様は支払って、私を買ってくれた)

 シュタールは、銀色の髪に、アメジストのような紫色の瞳をした、とても精悍な顔立ちをした青年だ。ラピスよりも十歳年上になるが、まだ年若いと言える。けれども彼はとても優秀な人物で、従兄弟である国王の信任も厚く、すでに宰相の位についていた。 

(優しそうな男の人で良かった)

 一見すると優しい雰囲気を持ったシュタールだったが、それは表の顔であり、実際の彼の性格は少しだけ違った。
 

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