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元令嬢の気高き女騎士ですが、幼馴染の年下騎士に翻弄されて困っています―パワハラですって言われたけれど、あなたのそれはセクハラです―
2※
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彼のあまりの成長ぶりに、私は驚きを隠すことが出来ないでいた。
だが、はっとして、幼馴染から視線をそらしながら、私は毒づいた。
「は! 見た目だけ、どれだけ大人になろうとも、ハデスが病弱なのは変わらない! お前の入団は、副騎士団長の私が絶対に認めない! 良いから、騎士団から去れ!」
そう昔から、ハデスは私の言葉に従順だった。
だから、ここまで強く言えば、絶対に引きさがる。
そう思ったのに――。
「それは約束を守ってくれないということ?」
「ああ、そうだ」
「職権乱用じゃないか、姉さん? それは、最近流行りのパワハラだ。上層部に言うから」
ハデスから出た、予想外の言葉に私は驚かされた。
低くなった彼の声が、耳を打つ。
「パワハラ……だと?」
最近昇進したばかりの私は、少しだけ不安に包まれた。
せっかく女性の身でありながら、ここまで上り詰めたのだ。
パワハラだと周囲に言いふらされるのは癪だった。それに、女性だからと疎ましがっている幹部たちも多い。副騎士団長の座から降格される危険性まで脳裏によぎった。
「くっ……こしゃくな真似を……! だが、弱い者の入団を認めるわけにはいかない……!」
歯噛みしていると、巨大な影がそっと目の前に立ちはだかった。
「どうして、俺が弱いままだって決めつけるんだ? ペルセ姉様……もう、俺は病弱でもなんでもない。僕が本当に弱いままなのか、試してみると良い」
「え――?」
気づいたら、視界が反転していて、執務机の上に押し倒されていた。
ハデスの力は強く、押しのけることが出来なかった。
(隙がないと言われているこの私を……! ここまで成長しているとは!)
だが、認めたくなかった。
「ほら、姉様、ちゃんと強くなっているだろう?」
「ふん、これぐらい大人になっているのだから、当然だろう?」
ふん、と鼻を鳴らしながら、私はハデスにそう言い放った。
「相変わらず強がりだね。ペルセ姉様は、本当はすごく女性らしいのに……」
そう言うと、ハデスが私の頭の上でまとめていた金色の髪をほどいてくる。
「強がりだと……? お前のその発言こそ、セクハラではないか!?」
「ペルセ姉様を女性らしいと言っただけだ。それに、姉様、約束、ちゃんと守ってくれるよね。守ってくれないなら、上層部に――」
「くっ……あんなお前が小さい頃に交わした戯言など……お前はいったい何が目的なんだ!? からかって遊んでいるのか!?」
私の問いに、ハデスが低くて真剣な声で告げた。
「子どもの戯言なんかじゃないよ。姉様、俺は本気だ。ここまで貴女を追いかけてきたのが、その証拠だよ」
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