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 だけど数日後、たまたまテレーゼが王城をうろついていた時のこと。
 第一皇子と第二皇子であるマクシミリアンの話を立ち聞きしてしまったのだった。
 金髪碧眼の第一王子が顔を歪ませている。

「テレーゼ姫の祖国オルスタイン王国が――新国王の妻となった、テレーゼの母が娘を返せと言ってくるとはな……」

 唐突な話に、柱の影に隠れたテレーゼは目を見開いた。
 話の流れはこうだ。
 帝国領としても、再びテレーゼ姫をオルスタイン王国に返すつもりはない。帰したところで政治の道具にされるだけだろう。
 だが、『理由もないのに捕虜をとるのか』と相手側が主張してきている。
 そこで、マクシミリアンとテレーゼの結婚話が上がった。すでに第二皇子と身体の関係があると言えば、相手も引くだろう――と。
 テレーゼと年の近いベルナルドは成人していないから、相手としては不十分だと帝国内で決まったそうだ。
 マクシミリアンが、彼女の父である先王に面倒を頼まれていたこともある。

 そうして、今回の結婚が決まったのだと――。

(マクシム様は、私に好意があったからではなくて……)


 マクシミリアンが口を開く。


「テレーゼは親友の娘だ。俺にとっても娘のような存在だって思ってる。だから、夫婦にはなってもらったが、俺があいつに手を出すことはしない。ほとぼりが冷めたら、俺とは離縁でもなんでもして、好きな相手と結婚すれば良いと思っている」


 衝撃で、テレーゼの足元が崩れて消え去ってしまいそうだった。



※※※



 結局、事の真偽をマクシミリアンに聞けないまま、テレーゼは結婚することになった。
 そうして、望まれてもいないのに、形だけの結婚をすることになったのだ。
 マクシミリアンに結婚式を断られる前に、テレーゼの方から辞退した。
 皇帝に認められるだけの簡単な式をおこなった後、初夜を迎えることになった。

「テレーゼ」

「……」

 同じ褥の中に眠ったが――それきりだった。

 破瓜は痛くて涙が出ると言われるが――テレーゼは純潔のまま、何も語らないマクシミリアンの背を見ながら、心が痛くて泣いた。


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