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17 マクシミリアンside
しおりを挟むそうして――迎えたテレーゼの成人の誕生日。
(遠征に行って遅くなっちまったな……)
甲冑は脱いで、騎士団の略装を羽織るだけ羽織って、マクシミリアンはテレーゼと約束していた花園へと向かった。
今は夜だ。今日は成人を祝った後、明日にでもコスモス畑を見に行けば良い。
約束の場所では談笑が聴こえた。
(テレーゼと……ベルナルド……?)
彼と話す彼女は普段よりも大人びたドレスをまとっていて――そうして、やけに綺麗だった。
何かをふっきたかのように、引っ込み思案でいつも自分の後ろに隠れていたはずの彼女の笑顔は、とても晴れやかなもので……。
彼女の全ては自分が知っていると思っていたのに――。
そうではなかった。
(自分からベルナルドにしておけと言ったはずなのに、俺は……)
若い甥に対して嫉妬している自分に気づいてしまった。
(あれだけ俺が良いと言っていたのに、若い女は薄情だな……)
この日からずっと、マクシミリアンはテレーゼに恋をしていたのだ。
なんだか子どもみたいに腹を立てて、テレーゼとコスモス畑に向かうという約束のことも忘れたフリをした。
約束をそのままにしていれば、律儀なテレーゼが自分から離れないかもしれないという浅はかな気持ちもあったのかもしれない。
初夜を迎え、思い切って手を出そうかと思っていたが――。
憂い顔の彼女を見て――嫌われるのが怖くて手が出せなかった。
せっかく本当に好きな相手と結婚できると思っていたのに、結局引き離してきた自分に対して怒りを覚えているのかもしれない。
背後で啼きむせぶ彼女のことを考えると、彼の胸は軋んだ。
(自分に出来るのはただ一つだ。ベルナルドが成人するまで、手を出さずにいれば良いだけだ。俺は……余計なことをしてテレーゼに嫌われたくない……)
だけど、結局彼女のことを手放せない卑怯な自分に気づく。
年寄りががつがつしているなんて思われたくなくて、毎日必死だった。
いつか、もしかしたら、彼女が自分に恋することがくるかもしれないと。
そう願いながら――。
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