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6 求めた光の先へ
65 ミリー
しおりを挟む私の騎士団の副団長としてアイザックが赴任してきてから、一か月経った。
多忙な業務が重なって、なかなか休日を一緒に過ごす機会には恵まれないまま過ごしていた。
勤務中に相手に気を取られるような真似はしたくなかったが――ふと気が抜けた瞬間なんかにアイザックの顔を見たりすると、どうしても胸が高鳴ってしまう自分がいたりして――そんな時は自分に喝を入れたりして、ちゃんと仕事に従事する日々を送っていた。
そうして――夏も終わりが近づいてきた今日。
ついに二人で休日を過ごすことになったのだった。
(とはいえ職場恋愛だし……正式に婚姻関係が成立するまでは、周囲に黙っておきたい)
そのため――私とアイザックは夜になってから、こそこそと出かけることに――なると思っていたのだけれど……。
(そうは、なぜかならなかったわね……)
今、私たちがいるのは――彼とよく行っていた騎士たちとよく行く大衆酒場なんかではない。
「ミリー様がおうちに来てくだされば安泰です!!」
なぜか私は、やたらとテンションの高いおばあさんメイド長にガッチリと手を掴まれていた。
「ええっと……」
「私は、だから、坊ちゃんに言っていたんですよ!! 年齢がどうとか世間の目を気にして、変な女とだけは結婚するなって、だというのに――!!」
「ばあや、そこまでにしておいてくれ……食事中だから……」
――銀朱の髪の青年――アイザックが老婆を制した。
「アイザック……」
「すまないな、ミリー……ばあやは昔からこうなんだ……」
今日の彼は騎士服は着用しておらず、白く上質なブラウスにキャメルのベストを羽織っている。ブラウスの裾には蔦模様の刺繡が施されており、一目で高価だと分かるカフスが見えた。
部屋の天井には豪奢なシャンデリアが飾られており、今のアイザックをキラキラと輝かせていた。カトラリーを持つ優雅な手の動きなど、普段の剣の稽古の時とは違って、貴族的な雰囲気が漂っている。
そうして――私はまさかの――。
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