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第5話 早すぎる! 運命の再会! side百合

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「ひええっ……!」

 突然、背後から低い声が聞えて、身体がビクっと大きく跳ねてしまった。
 恐る恐る振り返る。
 声をかけてきた男の人の顔を見て、びっくり……!

「あ、お前、さっきの……」
「あ、あなたは……」

 立っていたのは、さっきのコワモテイケメン……!

「どうして、お前がここに立ってるんだよ?」

「ええっと、それは……その……このお家に用事があって」

「はあ? だから、なんで俺んちに用事があるんだよって言ってんだよ」

「……俺んち?」

 その言葉を聞いて、私は思わず目を真ん丸に見開いた。




「ええええっ!!!!???」




 自分の大声に耳がキーンってなってしまった。
 コワモテイケメンも、耳に指を突っ込んで、眉をひそめている。

「間違いない、俺んちだよ」

「ええっ……! だって、さすがに自分の家の住所は分かるんじゃ……!?」

「……俺も最近ここに越して来たから、わりぃ、自分家の住所ってよく分かってなかったわ」

 嘘はついてなさそうだ。
 つまり、このコワモテイケメンの苗字は『大瀬戸』なのだろう。

「え? でも、瀬戸のおじさんは、これから一緒に住むのは『瀬戸』って名前だって言ってて……」

 だからこそ、私は瀬戸のおじさんの家に行かないといけないって思っていたんだから……。
 すると、コワモテイケメンの表情が一気に曇った。

「あんまり触れないでくれ……」

 もうなんかどんよりしてて、それ以上は触れちゃダメって思った……。

「そういやあ、親父が家の手伝いをしてくれる奴を寄越すって言ってたな……まさか……親父のやつ……」

 そうして、コワモテイケメンは急いでスマホを取り出して、ボタンをタップする。
 トゥルルルルル――ピピッ。
 どうやら、瀬戸のおじさん――もとい、大瀬戸のおじさんに繋がったみたいで、確認をはじめた。
 
「おい、どうなってやがる? 年の近い女とか有り得ねえだろう!!」

 父親に向かって乱暴な口調である。
 いらだっている彼を見ていたら、なんだか怖いし……。
 それに……。

「はあ!? しかも住み込み……!? てめえはいつ帰ってくるんだよ!? マジで話にならねえ!!」

 スマホに向かって叫んだコワモテイケメンはド迫力だった。
 この人なんなんだろう、こんな豪邸に住んでてお坊ちゃんかと思いきや、喋り方雑だし……。
 そうして、ピッと乱暴に受話器ボタンを押した彼は、私の方を睨むように見て来た。

「ひえっ……」
 
「お前の目的地はここで間違いねえ……」

 少しだけ彼のスマホを持つ手が震えている気がした。


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