短編集

サグリ

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お兄様の婚約者が怪しいので婚約破棄させました!

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(ライマー兄様はあの女のどこがいいのだろう?)

クローディアは兄のライマーの婚約者であるギルベルタを快く思っておらず、何か企んでいるのではないかと思い、尻尾を掴んでやろうと考えていた。

「あら、クローディアじゃない。こんなところでどうしたの?」
「いえ、別に…」

まさかギルベルタをさりげなく見張ろうとしていたとは答えられず、適当に言葉を濁してその場をやり過ごそうとしたが、ギルベルタはそのようなクローディアを怪しんだ。

(まさか私のことを嗅ぎまわっているの?騙しやすそうな小娘だと思っていたけど慎重にならないと)

この件でギルベルタは慎重になり、怪しい行動はあっても決定的な証拠を掴ませないように振る舞い、しかもライマーにクローディアのことを被害者を演じつつ相談したのだ。

「クローディア、あまりギルベルタを悪く思わないでくれ。この家に馴染もうとしてくれているのだから、お前も少しは態度を柔らかくしたらどうだ?」
「お兄様…」
「心配するな。嫉妬もするな。クローディアだってギルベルタのことを知れば安心するんじゃないのか?誤解されやすいかもしれないけど優しく気配りのできる女性だからな。クローディアも見習うといい」

ライマーもギルベルタのことを信じるのかと、クローディアは悲しくなり、何も言えなくなってしまった。
もう兄も頼れず、自分がどうにかしなければ、とクローディアは決意を新たにし、妙案を思いついた。

 ☆ ☆ ☆

「ギルベルタ、俺たちの愛は本物だよな?信じていいよな?」
「急にどうしたの?もちろん本物に決まっているじゃない。…まさか浮気でもしたの!?」
「いや、そうじゃないんだ。実は…家督を継げなくなってしまったんだ」
「冗談でしょ!?信じられない!何をやらかしたのよ!?」

ギルベルタが見せる初めての様子にライマーはそれまで自分がイメージしていたギルベルタが何かの間違いではないのかと思ってしまった。

「落ち着いてくれ、俺たちは別れさせられたわけじゃないんだ。二人一緒なら幸せだろ?な?そう言ってくれたよな?」
「ふざけないで!貴方なんてもうお断りよ!婚約破棄するわ!」

ギルベルタの勢いにライマーは呆気に取られて何も言えず、これがギルベルタの本性なのかと自分の思い込みが間違っていたことに気付いた。
ギルベルタは文句を言いながら淑女とは思えない大股で去って行き、後に残されたライマーはギルベルタとの思い出が汚らわしいもののように思え、自分が間違っていたことに気付いた。

 ☆ ☆ ☆

「すまなかった。クローディアのことを信じていればあんな女に騙されなかったかもしれなかった。俺はダメな男だな」
「お兄様、あの女は手強かったので騙されないのも難しかったと思います。そう恥じないでください。それに魅力的な女性はまだまだたくさんいますから」
「ははは…クローディアに励まされるとはな」

クローディアはライマーの説得が無理だと思い、父親に頼んでライマーを廃嫡にするとひと芝居打ってもらったのだ。
ギルベルタは嫁ぐことでより高い爵位の家を乗っ取り支配しようと考えていた。
こうしてクローディアの機転で不幸な結婚は未然に防ぐことができたのだった。
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