俺の心を掴んだ姫は笑わない~見ていいのは俺だけだから!~

あとさん♪

文字の大きさ
11 / 37
本編

11.決意の日々

しおりを挟む

「ジーク! さっき返された抜き打ちテストの成績、なんだった?」

「…優…」

「俺も優だ! しかも、優+プラスだ!」

「え?」

 よし! 一歩リードだ。
 ちなみにこの教授の評価はざっくりだ。上から「優」「良」「可」「不可」。不可を貰うと赤点。今までの俺なら「良」で満足していたんだがな。




 毎日が忙しくなった。
 今まで手抜きしていた講義をきちんと受けるようになった。真面目に受ければそれなりに面白く、テストでも良い点がとれるようになった。

 学生会の仕事も出来るだけ効率よく行われるよう、やり方を見直した。新方式を提案したらラインハルトさまに褒められた。

 俺のファンクラブミーティングにもきちんと対応するようにした。顔を出すのは週に一度。ちゃんと曜日も決めた。会長さんときちんと話した。会長さんは俺の一個上の高等部二年生。俺の不誠実な態度を謝罪した。その上で同時にお願いごともした。すべては今後の俺次第でいいから、と念押しして。

 卒業してしまった俺のブルーダーの兄も訪ねた。元騎士科の学生だった彼は、今は王都守備隊の一員として毎日を過ごしていた。彼にお願いして剣の稽古をつけて貰うようになった。どうしてわざわざ卒業した先輩を頼ったのかって? 勿論、俺の見栄の為だ! 学園内で稽古していたら、カッコ悪く叩きのめされてる姿をブリュンヒルデに見られるかもしれないからね!
 ……まぁ、初等部のブリュンヒルデが高等部の剣練習場に来るとは思わないけどさ。どっちかと言うと野郎どもに見られたくないって方が大きいかな……うん。俺、プライドだけは一人前だからね。イザベラも自尊心が高いとは思っていたけど、さすが双子だな。俺もだ! もしかしたら俺の方が無駄にプライド高いかもしれない。






「オリヴァー。お前、その怪我、どこで負った?」

「え?」

 学生会室で資料を纏めていたら、突然ジークに追求された。

「右手首。不自然に庇ってるじゃないか。僕にバレないと思っている?」

 あちゃー。
 うん、まぁ。ジークを胡麻化し続けるのも限界かなぁとは、思っていたけど。

「最近は、真面目に講義を受けているし、抜き打ちテストだって対応出来てる。その上、右手首の怪我? 剣の特訓もしているってことだな? いったいどうしたんだ? 悪い物でも食べたのか?」

 おいおい。酷い言いようじゃないか。

「お前が言ったんだろ、ジーク。本気出せって」

「確かに言った。だがお前という人間は、僕が言った程度で動くような素直な人間じゃない。何があった? どういった心境の変化があった?」

「お前は俺のカウンセラーか? 言う訳ないだろ。なんでもほいほい正直に全部話せるほど子どもじゃあるまいし」

「……女だな」

 ぎくっ

「僕はお前という人間をよく知っている。それも幼少期からな。お前がメンドクサイから嫌だと駄々を捏ねて逃げようとした剣術の稽古、始めたのは王城に勤め始めた可愛いメイドが一言“こんなお小さいうちから剣のお稽古ですか? なんてご立派なんでしょう”と褒めたからだ。お前が女の賞賛抜きに動き出すなど、天地が引っくり返っても起きないはずだ」

いやだわ、ジークフリート殿下ってば、おほほほほ。核心ついてくんじゃねぇよっ! 幼馴染みってのはなんて厄介なんだ!

「オリヴァー? 黙ってないでなんとか言え」

「なんとか」

「ふざけるなっ!」

「言えっていうから言ったのに……」

「オリヴァー! いい加減にしろっ!」

「それはお前だ、ジークフリート・フォン・ローリンゲン。冷静になりなさい」

「兄上……」

「ラインハルトさま……」

俺たちの口喧嘩に割って入ったのはラインハルト学生会会長。この部屋では最高責任者だ。……ま、いずれこの国の最高責任者に、国王陛下に、なるお人だけどね。

「オリヴァーが真面目にやっているんだろ? 結構なことじゃないか。お前は何が不満なんだ? 親友が急に大人びて見えて、焦ったのか? それとも、いままで首位を確保していた自分の地位を脅かされそうで焦っているのか?」

「兄上! 僕はっ」

「解っているよ、ジークフリート。この兄には全てお見通しだ。だから、少し落ち着きなさい。……で、オリヴァー。この時期無理に剣の稽古をしているということは、剣術大会に参加しようとしている?」

「あ。バレバレですか?」

「お見通しだと言っただろう?」

 きゃー、ラインハルトさま。かっこいい~♪

「え? 本気なのか? あれは騎士科の学生がやるもので、専科のお前じゃ歯が立たないぞ?」

と、ジーク。心配してるのが解るなぁ。

「うん。だから、参加してみる」

「「だから?」」

 兄弟殿下がふたりで声を揃えて訊いてくる。一見、似てない(兄、金髪。弟、黒髪だからね)けど、こんな時は息ぴったりなお二人だ。

「常日頃、身体鍛えてムッキムキの騎士科の学生を、専科の俺が倒したらカッコ良くない?」

 俺がそう言うと、殿下たちは兄弟揃って同じ色の瞳を真ん丸にして俺を見た。ジークに至っては口まで開けて馬鹿ヅラ晒してるぞ。

「オリヴァー! お前は、馬鹿かっ?! 無謀にもほどがあるっ」

 なに怒ってんだよ、ジーク。

「ジークがさっき言っただろ? 女性の賞賛があってこそ、俺という男は動くんだってね」

「賞賛があったのか? だって、お前の意中の彼女は……」

「いんやぁ、まだ。今はね。俺という人間が、まず、彼女に見合うようなを身に付けないと、なのよ」

 うん。今は言えないよな。

「だから、ま、今は修業中? 的な? 剣術試合は、手っ取り早く、野郎どもにも俺という人間がすげぇって認めさせる最短手段だからねぇ」

 男は単純だ。力を誇示されるのが一番理解し易い。
 もてない野郎どもに嫌われようと、何と思われようと、本来俺は構わない。けれど、そんな嫌われ者の俺に口説かれて靡いたら“あんな腑抜け野郎に骨抜きにされる、その程度の女か”なんて、彼女の評価が下がってしまう。俺は、もうブリュンヒルデの評価が下がるような真似をしないと誓った。その為には、俺がすげぇ男だって、野郎どもにも認めさせなければならないんだ。

 ま、その第一歩がジークなんだけどな。ジークには悪いが、勉学面で俺の物差しになって貰う。初等部から常に一位独占のジークフリード第二王子殿下。完璧王子。彼の牙城を少しでも破れば頭脳面でも俺はすげぇと認められるって算段だ! 悪いな、ジーク。もう俺は手加減しない。真面目に勝負を挑んでいる!

「と、いうわけで、ジーク。俺は、そういう率直な物言いをするジークが大好きだよ」

「……はぁ?」

「前に“大嫌い”って言われたからお返し~♪ じゃぁな、今日は稽古の日なんだ。お先!」

 学生会室を飛び出し、向かうは守備隊の鍛錬場。実はこの学園都市のすぐ隣にあるから走って通える。むしろ、走り込みを兼ねて移動出来る。

 と、その前に。
 こっそり忍び込むのは初等部棟の屋上。今日は天気のいい木曜日。ブリュンヒルデがいる可能性が高い。非常階段を音を立てずに駆け上がり、あの黒髪を探す。

――あぁ。いた。

 今日も簡易椅子に腰かけて、一望できる王都の風景を描いている。
 あの娘は変わらない。淡々と、自分の為すべきことを熟している。
 あの娘に見合う自分になる為に。あの娘に告白できる俺になる為に。週に一度くらい、こうしてこっそりその姿を拝むことを許して欲しい。

 うん、解ってる。自分がしてることがストーカー染みてるってことくらい。
 でもさ、人間、身体の栄養だけでなく、心に潤いがないとダメよ? ダメになっちゃうよ? 特に俺みたいな甘ったれなお坊ちゃまには、鞭だけじゃ効果は出ないんだからね! 飴が必要なんだからね! あの娘が飴くれるわけないって知っているから、こうしてこっそり覗いているんだからね!

 ……あぁ、今日もブリュンヒルデは可愛い。どうか、明日も明後日も、来週も、ずっとずっとブリュンヒルデに幸せな日常でありますように。

 ……よし。今週の参拝は終わり。

 俺は後ろ髪引かれつつ、非常階段を駆け下り、警備隊の鍛錬場へ向けて全力疾走した。



しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

【完結】儚げ超絶美少女の王女様、うっかり貧乏騎士(中身・王子)を餌付けして、(自称)冒険の旅に出る。

buchi
恋愛
末っ子王女のティナは、膨大な魔法力があるのに家族から評価されないのが不満。生まれた時からの婚約者、隣国の王太子エドとも婚約破棄されたティナは、古城に引きこもり、魔力でポーションを売り出して、ウサギ印ブランドとして徐々に有名に。ある日、ティナは、ポーションを売りに街へ行ってガリガリに痩せた貧乏騎士を拾ってきてしまう。お城で飼ううちに騎士はすっかり懐いて結婚してくれといい出す始末。私は王女様なのよ?あれこれあって、冒険の旅に繰り出すティナと渋々付いて行く騎士ことエド。街でティナは(王女のままではまずいので)二十五歳に変身、氷の美貌と評判の騎士団長に見染められ熱愛され、騎士団長と娘の結婚を狙う公爵家に襲撃される……一体どう収拾がつくのか、もし、よかったら読んでください。13万字程度。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

異世界育ちの侯爵令嬢と呪いをかけられた完璧王子

冬野月子
恋愛
突然日本から異世界に召喚されたリリヤ。 けれど実は、リリヤはこの世界で生まれた侯爵令嬢で、呪いをかけられ異世界(日本)へ飛ばされていたのだ。 魔力量も多く家柄の良いリリヤは王太子ラウリの婚約者候補となる。 「完璧王子」と呼ばれていたが、リリヤと同じく呪いのせいで魔力と片目の視力を失っていたラウリ。 彼との出会いの印象はあまり良いものではなかった。

呪われた姿が可愛いので愛でてもよろしいでしょうか…?

矢野りと
恋愛
我が国の第二王子が隣国での留学を終えて数年ぶりに帰国することになった。王都では彼が帰国する前から、第二王子の婚約者の座を巡って令嬢達が水面下で激しく火花を散らしているらしい。 辺境の伯爵令嬢であるリラ・エールは王都に出向くことは滅多にないので関係のない話だ。 そんななか帰国した第二王子はなんと呪われていた。 どんな姿になったのか分からないが、令嬢達がみな逃げ出すくらいだからさぞ恐ろしい姿になってしまったのだろうと辺境の地にまで噂は流れてきた。 ――えっ、これが呪いなの?か、可愛すぎるわ! 私の目の前の現れたのは、呪いによってとても愛らしい姿になった第二王子だった。 『あの、抱きしめてもいいかしら?』 『・・・・駄目です』 私は抱きしめようと手を伸ばすが、第二王子の従者に真顔で止められてしまった。 ※設定はゆるいです。 ※5/29 タイトルを少し変更しました。

【完結】悪役令嬢の私を溺愛した冷徹公爵様が、私と結ばれるため何度もループしてやり直している!?

たかつじ楓@書籍発売中
恋愛
「レベッカ。俺は何度も何度も、君と結ばれるために人生をやり直していたんだ」 『冷徹公爵』と呼ばれる銀髪美形のクロードから、年に一度の舞踏会のダンスのパートナーに誘われた。 クロード公爵は悪役令嬢のレベッカに恋をし、彼女が追放令を出されることに納得できず、強い後悔のせいで何度もループしているという。 「クロード様はブルベ冬なので、パステルカラーより濃紺やボルドーの方が絶対に似合います!」 アパレル業界の限界社畜兼美容オタク女子は、学園乙女ゲームの悪役令嬢、レベッカ・エイブラムに転生した。 ヒロインのリリアを廊下で突き飛ばし、みんなから嫌われるというイベントを、リリアに似合う靴をプレゼントすることで回避する。 登場人物たちに似合うパーソナルカラーにあった服を作ってプレゼントし、レベッカの周囲からの好感度はどんどん上がっていく。 五度目の人生に転生をしてきたレベッカと共に、ループから抜け出す方法を探し出し、無事2人は結ばれることができるのか? 不憫・ヤンデレ執着愛な銀髪イケメン公爵に溺愛される、異世界ラブコメディ!

靴を落としたらシンデレラになれるらしい

犬野きらり
恋愛
ノーマン王立学園に通う貴族学生のクリスマスパーティー。 突然異様な雰囲気に包まれて、公開婚約破棄断罪騒動が勃発(男爵令嬢を囲むお約束のイケメンヒーロー) 私(ティアラ)は周りで見ている一般学生ですから関係ありません。しかし… 断罪後、靴擦れをおこして、運悪く履いていたハイヒールがスッポ抜けて、ある一人の頭に衝突して… 関係ないと思っていた高位貴族の婚約破棄騒動は、ティアラにもしっかり影響がありまして!? 「私には関係ありませんから!!!」 「私ではありません」 階段で靴を落とせば別物語が始まっていた。 否定したい侯爵令嬢ティアラと落とされた靴を拾ったことにより、新たな性癖が目覚めてしまった公爵令息… そしてなんとなく気になる年上警備員… (注意)視点がコロコロ変わります。時系列も少し戻る時があります。 読みにくいのでご注意下さい。

【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした

Rohdea
恋愛
公爵令嬢であるスフィアは、8歳の時に王子兄弟と会った事で前世を思い出した。 同時に、今、生きているこの世界は前世で読んだ小説の世界なのだと気付く。 さらに自分はヒーロー(第二王子)とヒロインが結ばれる為に、 婚約破棄されて国外追放となる運命の悪役令嬢だった…… とりあえず、王家と距離を置きヒーロー(第二王子)との婚約から逃げる事にしたスフィア。 それから数年後、そろそろ逃げるのに限界を迎えつつあったスフィアの前に現れたのは、 婚約者となるはずのヒーロー(第二王子)ではなく…… ※ 『記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました』 に出てくる主人公の友人の話です。 そちらを読んでいなくても問題ありません。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

処理中です...