5 / 22
幕間
断片
しおりを挟む
それは遠くもなく、近くもない記憶の果てにあるお話。
優しく降り注ぐ陽光のこぼれ日を受け、開けられた窓から優しく撫でるように吹く風が心地よさを生み出していた。
そんな傍らに置かれた椅子に座る、少しやつれながらも微笑みを絶やさずにいる老婦人が膝元にいる少年の頭に触れる。
感触に気づいたのか、そっと顔を上げた先にいる存在に安心して朗らかな笑顔を向けた。
互いに笑い合い、穏やかでありながら次第に終わりへと近づくような寂しさがあるなかで、婦人は口を動かす。
『……ごめんなさいディブロ。 本来なら助力をしなければいけないのだけれど、私はもうここまでみたい。 だけど安心しなさい、きっと貴方を受け止めてくれる人が現れるから』
『おばあ様? どういう意味?』
『いいの、いいのよ。 今はわからなくても。 ただ願うならば、貴方の道行きに加護があらんことをーー』
言葉の意味を理解できないまま少年は自分の名を呟く祖母を見上げる、笑顔でいる彼女の瞳はすでに何もかも受け入れるだけの覚悟と諦めが秘められていた。
ただそこにはこの先に孫に待つ出来事を予見してか、彼を置いて先に行く不甲斐ない自分に対しての悲嘆も籠められている。
椅子から落ちるよう地べたに並ぶと老婦人はまだ小さいその身体をぎゅっと抱き締めた。
数日後、ディブロは祖母であるアリーシャ・イングリッドを看取ることとなる。
それは同時に、イングリッド家に暗雲をもたらすことになるなど、この時の彼は気づかないままだった。
優しく降り注ぐ陽光のこぼれ日を受け、開けられた窓から優しく撫でるように吹く風が心地よさを生み出していた。
そんな傍らに置かれた椅子に座る、少しやつれながらも微笑みを絶やさずにいる老婦人が膝元にいる少年の頭に触れる。
感触に気づいたのか、そっと顔を上げた先にいる存在に安心して朗らかな笑顔を向けた。
互いに笑い合い、穏やかでありながら次第に終わりへと近づくような寂しさがあるなかで、婦人は口を動かす。
『……ごめんなさいディブロ。 本来なら助力をしなければいけないのだけれど、私はもうここまでみたい。 だけど安心しなさい、きっと貴方を受け止めてくれる人が現れるから』
『おばあ様? どういう意味?』
『いいの、いいのよ。 今はわからなくても。 ただ願うならば、貴方の道行きに加護があらんことをーー』
言葉の意味を理解できないまま少年は自分の名を呟く祖母を見上げる、笑顔でいる彼女の瞳はすでに何もかも受け入れるだけの覚悟と諦めが秘められていた。
ただそこにはこの先に孫に待つ出来事を予見してか、彼を置いて先に行く不甲斐ない自分に対しての悲嘆も籠められている。
椅子から落ちるよう地べたに並ぶと老婦人はまだ小さいその身体をぎゅっと抱き締めた。
数日後、ディブロは祖母であるアリーシャ・イングリッドを看取ることとなる。
それは同時に、イングリッド家に暗雲をもたらすことになるなど、この時の彼は気づかないままだった。
1
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/現在毎日更新予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる