堅物騎士団長は狼王子の番となる

風煉

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それは遠くもなく、近くもない記憶の果てにあるお話。
優しく降り注ぐ陽光のこぼれ日を受け、開けられた窓から優しく撫でるように吹く風が心地よさを生み出していた。
そんな傍らに置かれた椅子に座る、少しやつれながらも微笑みを絶やさずにいる老婦人が膝元にいる少年の頭に触れる。
感触に気づいたのか、そっと顔を上げた先にいる存在に安心して朗らかな笑顔を向けた。
互いに笑い合い、穏やかでありながら次第に終わりへと近づくような寂しさがあるなかで、婦人は口を動かす。

『……ごめんなさいディブロ。 本来なら助力をしなければいけないのだけれど、私はもうここまでみたい。 だけど安心しなさい、きっと貴方を受け止めてくれる人が現れるから』
『おばあ様? どういう意味?』
『いいの、いいのよ。 今はわからなくても。 ただ願うならば、貴方の道行きに加護があらんことをーー』

言葉の意味を理解できないまま少年は自分の名を呟く祖母を見上げる、笑顔でいる彼女の瞳はすでに何もかも受け入れるだけの覚悟と諦めが秘められていた。
ただそこにはこの先に孫に待つ出来事を予見してか、彼を置いて先に行く不甲斐ない自分に対しての悲嘆も籠められている。
椅子から落ちるよう地べたに並ぶと老婦人はまだ小さいその身体をぎゅっと抱き締めた。

数日後、ディブロは祖母であるアリーシャ・イングリッドを看取ることとなる。
それは同時に、イングリッド家に暗雲をもたらすことになるなど、この時の彼は気づかないままだった。
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