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群雄割拠
唐沢山城の戦い
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「殿、晴信が出家したようですな。」
今後の方針を決める評定の席上にて、宇佐美定満が話してきた。
それを聞いていた本庄実乃も
「今年は水害によって稲が全くダメになったとか…確か北条領でも同じような状態と聞きましたぞ。」
「領民を慰撫するために出家とは晴信らしいわ。おっと今では信玄と言うのだそうですな。」
甘粕景持はどんなことも政治利用する信玄のやり方をなじった。
「北条は嫡男の氏政に家督を譲ったとか。たいして戦では強くなかったですな。」
北条高広はこの頃から関東に興味があり、のちに上野厩橋城主に任命されるのだが、それはもう少し先の話し。
「ただ実質的に支配しているのは氏康なので、北条は今までと変わらないと思っていた方が良いでしょう。」
「北条の強みは氏康を支える一族がまとまっていることですな。綱成や幻庵を始め息子たちも戦では侮れません。」
斎藤朝信は北条が侮れない相手として関東での戦を懸念していた。
実際に関東での戦は泥沼化していくので、斎藤が懸念するのも無理はなかった。
ある程度、みんなが話し合った頃合いを見て宇佐美定満が景虎に意見を求めた。
「当領内では幸いにも水害の被害は少なく、青苧の収益も順調なため、大きな問題はないと思いますがいかがされますか?」
「皆も知っていると思うが幕府の重臣である大舘晴光殿が来着され、三國の和睦を斡旋されておる。」
「武田も北条も従わないでしょうな」
斎藤朝信が答えると他の重臣も同調した。
「わしもそう思う。但し正面を切って申し出を断ることはすまい。」
「なれば…その間に何かおこなうのですか?」
宇佐美が真意を尋ねると
「もう一度上洛して参ろうと思っておる。
この先、武田のみならず、北条とも戦をしていく為に必要なものを取り付けて参ろうと思う。そのため今回の上洛には多少の兵も連れてゆく。留守は長尾政景殿にお頼み申す。その他の者も努々油断なきようお頼み申す。」
こうして景虎をはじめ宇佐美、柿崎、甘粕、本庄、直江など兵5000を引き連れて上洛していった。
今回、関東管領 上杉憲政から役職と名跡を譲られる内意を得たので、その許可を将軍に求めるためであった。
戦をするためには大義名分がいる。
その為の上洛であったが、存外にも多くのものが得られた。
のちに言う「上杉の七免許」である。
これにより、地方の一大名の立場から、幕府が認めた別格の大名となったのだ。
帰国後、関東からの火急の使者が来訪していた。
唐沢山城を居城とする佐野昌綱より援軍要請であった。
佐野昌綱はこの年に前当主豊綱が死去し、それに伴い家督を継ぎ、佐野氏の第15代当主となったばかりであった。
これを好機と見た北条氏政が35,000の兵を率いて唐沢山城を包囲したのである。
早速、景虎は15,000の越後軍を率いて三国峠を越えて関東へ出陣していった。
「もう落城してしまったのか?」
何重にも囲まれた唐沢山城を見て色部勝長は口にした。
「いや、まだ何とか踏ん張っておるな。だが、このままでは落城は必至。景虎様いかがいたします。」
共に訪れていた斎藤朝信は景虎に判断を委ねた。
「昌綱殿は越後より援軍が来ることを期待して踏ん張っておる。また此度の戦は関東の諸将も見ていよう。
ここで救援できずに帰っては今後の関東平定に支障をきたす。
まずは城内にて、士気を高めよう。そこで…」
その頃北条方も越後軍の動きを把握していた。
「長尾景虎がやってきたようですな。」
「15000ほどと聞いておりますので、兵力に差がある為仕掛けてきますか?」
遠山綱景は今回の総大将 北条氏政に伺った。
「動向は把握しておかねばなるまいが、我らの目的は唐沢山城の攻略である。
北条に歯向かうとどうなるか関東の諸将に知らしめねばならん。越後軍とは無理して戦う必要はない。」
「予定通り唐沢山城の攻略を第一とする。清水殿の差配に任せる。よろしくお頼み申す。」
氏政は本来戦向きの武将ではなく、政治家である。
しかし、隠居したとはいえ氏康が何かと口出しをしてくる状況が面白くなく、この戦で実績をつけておきたいと思っていた。
また氏康も同じように氏政に実績をつけてもらいたいと思っているが、やはり戦場での評価は高くないので目付として清水と遠山をつけて出陣させていたのだ。
唐沢山城は関東でも屈指の堅城で、攻め難く、守りやすい山城のため、大軍で囲んでも攻め処が狭く、上手く兵を生かせないような作りになっていた。
そのため清水康英は20000を越後軍の防備に当て、残り15000で唐沢山城を攻めるように指示を出した。
翌朝早朝より伝令が駆け込んできた
「ご注進。越後軍が忽然と姿を消しました」
昨夜までいた越後軍が風魔の索敵を逃れ、どこかへ消えてしまっていた。
評定の席上でも様々な意見が出たが、ともかく状況がわからないことには判断のしようもないということで風魔に越後軍の動向を探るように厳命していた。
そんな席上に新たに伝令が入ってきた。
「越後軍の旗をかざした10数騎の一団が大手門の南側に現れました。」
先頭の大将らしき人物は甲冑もつけずに道服姿だと報告が来ていた。
どうなっている?
これは何かの罠か?
北条軍の真っただ中、越後軍の旗を掲げた十数騎の武者が悠然と進んでいく。
あまりの堂々としたその姿に誰もが動くことが出来ずに、ただ見守ることしかできなかった。
大手門周りを警護していた者も何が起こっているかわからず、本陣へ使いを出している間にも一団は近づいてきたので
「なに用でこちらへ参られた。名を名乗れ」と正面を遮ったところ
「我は毘沙門天の化身、長尾景虎なり、城主佐野昌綱殿より救援依頼をいただき参上いたした。唐沢山城へ入らせていただく」
言うや否や一気に駆け出し大手門へ向かっていった。
その様子を見ていた唐沢山城の者も固唾を飲んで見守り、大手門に着いた景虎一行を即座へ城内へ向かい入れた。
城内では大いに士気が上がったのはいうまでもない。
しかし報告を受けた北条氏政も
「もはや落城必至の城に入るとは飛んで火にいる夏の虫じゃ。多少士気が上がろうが関係ない。佐野昌綱と一緒に葬ってくれるわ」と言って喜んでいた。
松田憲秀が「長尾景虎とは得体のしれぬ大将ですな。それより越後軍の行方が気になるところ。」
と話しをしていたら風魔から越後軍を発見したと報告があった
「越後軍は現在大手門南より魚鱗の陣形で迫ってきています。」
「氏政様、このままでは佐野軍が出てきたら越後軍と挟まれます。本陣を西側へ移動させましょう。」
松田憲秀は氏政に何かあってはと発言をしたが
「なりませぬ。そのようなことをすれば兵どもが動揺してしまいます。こちらはまだ20000の兵を越後軍へ向けられます。残り15000で早々に唐沢山城を攻略してしまいましょう。遠山綱景殿、笠原殿に唐沢山城の攻略をお任せいたす。私は越後軍に当たらせてもらう」
清水康英は言うや否や本陣を抜け出し、越後軍の迎撃にむかっていった。
「速いな。こんな距離まで気取らせぬとは…鶴翼にて迎え撃つ。多目殿と富永殿に両翼をお願いしろ。」
迎撃を請け負った清水康英が陣を整えている頃、遠山率いる攻城軍は必死に攻めかかるものの成果が芳しくなかった。
「笠原殿に別動隊を率いてもらい、裏側三の丸から攻城してもらいたい。」
山頂にいる景虎は北条軍が慌ただしく、軍を動かしている様子を観察していた。
景虎のいない越後軍を率いるのは宇佐美定満である。
正面に柿崎景家、左右に本庄繫長、北条高広が率いて、そのままの勢いで正面からぶつかっていった。
「押せ押せ。北条の弱兵共に越後兵の強さを思い知らせてやれい」
前衛に配置された武将はどれも越後軍が誇る猛将揃い
大将自ら先頭に立ち、攻め立てている姿を見て兵たちが奮い立たないわけがない。
越後軍のあまりの衝撃に北条軍の一陣はあっという間に蹴散らされ、控えていた二陣も完全に力負けをしていた。
「圧力が強すぎる。。。このままでは正面持たんぞ。左右の部隊に出陣してもらえ」
清水康英は想像以上の越後軍の強さに(このままでは持たないかも…)と内心感じていた。
左右を任された多目と富永は即座に部隊を動かしたが、こちらにも越後軍は早々に斎藤朝信、甘粕景持が突撃して行ったため抑え込まれ、越後軍の圧力が弱まることはなく、あっという間に北条軍を押し込んでいった。
本陣にいる北条氏政の耳にも喧騒が聞こえてくるほど北条軍は押し込まれていた。
「数に劣る越後軍は初めのうちよ。そのうちこちらが盛り返すはずじゃ」
そう信じて本陣にて踏ん張る氏政の元に新たに伝令がやってきた。
「別動隊を率いていた笠原殿敗退。笠原殿を破った村上義清率いる軍勢がこちらへ向かっております。」
北条が笠原綱信を別動隊として動かしていたように越後軍も村上義清を別動隊として裏側に回していたのだ。
唐沢山城を攻めている遠山は村上義清率いる一団が北条氏政のいる本陣に突撃したのを知り
「いかん。このままでは本陣が危ない」
とすぐに軍を引いて本陣救援に向かおうとしたが、その時に大手門が開き、景虎率いる佐野軍が突撃して行ったのだ。
「今が好機。我こそは毘沙門天の化身、者共ついて参れ」
背中を向けた瞬間に突撃された遠山の一軍はあっというまに蹴散らされた。
景虎率いる佐野軍はそのままの勢いで北条軍の本陣に突撃した瞬間、勝負がついた。
北条軍は総崩れになり、蜘蛛の子を散らすように退却をしていった。
殿を置かない退却劇だったので大いに戦果を挙げる機会ではあったが、現地の状況に詳しくない越後軍は戦場追撃だけに止め、軍をまとめて唐沢山城へ入っていき、無事救援依頼を達成したのであった。
この出来事は関東諸将にも伝わり、北条の進出を良く思っていない各大名が一気に長尾景虎支持に傾いて行ったのだ。
そういった意味でも今回の戦は唐沢山城の救援だけでなく、諸将の心をつかむ重要な一戦となったのであった。
今後の方針を決める評定の席上にて、宇佐美定満が話してきた。
それを聞いていた本庄実乃も
「今年は水害によって稲が全くダメになったとか…確か北条領でも同じような状態と聞きましたぞ。」
「領民を慰撫するために出家とは晴信らしいわ。おっと今では信玄と言うのだそうですな。」
甘粕景持はどんなことも政治利用する信玄のやり方をなじった。
「北条は嫡男の氏政に家督を譲ったとか。たいして戦では強くなかったですな。」
北条高広はこの頃から関東に興味があり、のちに上野厩橋城主に任命されるのだが、それはもう少し先の話し。
「ただ実質的に支配しているのは氏康なので、北条は今までと変わらないと思っていた方が良いでしょう。」
「北条の強みは氏康を支える一族がまとまっていることですな。綱成や幻庵を始め息子たちも戦では侮れません。」
斎藤朝信は北条が侮れない相手として関東での戦を懸念していた。
実際に関東での戦は泥沼化していくので、斎藤が懸念するのも無理はなかった。
ある程度、みんなが話し合った頃合いを見て宇佐美定満が景虎に意見を求めた。
「当領内では幸いにも水害の被害は少なく、青苧の収益も順調なため、大きな問題はないと思いますがいかがされますか?」
「皆も知っていると思うが幕府の重臣である大舘晴光殿が来着され、三國の和睦を斡旋されておる。」
「武田も北条も従わないでしょうな」
斎藤朝信が答えると他の重臣も同調した。
「わしもそう思う。但し正面を切って申し出を断ることはすまい。」
「なれば…その間に何かおこなうのですか?」
宇佐美が真意を尋ねると
「もう一度上洛して参ろうと思っておる。
この先、武田のみならず、北条とも戦をしていく為に必要なものを取り付けて参ろうと思う。そのため今回の上洛には多少の兵も連れてゆく。留守は長尾政景殿にお頼み申す。その他の者も努々油断なきようお頼み申す。」
こうして景虎をはじめ宇佐美、柿崎、甘粕、本庄、直江など兵5000を引き連れて上洛していった。
今回、関東管領 上杉憲政から役職と名跡を譲られる内意を得たので、その許可を将軍に求めるためであった。
戦をするためには大義名分がいる。
その為の上洛であったが、存外にも多くのものが得られた。
のちに言う「上杉の七免許」である。
これにより、地方の一大名の立場から、幕府が認めた別格の大名となったのだ。
帰国後、関東からの火急の使者が来訪していた。
唐沢山城を居城とする佐野昌綱より援軍要請であった。
佐野昌綱はこの年に前当主豊綱が死去し、それに伴い家督を継ぎ、佐野氏の第15代当主となったばかりであった。
これを好機と見た北条氏政が35,000の兵を率いて唐沢山城を包囲したのである。
早速、景虎は15,000の越後軍を率いて三国峠を越えて関東へ出陣していった。
「もう落城してしまったのか?」
何重にも囲まれた唐沢山城を見て色部勝長は口にした。
「いや、まだ何とか踏ん張っておるな。だが、このままでは落城は必至。景虎様いかがいたします。」
共に訪れていた斎藤朝信は景虎に判断を委ねた。
「昌綱殿は越後より援軍が来ることを期待して踏ん張っておる。また此度の戦は関東の諸将も見ていよう。
ここで救援できずに帰っては今後の関東平定に支障をきたす。
まずは城内にて、士気を高めよう。そこで…」
その頃北条方も越後軍の動きを把握していた。
「長尾景虎がやってきたようですな。」
「15000ほどと聞いておりますので、兵力に差がある為仕掛けてきますか?」
遠山綱景は今回の総大将 北条氏政に伺った。
「動向は把握しておかねばなるまいが、我らの目的は唐沢山城の攻略である。
北条に歯向かうとどうなるか関東の諸将に知らしめねばならん。越後軍とは無理して戦う必要はない。」
「予定通り唐沢山城の攻略を第一とする。清水殿の差配に任せる。よろしくお頼み申す。」
氏政は本来戦向きの武将ではなく、政治家である。
しかし、隠居したとはいえ氏康が何かと口出しをしてくる状況が面白くなく、この戦で実績をつけておきたいと思っていた。
また氏康も同じように氏政に実績をつけてもらいたいと思っているが、やはり戦場での評価は高くないので目付として清水と遠山をつけて出陣させていたのだ。
唐沢山城は関東でも屈指の堅城で、攻め難く、守りやすい山城のため、大軍で囲んでも攻め処が狭く、上手く兵を生かせないような作りになっていた。
そのため清水康英は20000を越後軍の防備に当て、残り15000で唐沢山城を攻めるように指示を出した。
翌朝早朝より伝令が駆け込んできた
「ご注進。越後軍が忽然と姿を消しました」
昨夜までいた越後軍が風魔の索敵を逃れ、どこかへ消えてしまっていた。
評定の席上でも様々な意見が出たが、ともかく状況がわからないことには判断のしようもないということで風魔に越後軍の動向を探るように厳命していた。
そんな席上に新たに伝令が入ってきた。
「越後軍の旗をかざした10数騎の一団が大手門の南側に現れました。」
先頭の大将らしき人物は甲冑もつけずに道服姿だと報告が来ていた。
どうなっている?
これは何かの罠か?
北条軍の真っただ中、越後軍の旗を掲げた十数騎の武者が悠然と進んでいく。
あまりの堂々としたその姿に誰もが動くことが出来ずに、ただ見守ることしかできなかった。
大手門周りを警護していた者も何が起こっているかわからず、本陣へ使いを出している間にも一団は近づいてきたので
「なに用でこちらへ参られた。名を名乗れ」と正面を遮ったところ
「我は毘沙門天の化身、長尾景虎なり、城主佐野昌綱殿より救援依頼をいただき参上いたした。唐沢山城へ入らせていただく」
言うや否や一気に駆け出し大手門へ向かっていった。
その様子を見ていた唐沢山城の者も固唾を飲んで見守り、大手門に着いた景虎一行を即座へ城内へ向かい入れた。
城内では大いに士気が上がったのはいうまでもない。
しかし報告を受けた北条氏政も
「もはや落城必至の城に入るとは飛んで火にいる夏の虫じゃ。多少士気が上がろうが関係ない。佐野昌綱と一緒に葬ってくれるわ」と言って喜んでいた。
松田憲秀が「長尾景虎とは得体のしれぬ大将ですな。それより越後軍の行方が気になるところ。」
と話しをしていたら風魔から越後軍を発見したと報告があった
「越後軍は現在大手門南より魚鱗の陣形で迫ってきています。」
「氏政様、このままでは佐野軍が出てきたら越後軍と挟まれます。本陣を西側へ移動させましょう。」
松田憲秀は氏政に何かあってはと発言をしたが
「なりませぬ。そのようなことをすれば兵どもが動揺してしまいます。こちらはまだ20000の兵を越後軍へ向けられます。残り15000で早々に唐沢山城を攻略してしまいましょう。遠山綱景殿、笠原殿に唐沢山城の攻略をお任せいたす。私は越後軍に当たらせてもらう」
清水康英は言うや否や本陣を抜け出し、越後軍の迎撃にむかっていった。
「速いな。こんな距離まで気取らせぬとは…鶴翼にて迎え撃つ。多目殿と富永殿に両翼をお願いしろ。」
迎撃を請け負った清水康英が陣を整えている頃、遠山率いる攻城軍は必死に攻めかかるものの成果が芳しくなかった。
「笠原殿に別動隊を率いてもらい、裏側三の丸から攻城してもらいたい。」
山頂にいる景虎は北条軍が慌ただしく、軍を動かしている様子を観察していた。
景虎のいない越後軍を率いるのは宇佐美定満である。
正面に柿崎景家、左右に本庄繫長、北条高広が率いて、そのままの勢いで正面からぶつかっていった。
「押せ押せ。北条の弱兵共に越後兵の強さを思い知らせてやれい」
前衛に配置された武将はどれも越後軍が誇る猛将揃い
大将自ら先頭に立ち、攻め立てている姿を見て兵たちが奮い立たないわけがない。
越後軍のあまりの衝撃に北条軍の一陣はあっという間に蹴散らされ、控えていた二陣も完全に力負けをしていた。
「圧力が強すぎる。。。このままでは正面持たんぞ。左右の部隊に出陣してもらえ」
清水康英は想像以上の越後軍の強さに(このままでは持たないかも…)と内心感じていた。
左右を任された多目と富永は即座に部隊を動かしたが、こちらにも越後軍は早々に斎藤朝信、甘粕景持が突撃して行ったため抑え込まれ、越後軍の圧力が弱まることはなく、あっという間に北条軍を押し込んでいった。
本陣にいる北条氏政の耳にも喧騒が聞こえてくるほど北条軍は押し込まれていた。
「数に劣る越後軍は初めのうちよ。そのうちこちらが盛り返すはずじゃ」
そう信じて本陣にて踏ん張る氏政の元に新たに伝令がやってきた。
「別動隊を率いていた笠原殿敗退。笠原殿を破った村上義清率いる軍勢がこちらへ向かっております。」
北条が笠原綱信を別動隊として動かしていたように越後軍も村上義清を別動隊として裏側に回していたのだ。
唐沢山城を攻めている遠山は村上義清率いる一団が北条氏政のいる本陣に突撃したのを知り
「いかん。このままでは本陣が危ない」
とすぐに軍を引いて本陣救援に向かおうとしたが、その時に大手門が開き、景虎率いる佐野軍が突撃して行ったのだ。
「今が好機。我こそは毘沙門天の化身、者共ついて参れ」
背中を向けた瞬間に突撃された遠山の一軍はあっというまに蹴散らされた。
景虎率いる佐野軍はそのままの勢いで北条軍の本陣に突撃した瞬間、勝負がついた。
北条軍は総崩れになり、蜘蛛の子を散らすように退却をしていった。
殿を置かない退却劇だったので大いに戦果を挙げる機会ではあったが、現地の状況に詳しくない越後軍は戦場追撃だけに止め、軍をまとめて唐沢山城へ入っていき、無事救援依頼を達成したのであった。
この出来事は関東諸将にも伝わり、北条の進出を良く思っていない各大名が一気に長尾景虎支持に傾いて行ったのだ。
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