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 綺麗な外見をしていながら、何とも辛辣な事を言い出した令嬢に、アイスとエリオスは呆気に取られた。

「え、っと……」

「初めましてよね? 私たちは書類上、かなり親しい間柄のハズなのに、今まで一度だってお喋りした事も顔を見た事もないもの」

 その一言で、二人の脳裏に『まさか』という疑念が生じた。

 燃えるような赤い髪、雪のように白い肌。
 ブルーダイヤのように輝く魅力的な瞳に、非の打ちどころのない見事な美貌。
 そして、心地よい小鳥のように可愛い声。

 見る者を捕らえて離さない程に美しく、完璧に見える令嬢であるが。
……唯一、アイスとエリオスが事前に耳にしていた、あの特徴的な「赤毛」だけは、件の人物に合致している。

(まさか?)

 恐るおそる、アイスはその名を口にする。

「もしやあなたは、リリス……の訳が無いですよね。はははは……」

 すると令嬢は、アイスと同じようにクスクスと笑い声を上げた。
 ただしこっちは、かなり皮肉気に。

「あら? 一応、私はあなたの義母という事になるんだから、リリスお義母様と呼んでもらいたいわね」
「え?」

――それでは、まさかっ!?

 仰天するアイスとエリオスに向かい、リリスはにっこりと艶やかに笑う。

「よろしく、アイス。私も従者を紹介するわね。あそこに控えている長身の男がアッシュ、その向こうで眼鏡をかけている男がジンよ」

 六年の月日が経ち、かつてはガリガリに痩せてみすぼらしい少年だったアッシュは、凛々しい立派な青年へと成長していた。

 だが、もっとも劇的に変貌したのはリリスであろう。
 彼女を指して『豚姫』など口にする者がいたとは誰も信じまい。
 今のリリスは、王都の誰よりも美しく、気品のある美姫にしか見えない。

 口を開けたまま呆然とするアイスとエリオスを睥睨しながら、リリスは内心で嘲笑う。

 ジン悪魔の力を借りて得た仮初の姿にううつを抜かすバカ者どもよ、と。
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