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「あなたにはこれから、私の侍女として仕えてもらうわ。これからよろしくね」
「はい!」
元気な声で返事をするユリという女と、アッシュという従者の青年、そして眼鏡をかけた執事風の男『ジン』を見遣りながら、アイスとエリオスは激しく動揺する。
これから王子へ謁見する為の控えの間で、まさかこんな人物たちと突然遭遇すると、誰が思うだろうか?
ましてや彼等は、六歳と十一歳の子供だ。
いっぱしの貴族を気取ってはいるが、まだまだ自分では何もできないか弱い存在なのである。
故に、この事態は、完全に彼等のキャパシティーを越えた。
「う、うわわわぁ~ん!」
突然泣き出したアイスに、エリオス自身も対処しきれず、ただオロオロと視線を泳がせる。
いつもは、窮地に立とうものなら、それと察した傍仕えの大人たちが直ぐに駆け寄って来て上手い事処理してくれるのだが。
この王都には、そんな都合のいい人間などいない。
ただの子供に戻ってわんわん泣く自分の『養子』と、何も出来ずに動揺したままのエリオスに、リリスは態度を変えて優しく微笑みかけた。
「あら? 私の悪口を言った事を反省して泣いているのかしら?」
「う、うう……違う……」
「なら、驚いたのね? 田舎のボロ館にいた筈の豚姫が、王都で偉そうにしていたから」
フフっと笑い、エリスは続ける。
「もしかしたら、悔しい気持ちもあるかもしれないけれど。ここではあなた達は、実質ともに私の下に位置する事になるの。だから、私が何を言っても逆らう事は許されないのよ。そのくらいは分かるわよね?」
伯爵の血統は、リリスの方だ。
アイスは彼女の養子になることで「アイス・クラシス・ウル」を名乗る事が出来たのだ。
だが、元々は金銭的に困窮した伯爵家の方から、この話を持ち掛けて来たのだ。
その経緯を叔母から聞いていたエリオスは、ムッとした様子で一歩踏み出した。
「それなら、こちらも言わせて頂きますが」
「はい!」
元気な声で返事をするユリという女と、アッシュという従者の青年、そして眼鏡をかけた執事風の男『ジン』を見遣りながら、アイスとエリオスは激しく動揺する。
これから王子へ謁見する為の控えの間で、まさかこんな人物たちと突然遭遇すると、誰が思うだろうか?
ましてや彼等は、六歳と十一歳の子供だ。
いっぱしの貴族を気取ってはいるが、まだまだ自分では何もできないか弱い存在なのである。
故に、この事態は、完全に彼等のキャパシティーを越えた。
「う、うわわわぁ~ん!」
突然泣き出したアイスに、エリオス自身も対処しきれず、ただオロオロと視線を泳がせる。
いつもは、窮地に立とうものなら、それと察した傍仕えの大人たちが直ぐに駆け寄って来て上手い事処理してくれるのだが。
この王都には、そんな都合のいい人間などいない。
ただの子供に戻ってわんわん泣く自分の『養子』と、何も出来ずに動揺したままのエリオスに、リリスは態度を変えて優しく微笑みかけた。
「あら? 私の悪口を言った事を反省して泣いているのかしら?」
「う、うう……違う……」
「なら、驚いたのね? 田舎のボロ館にいた筈の豚姫が、王都で偉そうにしていたから」
フフっと笑い、エリスは続ける。
「もしかしたら、悔しい気持ちもあるかもしれないけれど。ここではあなた達は、実質ともに私の下に位置する事になるの。だから、私が何を言っても逆らう事は許されないのよ。そのくらいは分かるわよね?」
伯爵の血統は、リリスの方だ。
アイスは彼女の養子になることで「アイス・クラシス・ウル」を名乗る事が出来たのだ。
だが、元々は金銭的に困窮した伯爵家の方から、この話を持ち掛けて来たのだ。
その経緯を叔母から聞いていたエリオスは、ムッとした様子で一歩踏み出した。
「それなら、こちらも言わせて頂きますが」
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