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情熱を込めて言うマリウスに、リリスはどう反応を返せばいいのかと戸惑う。
出会ったばかりの相手に求婚されるなんて、初めての体験だ。
しかも、王都中のあらゆる女性に好かれるであろう、こんな美丈夫の青年将校にだ。
嬉しいと思うよりも、困惑の方が強い。
「その、あまり御冗談も――」
「冗談などではない。オレは本気だ」
即座に言い返すマリウスに、妹のミリアも隣で諦めたように溜め息をつく。
「兄さん、他所のパーティーでいきなり求婚は失礼でしょう」
「なに?」
「街の平民じゃないんだから、少しは手順というものを考えてよ。……リリス様、兄さんはこの通り融通の利かない男ですが、恋愛に関しては偽らない男です。不躾だとは思いますが、どうか一度我が家へいらっしゃいませんか? 後日、ガーデンパーティーへ御招待したいのですが」
つまり、一度仕切り直しをしようという事か。
この一連のやり取りは、やはり悪目立ちしていたようで、衆目を集めてしまっている。
このままでは、主催者である第二王女の顔を潰しかねない。
(マズいわね。本来パーティーの主役ではない私があまり目立ってしまっては、逆恨みを買いかねないわ)
リリスが「では、」と言いかけるが、それよりも先に傍で控えていたジンが口を開いた。
「申し訳ありませんが、リリス様は大変お忙しいので、御招待は遠慮いたします。さ、参りましょう」
「え、ええ……」
ジンに促されるまま、その場を離れるリリスであるが。
そのジンを鋭い眼差しで見詰めると、マリウスは訝しむように声を発した。
「少し待て。貴様のその顔……何処かで見た事があるぞ」
「他人の空似でしょう」
振り返らずに言葉を返すジンの背中へ、マリウスは針のような視線を送る。
「――空似、か? オレは先日までファニーラ国へ遠征していたのだが、貴様はかの国へ行った事は?」
「ありませんね」
出会ったばかりの相手に求婚されるなんて、初めての体験だ。
しかも、王都中のあらゆる女性に好かれるであろう、こんな美丈夫の青年将校にだ。
嬉しいと思うよりも、困惑の方が強い。
「その、あまり御冗談も――」
「冗談などではない。オレは本気だ」
即座に言い返すマリウスに、妹のミリアも隣で諦めたように溜め息をつく。
「兄さん、他所のパーティーでいきなり求婚は失礼でしょう」
「なに?」
「街の平民じゃないんだから、少しは手順というものを考えてよ。……リリス様、兄さんはこの通り融通の利かない男ですが、恋愛に関しては偽らない男です。不躾だとは思いますが、どうか一度我が家へいらっしゃいませんか? 後日、ガーデンパーティーへ御招待したいのですが」
つまり、一度仕切り直しをしようという事か。
この一連のやり取りは、やはり悪目立ちしていたようで、衆目を集めてしまっている。
このままでは、主催者である第二王女の顔を潰しかねない。
(マズいわね。本来パーティーの主役ではない私があまり目立ってしまっては、逆恨みを買いかねないわ)
リリスが「では、」と言いかけるが、それよりも先に傍で控えていたジンが口を開いた。
「申し訳ありませんが、リリス様は大変お忙しいので、御招待は遠慮いたします。さ、参りましょう」
「え、ええ……」
ジンに促されるまま、その場を離れるリリスであるが。
そのジンを鋭い眼差しで見詰めると、マリウスは訝しむように声を発した。
「少し待て。貴様のその顔……何処かで見た事があるぞ」
「他人の空似でしょう」
振り返らずに言葉を返すジンの背中へ、マリウスは針のような視線を送る。
「――空似、か? オレは先日までファニーラ国へ遠征していたのだが、貴様はかの国へ行った事は?」
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