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 故に、第二王女のアプローチは、完全なる予定外の出来事だった。

「兄さん、やっぱりまた来てるわよ。どうするの?」

 妹のミリアはそう言うと、困惑した表情で立派な装丁をした招待状を差し出した。
 送り主は、目下マリウスの頭痛の種である、第二王女のマルグレーテだ。

 これに対し、マリウスは不機嫌そうに鼻を鳴らす。

「フン。どうするも何も、誘われているのはオレじゃなくてお前じゃないか。だったら、またお前が出席すればいい」
「あのねー! エスコート役は是非お兄様にって、しっかりと書いてあるのよ? 無視して護衛騎士を連れて行ったら、凄く睨まれて怖かったんだから!」

 そうなのだ。

 なんと、あれから殆ど日を置かずに、招待状が屋敷へ届くようになってしまったのだ。
 軍部の式典がまだ残っているので、あと数週間は王都へ逗留しなければならないのだが、マリウスは全部キャンセルして早々に領地へ帰りたくて仕方がない。

(その前に、リリス嬢には会っておきたいが)

 自慢ではないが、今までマリウスは、自分から誰かに対して交際を申し込んだ事は無かった。
 あの第二王女のように、大抵は向こうの方から好意を熱心にアピールして来たから、マリウスが何か努力しなくても自然と恋人は出来たのだ。

 だが、リリスは違う。

 マリウスの求婚など迷惑であるかのように受け流し、そのまま姿を消してしまった。

 あんなに呆気なく去られるなど、経験した事もない。

 しかし彼には、勝算があった。

 つれないリリスの態度であるが、実はあれはただのであり、その後に何かしらのリアクションがあるのだろうと。

――――そう、思っていたのだが。

(まさか本当に、何の反応も無いとは思いもしなかった。おかげで、無駄に五日も過ごしてしまった! 待ちの戦法など、彼女には通じないらしい。こちらから攻めねば。王都にいる間に、出来るだけリリスと仲を深めたいが……)

「旦那様、海軍のシャロン様がいらっしゃいました」

 思いに耽る矢先に、執事からそう声を掛けれた。
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