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第11話 いつか同じ空の下
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「……え、彼、居ないんですか?」
「知らなかったの?」
とエフウッド教授は彼女に問い返した。
「新しい身体」の二ヶ月程のリハビリを終えたある日、彼女は大学のキャンパスへと久しぶりに出向いていた。
しかしそれは学生としてではない。彼女の学籍は、入院中に抹消されていた。それが実家の両親のせいだ、とは判っていたが、今の彼女に反論できる術はなかった。
あの後、目を覚ましたと言って、仕事をなげうってやってきた父親は、命を落として何が研究だ、と彼女に怒鳴った。
怒鳴って、そして泣いた。
さすがにそれを見たら、これ以上の研究を続けたい、と言うことはできなくなってしまった。
母親は自分が産んだ娘の身体が失われてしまったことを、いつまでも悲しがっていた。おそらくそれは、本人より強く。本人は、と言えば、当初の衝撃を過ぎると、後は割り切っていた。どういう顔であろうが、自分は自分だ、という気持ちもあった。
だから医師から元の顔への整形を告げられた時、彼女は拒否した。両親は何故だ、と詰め寄ったが、それに対しては決して退かなかった。
戒めの様なものだ、と彼女は自分に言い聞かせる。好きなことに突っ走るのはいいが、そこには代償が必要なのかもしれない、という。
その時、二度目の父親の涙を見た。そして、それを見ながら、もう一人、自分のために泣いてくれるだろう男のことを思い出していた。
「キュア・ファミはもうこの学校には居ないんだよ」
エフウッド教授は念を押すように言った。この教授も、全くの別人の顔をして入ってきた彼女に当初ひどく驚いた。IDを確認して、それでもまだ半信半疑だったくらいである。
まあ当然だろう、と彼女は思う。だからかつての級友には、すれ違っても声もかけなかった。彼らは自分に気付かなかった。それでいい、と彼女は思った。長期休暇をとった後の突然の退学の理由をあれこれ問われるのは嬉しくはない。
しかし恩師には会っておきたい。会って何があったのかをちゃんと伝えておきたい、と彼女は思ったのだ。
彼女はコヴィエでの出来事を、覚えている限り教授に語った。建物の種類、自分の見た印象、その土地の人々の対応、……そしてあの少年のことも。
「あたしが受けた、あの空襲で……どうなったんでしょうか。うちの人々はそのことについては絶対言ってはくれないし、あたし自身もやっぱり」
「聞きにくい?」
ええ、とエラは答えた。
「これが平和な時だったらともかく…… この時期にあたしが危険度Bのところへわざわざ出向いたのを、やっぱり怒っていますから。あたしがケガをしたから、口に出してはそうそう怒らないけれど、もうその方面のことは考えても欲しくない、と思っているに違いないです」
「まあ、親だしなあ。……残念だけどね。僕としても。君の様に熱心な学生は居なかった。……これからも出てこないだろうね」「それは買いかぶりですよ」
いやいや、と教授は手を横に振る。
「……キュアは」
はっとして彼女は身構える。
「もう三ヶ月くらいになるかな。まだ君が」
「眠っていた頃、ですか」
「ああ。はっきり言って、彼には最悪の時期だったとしか言い様がない。君がコヴィエで死んだ、という知らせが、この学部に入ってきたんだ」
「あたし、死んだことになってるんですか?」
「いや、無論その後に正式情報が入っても来たんだが、一度学内に広まった噂というのはなかなか消えないだろう? 君は弁明に来られる状態ではなかった訳だし」
「それはそうですが」
「彼は荒れたね、その時」
予想はつく。きっと彼が以前に言った様に、部屋は滅茶苦茶になっただろう。泣きわめいて、手当たり次第に物を投げつけただろう。子供の様に。
「……追い打ちをかける様に、例の、ディフィールド教授の軍の要請が本決まりになったんだ。と、同時に、その任務の内容も、明らかになった。そこで彼は切れてしまったんだ」
「任務、って何ですか?」
「……破壊工作だよ」
「は」
エラは思わず問い返していた。言葉の意味が、上手く理解できなかった。教授もさすがに言葉が足りないと思ったのか、すぐに付け足した。
「……各地にある、歴史のある建物の中でも、構造が現在主流のものとは違うものもあるだろう? そういうものを如何に効率良く破壊するか、そのために、専門家が必要だ、ということなんだ」
「……それって……」
教授は口をつぐみ、目も閉じた。
「それって、何ですか!? 建物を作るために参加するならともかく、壊すために参加、なんですか?」
「そうなんだよ。信じたくはなかったが…… いや、そういう要請を軍がするだろうことは想像できた。だから僕は絶対にそれには与したくなかった。正解だったよ。何の仕事か知らないで行って、目の前で、植民初期の建物が破壊されるなんて……」
ふるふる、と教授は首を横に振る。
「……それは、仕方なく、ですか?」
「いや前から君にも言っていたかもしれないけど――― 積極的な参加だ。実際、ここで名と顔を売っておけば、この戦争が終わった後の各地の復興計画が起きた時に優位に立てるだろうからね…… でも」
エラはうなづいた。絶対に、この教授にはできないことだろう、と思う。
「……そしてキュアは」
びく、と彼女は身体を奮わせた。
「キュアは、それを知った時、とうとう教授に造反した」
「……やはり」
あの男がしない訳がない、と彼女は思った。確かにやがて全星系を飛び回るためには名を高めておきたい、という下心有りで入った研究室である。しかし、それにも限度というものがある。ディフィールド教授が、破壊目的の参加をすることに、キュアが平気で居るはずがない。
「ディフィールド教授は、そんな学生なら要らない、とばかりに、彼の提出した卒業製作計画を置いていった」
「置いて」
「一応向こうでも、愛弟子達にはちゃんとそれなりに通信で指導できる様に、資料やら何やら持っていったらしい。待遇はいいらしいから、資料くらい置く場所はあるだろう。しかし出かけた後の研究室に、キュアの提出したものは、無造作に置き忘れられていたそうだ」
「それって」
「それが故意なのかどうなのかは判らない。ただ一つ言えたのは、彼の卒業製作は、期間内に終了しない、ということだった。キュアは確か、授業料免除の学生だろう?」
「ええ。そう聞いたことがあります」
「その立場の学生には、留年とか落第というのは許されないんだ。つまり、キュアは教授からこの学校を出て行け、と宣告されたようなものだったんだよ」
「ひどい……」
「彼の選択が最初から間違っていた、と言ったらそれまでだけど――― でも僕が学生だったとしても、キュアと同じことをしたかもしれない。ただ僕は彼より消極的だから」
そう言って教授はやや寂しそうに苦笑した。
「彼はその直後、退学届けを出して、恐ろしい速さでこの学校を去っていったんだ。誰も行き先を聞いていないし、誰も聞こうとしなかったらしい」
だろうな、と彼女は思う。彼はそういうひとだった。
「どうしよう? 彼の消息を追うつもりかい?」
「いいえ」
エラは首を横に振る。
「……今は、できません」
「君は彼のことが好きだったのだろう?」
「ええ。好きでした。いえ今でも好きです。だけど、あたし、今どんな顔をしていると思いますか?」
ああ、と教授はため息をついた。
「……あたし、来月結婚するんです」
「それは」
さすがに教授もそれには驚いたようだった。
「それは、君が前に言っていた婚約者、のことかい?」
「ええ。変わった人で、あたしの顔が変わったというのに、身体が人工のものに変わってしまったというのに、子供はできないというのに、それがどうしたの、という顔で居てくれたものですから」
エラはそれだけ一気にまくし立てた。
「本当ですよ、教授。だからあたし後悔はしていないんです。後悔は」
「判ったエラ、判ったから」
泣きそうな顔で言う彼女に、教授はなだめる様に手を振った。
「……キュアが好きなんです。あたし。今でも、誰よりも、すごく、好きなんです。一緒に居たいんです。甘やかして、甘えて、ずっと側に居たかった。でも、自分の力で立ちたかったのに、そのせいで周囲に迷惑をかけてしまった。両親を悲しませた。軍の手まで借りてしまった。……今のあたしは、彼と並んで歩くことは、できないと思うんです」
「そう――― 思うんだね」
「ええ」
ふう、と教授はため息をつく。
「そう君が言うなら仕方ないね。……僕はもう、何処か遠い空の下で、君達がいつかこだわりなく会える日が来るのを待つしかないんだろうね」
そんな日が来るだろうか、とエラはふと窓の外を見た。
「知らなかったの?」
とエフウッド教授は彼女に問い返した。
「新しい身体」の二ヶ月程のリハビリを終えたある日、彼女は大学のキャンパスへと久しぶりに出向いていた。
しかしそれは学生としてではない。彼女の学籍は、入院中に抹消されていた。それが実家の両親のせいだ、とは判っていたが、今の彼女に反論できる術はなかった。
あの後、目を覚ましたと言って、仕事をなげうってやってきた父親は、命を落として何が研究だ、と彼女に怒鳴った。
怒鳴って、そして泣いた。
さすがにそれを見たら、これ以上の研究を続けたい、と言うことはできなくなってしまった。
母親は自分が産んだ娘の身体が失われてしまったことを、いつまでも悲しがっていた。おそらくそれは、本人より強く。本人は、と言えば、当初の衝撃を過ぎると、後は割り切っていた。どういう顔であろうが、自分は自分だ、という気持ちもあった。
だから医師から元の顔への整形を告げられた時、彼女は拒否した。両親は何故だ、と詰め寄ったが、それに対しては決して退かなかった。
戒めの様なものだ、と彼女は自分に言い聞かせる。好きなことに突っ走るのはいいが、そこには代償が必要なのかもしれない、という。
その時、二度目の父親の涙を見た。そして、それを見ながら、もう一人、自分のために泣いてくれるだろう男のことを思い出していた。
「キュア・ファミはもうこの学校には居ないんだよ」
エフウッド教授は念を押すように言った。この教授も、全くの別人の顔をして入ってきた彼女に当初ひどく驚いた。IDを確認して、それでもまだ半信半疑だったくらいである。
まあ当然だろう、と彼女は思う。だからかつての級友には、すれ違っても声もかけなかった。彼らは自分に気付かなかった。それでいい、と彼女は思った。長期休暇をとった後の突然の退学の理由をあれこれ問われるのは嬉しくはない。
しかし恩師には会っておきたい。会って何があったのかをちゃんと伝えておきたい、と彼女は思ったのだ。
彼女はコヴィエでの出来事を、覚えている限り教授に語った。建物の種類、自分の見た印象、その土地の人々の対応、……そしてあの少年のことも。
「あたしが受けた、あの空襲で……どうなったんでしょうか。うちの人々はそのことについては絶対言ってはくれないし、あたし自身もやっぱり」
「聞きにくい?」
ええ、とエラは答えた。
「これが平和な時だったらともかく…… この時期にあたしが危険度Bのところへわざわざ出向いたのを、やっぱり怒っていますから。あたしがケガをしたから、口に出してはそうそう怒らないけれど、もうその方面のことは考えても欲しくない、と思っているに違いないです」
「まあ、親だしなあ。……残念だけどね。僕としても。君の様に熱心な学生は居なかった。……これからも出てこないだろうね」「それは買いかぶりですよ」
いやいや、と教授は手を横に振る。
「……キュアは」
はっとして彼女は身構える。
「もう三ヶ月くらいになるかな。まだ君が」
「眠っていた頃、ですか」
「ああ。はっきり言って、彼には最悪の時期だったとしか言い様がない。君がコヴィエで死んだ、という知らせが、この学部に入ってきたんだ」
「あたし、死んだことになってるんですか?」
「いや、無論その後に正式情報が入っても来たんだが、一度学内に広まった噂というのはなかなか消えないだろう? 君は弁明に来られる状態ではなかった訳だし」
「それはそうですが」
「彼は荒れたね、その時」
予想はつく。きっと彼が以前に言った様に、部屋は滅茶苦茶になっただろう。泣きわめいて、手当たり次第に物を投げつけただろう。子供の様に。
「……追い打ちをかける様に、例の、ディフィールド教授の軍の要請が本決まりになったんだ。と、同時に、その任務の内容も、明らかになった。そこで彼は切れてしまったんだ」
「任務、って何ですか?」
「……破壊工作だよ」
「は」
エラは思わず問い返していた。言葉の意味が、上手く理解できなかった。教授もさすがに言葉が足りないと思ったのか、すぐに付け足した。
「……各地にある、歴史のある建物の中でも、構造が現在主流のものとは違うものもあるだろう? そういうものを如何に効率良く破壊するか、そのために、専門家が必要だ、ということなんだ」
「……それって……」
教授は口をつぐみ、目も閉じた。
「それって、何ですか!? 建物を作るために参加するならともかく、壊すために参加、なんですか?」
「そうなんだよ。信じたくはなかったが…… いや、そういう要請を軍がするだろうことは想像できた。だから僕は絶対にそれには与したくなかった。正解だったよ。何の仕事か知らないで行って、目の前で、植民初期の建物が破壊されるなんて……」
ふるふる、と教授は首を横に振る。
「……それは、仕方なく、ですか?」
「いや前から君にも言っていたかもしれないけど――― 積極的な参加だ。実際、ここで名と顔を売っておけば、この戦争が終わった後の各地の復興計画が起きた時に優位に立てるだろうからね…… でも」
エラはうなづいた。絶対に、この教授にはできないことだろう、と思う。
「……そしてキュアは」
びく、と彼女は身体を奮わせた。
「キュアは、それを知った時、とうとう教授に造反した」
「……やはり」
あの男がしない訳がない、と彼女は思った。確かにやがて全星系を飛び回るためには名を高めておきたい、という下心有りで入った研究室である。しかし、それにも限度というものがある。ディフィールド教授が、破壊目的の参加をすることに、キュアが平気で居るはずがない。
「ディフィールド教授は、そんな学生なら要らない、とばかりに、彼の提出した卒業製作計画を置いていった」
「置いて」
「一応向こうでも、愛弟子達にはちゃんとそれなりに通信で指導できる様に、資料やら何やら持っていったらしい。待遇はいいらしいから、資料くらい置く場所はあるだろう。しかし出かけた後の研究室に、キュアの提出したものは、無造作に置き忘れられていたそうだ」
「それって」
「それが故意なのかどうなのかは判らない。ただ一つ言えたのは、彼の卒業製作は、期間内に終了しない、ということだった。キュアは確か、授業料免除の学生だろう?」
「ええ。そう聞いたことがあります」
「その立場の学生には、留年とか落第というのは許されないんだ。つまり、キュアは教授からこの学校を出て行け、と宣告されたようなものだったんだよ」
「ひどい……」
「彼の選択が最初から間違っていた、と言ったらそれまでだけど――― でも僕が学生だったとしても、キュアと同じことをしたかもしれない。ただ僕は彼より消極的だから」
そう言って教授はやや寂しそうに苦笑した。
「彼はその直後、退学届けを出して、恐ろしい速さでこの学校を去っていったんだ。誰も行き先を聞いていないし、誰も聞こうとしなかったらしい」
だろうな、と彼女は思う。彼はそういうひとだった。
「どうしよう? 彼の消息を追うつもりかい?」
「いいえ」
エラは首を横に振る。
「……今は、できません」
「君は彼のことが好きだったのだろう?」
「ええ。好きでした。いえ今でも好きです。だけど、あたし、今どんな顔をしていると思いますか?」
ああ、と教授はため息をついた。
「……あたし、来月結婚するんです」
「それは」
さすがに教授もそれには驚いたようだった。
「それは、君が前に言っていた婚約者、のことかい?」
「ええ。変わった人で、あたしの顔が変わったというのに、身体が人工のものに変わってしまったというのに、子供はできないというのに、それがどうしたの、という顔で居てくれたものですから」
エラはそれだけ一気にまくし立てた。
「本当ですよ、教授。だからあたし後悔はしていないんです。後悔は」
「判ったエラ、判ったから」
泣きそうな顔で言う彼女に、教授はなだめる様に手を振った。
「……キュアが好きなんです。あたし。今でも、誰よりも、すごく、好きなんです。一緒に居たいんです。甘やかして、甘えて、ずっと側に居たかった。でも、自分の力で立ちたかったのに、そのせいで周囲に迷惑をかけてしまった。両親を悲しませた。軍の手まで借りてしまった。……今のあたしは、彼と並んで歩くことは、できないと思うんです」
「そう――― 思うんだね」
「ええ」
ふう、と教授はため息をつく。
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