〈完結〉ある日予告も無しに赤紙が届いたんですが

江戸川ばた散歩

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 大学から帰り、俺はアパートのポストを開いた。
 そして次の瞬間、閉じた。
 数秒考えた。
 開けるべきか否か。
 開けたくない、という気持ちに応えてやりたかった。
 正直、一瞬見えたものを脳裏から消去したかった。
 だが現実に全ては敵わない。
 俺はおそるおそる、ポストを再び開けた。
 ため息をついた。
 嗚呼。
 見間違いではなかった。
 濃いサモンピンクの定形サイズの封筒が一通。
 差出人の名は無い。あえて頭の中を空っぽにして、封を破った。
 中には同じ色のカードが一枚。
 ただ一言金文字で「招待状」と書かれただけの。
 気が付くと、ポケットから携帯を取り出し、親指が無意識に友人の一人を呼びだしていた。
 コール音が聞こえるかどうか、というくらいの早さで相手は出た。
 思わず耳に受話器を強く押し当てる。

『高村か』

 低い、問いかける声が耳に飛び込んできた。
 俺は唾を一度飲み込んでから、できるだけ冷静に、と思いながら口を開いた。

「佐久田、赤紙が来たんだ、俺。やだね、誰が俺のことからかったんだろ。こういうイタズラって信じられる? このご時世でさ。ねえ、聞いてる?」

 まくし立てる俺に、佐久田は「聞いてる」といつもと同じ口調で言った。
 そして少しの間を空けると、こう付け足した。

『俺もだ』
「え?」
『俺にも、来た。赤紙が』

 その時俺はようやく「そんな馬鹿な」と思った。
 そんなことはあり得ない。
 あっていいはずがない。
 だって。
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