4 / 11
4
しおりを挟む
そう、問題はそれだけなのだ。
あの日を境に、「見えない壁」で分かたれた「アイする者同士」の元に、手紙が舞い込むようになった。
「戦争に参加せよ」と。
召集令状だ。
ある日突然。
予告もなく。
赤みの強いサモンピンクの封筒に「招待状」と書かれたカードだけが入ったものを「赤紙」と呼ぶようになったのは皮肉だろうか。
「召集」された者はそれから数時間から数日以内にその場から消えた。
文字通り「消える」のだ。
ふっ、と。
最初はお昼の生放送のトーク番組で司会の前から女性ゲストが消えた。
驚く司会者の姿は、あっという間にサイケデリック万華鏡に切り替わった。
その中に女性ゲストと、誰だか判らない男が映し出された。
お昼時、学食で「ありゃ誰だ?」「何で**ちゃんが?」等の言葉が飛んだ。
そこに金髪男の皮肉な声だけが響き渡った。
『さーあ、相手と戦いましょう! 選ばれたアイし合う恋人達よ! 殺し合いましょう!』
「戦争」がようやく形をとった瞬間だった。
俺は「これか!」と頭を横からがん、と殴られた気分だった。
二人の頭上に白手袋だけが浮かび上がる。
下手に顔が出てくるよりずっと怖かった。
『ルールは簡単。相手を殺したら終わり。できないならずっとこの中。いいですよ? 別に。ここではアナタ方、お腹空きませんし疲れもしません。アナタは東。アナタは西。勝った側にポイントがつきます。負けた側は…… むふふふふ』
ぞくり。
悪寒が走った。
『さーあ、がんばって戦って下さい。考えつく自分の最も得意なもので。ここには何でもあります。相手を倒すためのものは。思えば出てきます。何がいいですか?銃? 刀? 爆弾? それとも包丁?』
この時を皮切りに、不意打ちにこの「戦争」が全世界一斉にTVモニタに映し出される様になった。
毎日何処かで誰かが戦う姿が見られる様になった。
一組の場合もあれば、画面が九つに区切られたこともあった。
当初はサイケデリック万華鏡が背景だったが、やがてそれでは「戦争」が見にくいと誰かさんは思ったのだろうか、実に目に優しい背景色となった。
その目に優しい背景色の中では、殺伐とした「戦争」。
例えば。
とある日映されていたカップルは、泣きながら包丁とダイナマイトを手にしていた。
彼等が互いに突進して爆散した。そして画面には「GAME OVER」の文字が出た。
また別のカップルは、様々な武器を山と積みながら横並びに膝を抱え、じっと動かずにしばらく悩んでいた。
どれだけの時間が過ぎただろう。
やがてふっと顔を上げた女は小型のマシンガンを掴むと、男に向かってぶっ放した。
撃たれた男は血まみれになってその場に倒れた。撃った女は銃の反動で何処かへ飛んでいき、その行方が知れないまま。
またまた別のカップルは「アンタアタシを殺してもいいと思ってたの!?」「お前こそ!」といった会話を繰り広げた挙げ句、殴る蹴るの肉弾戦の果て、不意に爽やかな笑顔になると、それぞれ自分自身の頭をピストルで打ち抜いた。
一番嫌だったのは、その場でお互いが好き合っているということが判ってしまったカップルだ。
そういう時に限って、一組だけしか画面に登場させず、無駄にカメラアングルも凝っていた。
……さすがにその結末を俺は見る勇気は無かった。
例は挙げればきりが無い。
いずれにせよ、吐き気がする程嫌な光景なのに、TVのスイッチを切ることもできず、俺達はその様子を見続けていた。
負けた側、について金髪男は何も語らなかった。また、
ポイントがつくという、勝った側の帰還の話も聞かない。
ひどく胸くそ悪く、そして良くも悪くもカタルシスも無い「戦争」。
その召集令状が「赤紙」。
俺達の元に届いたのは、そんなものだった。
だからあり得ない、と俺は思った。
何故なら、俺のアイする相手は、当の電話の向こう側に居る奴なのだ。
あの日を境に、「見えない壁」で分かたれた「アイする者同士」の元に、手紙が舞い込むようになった。
「戦争に参加せよ」と。
召集令状だ。
ある日突然。
予告もなく。
赤みの強いサモンピンクの封筒に「招待状」と書かれたカードだけが入ったものを「赤紙」と呼ぶようになったのは皮肉だろうか。
「召集」された者はそれから数時間から数日以内にその場から消えた。
文字通り「消える」のだ。
ふっ、と。
最初はお昼の生放送のトーク番組で司会の前から女性ゲストが消えた。
驚く司会者の姿は、あっという間にサイケデリック万華鏡に切り替わった。
その中に女性ゲストと、誰だか判らない男が映し出された。
お昼時、学食で「ありゃ誰だ?」「何で**ちゃんが?」等の言葉が飛んだ。
そこに金髪男の皮肉な声だけが響き渡った。
『さーあ、相手と戦いましょう! 選ばれたアイし合う恋人達よ! 殺し合いましょう!』
「戦争」がようやく形をとった瞬間だった。
俺は「これか!」と頭を横からがん、と殴られた気分だった。
二人の頭上に白手袋だけが浮かび上がる。
下手に顔が出てくるよりずっと怖かった。
『ルールは簡単。相手を殺したら終わり。できないならずっとこの中。いいですよ? 別に。ここではアナタ方、お腹空きませんし疲れもしません。アナタは東。アナタは西。勝った側にポイントがつきます。負けた側は…… むふふふふ』
ぞくり。
悪寒が走った。
『さーあ、がんばって戦って下さい。考えつく自分の最も得意なもので。ここには何でもあります。相手を倒すためのものは。思えば出てきます。何がいいですか?銃? 刀? 爆弾? それとも包丁?』
この時を皮切りに、不意打ちにこの「戦争」が全世界一斉にTVモニタに映し出される様になった。
毎日何処かで誰かが戦う姿が見られる様になった。
一組の場合もあれば、画面が九つに区切られたこともあった。
当初はサイケデリック万華鏡が背景だったが、やがてそれでは「戦争」が見にくいと誰かさんは思ったのだろうか、実に目に優しい背景色となった。
その目に優しい背景色の中では、殺伐とした「戦争」。
例えば。
とある日映されていたカップルは、泣きながら包丁とダイナマイトを手にしていた。
彼等が互いに突進して爆散した。そして画面には「GAME OVER」の文字が出た。
また別のカップルは、様々な武器を山と積みながら横並びに膝を抱え、じっと動かずにしばらく悩んでいた。
どれだけの時間が過ぎただろう。
やがてふっと顔を上げた女は小型のマシンガンを掴むと、男に向かってぶっ放した。
撃たれた男は血まみれになってその場に倒れた。撃った女は銃の反動で何処かへ飛んでいき、その行方が知れないまま。
またまた別のカップルは「アンタアタシを殺してもいいと思ってたの!?」「お前こそ!」といった会話を繰り広げた挙げ句、殴る蹴るの肉弾戦の果て、不意に爽やかな笑顔になると、それぞれ自分自身の頭をピストルで打ち抜いた。
一番嫌だったのは、その場でお互いが好き合っているということが判ってしまったカップルだ。
そういう時に限って、一組だけしか画面に登場させず、無駄にカメラアングルも凝っていた。
……さすがにその結末を俺は見る勇気は無かった。
例は挙げればきりが無い。
いずれにせよ、吐き気がする程嫌な光景なのに、TVのスイッチを切ることもできず、俺達はその様子を見続けていた。
負けた側、について金髪男は何も語らなかった。また、
ポイントがつくという、勝った側の帰還の話も聞かない。
ひどく胸くそ悪く、そして良くも悪くもカタルシスも無い「戦争」。
その召集令状が「赤紙」。
俺達の元に届いたのは、そんなものだった。
だからあり得ない、と俺は思った。
何故なら、俺のアイする相手は、当の電話の向こう側に居る奴なのだ。
0
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
優秀な婚約者が去った後の世界
月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。
パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。
このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。
陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)
ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。
僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。
隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。
僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。
でも、実はこれには訳がある。
知らないのは、アイルだけ………。
さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
オメガの復讐
riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。
しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。
とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる