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まだ頬の赤みが残っているだろうか。
それに気付いたか気付かないか、奴は無言で俺の横を通り抜けて行く。
つかつかとキッチンのテーブルに近付くと、放り出したままの赤紙に視線をやった。
「あ……」
それに俺が気付いた時には赤紙は既に奴の手の中だった。
奴は眼鏡のブリッジを軽く押すと、封の中を神妙な顔で確かめる。
そして内ポケットに手を突っ込み。
「ほら」
同じ色、同じ形の封筒を取り出した。
「お前のことだから、嘘だろうとか何とか、ぐるぐる考えてると思ってたけど」
「別に」
ぷい、と横を向く。その顔を掴まれ、ぐい、と元に戻される。
「やっぱり考えてたんだろう?」
そう言ってふっ、と笑った。そこは笑うところじゃないだろう。
「……考えてたよ。考えてたら悪いか?」
「悪くない」
もう一度首を振って、その手を離す。
すると今度は手首を。
そして空いた方の手で。
「本物だよ」
奴は手にした赤紙を二つ、ひらひらと振ってみせる。
「……そんなこと無い」
「何で」
「何でって」
声が詰まる。
目を逸らす。
奴は続ける。
「俺が好きなのはお前なんだから、これは本物だろ」
うああああああ。
直球で来た。
来やがった。
頬だけでない。掴まれた顔全体の温度が一気に上がるのが判る。
そして俺に来た方をかざし。
「お前は?」
最後通牒を突き付けやがった。
「いや、あの! だけど! 俺達幼なじみだろ? お前ずっと俺のご近所だったじゃないか!」
「……それについてはさっき親に電話して聞いてみた。俺の本籍は、残念ながら向こう側だった」
本籍。
そうか本籍ですか。
そういうものをいちいち調べてカップルを見つけだし、赤紙を出す訳ですかそうですか。
へなへな、と腰の力が抜けるのが判る。
尻餅をついていた。
考えるのも馬鹿馬鹿しくなってくる様な「戦争」なのに、何でそんなところばかり、変に細かいのだろう。
姿勢が低くなると、奴のバッグに視線が行った。
「……何ですか佐久田くん、その荷物は」
そう、確か、それも先程から気に掛かっていたはずなのだ。
「ああ。しばらくここに居させてもらおうと思って」
「そんなお前、一方的な」
「今、お前と離れているのは嫌だ。俺達はいつ召集されるか判らないんだぞ。その時には俺はお前の側に居たい」
「どうしてそんな恥ずかしい台詞を言えるんだあ!」
「さっきも言ったろう。好きだからだ。お前は絶対気付いていないだろうと思っていたが、ずっと好きだった」
「まさかお前、それで俺と同じ高校大学……」
「当然だろう」
胸を張るな胸を。
そして問い返してくる。
「お前はどうなんだ? 高村。あいにく俺は怖くて聞けなかったんだ」
佐久田は腰を屈めた。
俺と目線の高さを合わせる。
思わず俺は後ずさりする。
奴はそれを見逃さない。
退いた分だけ寄ってくる。
じりじり。
じりじり。
やがて俺は背中がシンク下の収納庫の扉につくのを感じる。
行き止まりだ。
デッドエンド。
俺ははあ、と大きく息をつくと、がくんと首を前に落とした。
「……なあ佐久田」
「うん?」
「俺さ、こういうことで知りたくなかった。お前の気持ち。……知られたくなかった。俺の」
言い終わる前につ、と顎に手を掛けられた。
そこでキスするなんて、反則だ。
それに気付いたか気付かないか、奴は無言で俺の横を通り抜けて行く。
つかつかとキッチンのテーブルに近付くと、放り出したままの赤紙に視線をやった。
「あ……」
それに俺が気付いた時には赤紙は既に奴の手の中だった。
奴は眼鏡のブリッジを軽く押すと、封の中を神妙な顔で確かめる。
そして内ポケットに手を突っ込み。
「ほら」
同じ色、同じ形の封筒を取り出した。
「お前のことだから、嘘だろうとか何とか、ぐるぐる考えてると思ってたけど」
「別に」
ぷい、と横を向く。その顔を掴まれ、ぐい、と元に戻される。
「やっぱり考えてたんだろう?」
そう言ってふっ、と笑った。そこは笑うところじゃないだろう。
「……考えてたよ。考えてたら悪いか?」
「悪くない」
もう一度首を振って、その手を離す。
すると今度は手首を。
そして空いた方の手で。
「本物だよ」
奴は手にした赤紙を二つ、ひらひらと振ってみせる。
「……そんなこと無い」
「何で」
「何でって」
声が詰まる。
目を逸らす。
奴は続ける。
「俺が好きなのはお前なんだから、これは本物だろ」
うああああああ。
直球で来た。
来やがった。
頬だけでない。掴まれた顔全体の温度が一気に上がるのが判る。
そして俺に来た方をかざし。
「お前は?」
最後通牒を突き付けやがった。
「いや、あの! だけど! 俺達幼なじみだろ? お前ずっと俺のご近所だったじゃないか!」
「……それについてはさっき親に電話して聞いてみた。俺の本籍は、残念ながら向こう側だった」
本籍。
そうか本籍ですか。
そういうものをいちいち調べてカップルを見つけだし、赤紙を出す訳ですかそうですか。
へなへな、と腰の力が抜けるのが判る。
尻餅をついていた。
考えるのも馬鹿馬鹿しくなってくる様な「戦争」なのに、何でそんなところばかり、変に細かいのだろう。
姿勢が低くなると、奴のバッグに視線が行った。
「……何ですか佐久田くん、その荷物は」
そう、確か、それも先程から気に掛かっていたはずなのだ。
「ああ。しばらくここに居させてもらおうと思って」
「そんなお前、一方的な」
「今、お前と離れているのは嫌だ。俺達はいつ召集されるか判らないんだぞ。その時には俺はお前の側に居たい」
「どうしてそんな恥ずかしい台詞を言えるんだあ!」
「さっきも言ったろう。好きだからだ。お前は絶対気付いていないだろうと思っていたが、ずっと好きだった」
「まさかお前、それで俺と同じ高校大学……」
「当然だろう」
胸を張るな胸を。
そして問い返してくる。
「お前はどうなんだ? 高村。あいにく俺は怖くて聞けなかったんだ」
佐久田は腰を屈めた。
俺と目線の高さを合わせる。
思わず俺は後ずさりする。
奴はそれを見逃さない。
退いた分だけ寄ってくる。
じりじり。
じりじり。
やがて俺は背中がシンク下の収納庫の扉につくのを感じる。
行き止まりだ。
デッドエンド。
俺ははあ、と大きく息をつくと、がくんと首を前に落とした。
「……なあ佐久田」
「うん?」
「俺さ、こういうことで知りたくなかった。お前の気持ち。……知られたくなかった。俺の」
言い終わる前につ、と顎に手を掛けられた。
そこでキスするなんて、反則だ。
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