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幕間1 エンジュは雑誌を出す(後)
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「出版、ですか」
「そうだ。うちにも元々出版業はあることはある。その中に一つ、計画段階のものがあってな。女性向けの雑誌を中心としたものだ」
「雑誌…… 目的は何ですか」
「目的、というか目標だな。現在一番売れている婦人雑誌を知っているな?」
「ええ」
無論エンジュは知っている。
それこそ、富裕層以上の流行のファッションを中心とした図録の様なものから、女性向け文学誌、庶民の間に広まっている型録、料理本、裁縫本、帝都の店を紹介するガイドブック、下町の娘達が回し読みするゴシップ雑誌の様なものまで網羅している。
しかしその中で最も売れているのは。
「帝都女性倶楽部ですね」
「そう」
帝都女性倶楽部は総合情報誌だ。
値段の割には分厚いページ数、目次を繰ると、上記の様々な雑誌の殆ど全てを網羅している。
毎号連載小説が四~五作、最新のファッションを着た女優の写真、その要素を詰めた自宅で作ることのできる飾り物の作り方、それに読者の体験記だろうか。
「実際あれは非常に面白いです。ただ」
「ただ、何だ?」
「もう少し記事の範囲を広げてもいいんじゃないか、とはよく思います」
ふうむ、と父子爵は顎を撫でた。
「ではお前には新しい女性雑誌を一つ任せよう。そして帝都女性倶楽部を越えろ」
「任せ……? 作って、売る方のですか!?」
「まず形を示せ。それが売れると判断されたら営業部に話をつけてやる」
「製作は私一人ですか?」
「お前は出版業界のことは知らないだろう。だから他部署から幾人か回す。そいつ等と協力して作ってみろ」
「売れるものを、ですか?」
「結果として売れる、それがベストだ」
エンジュは眼鏡の下の瞳を面白そうに細めた。
*
二年後、エンジュの企画が形となった「帝国女性之友」と「帝都女性画報」が同時に本屋の店頭に並ぶ様になった。
エンジュは男女半々のスタッフと共に試行錯誤を繰り返しながら二つの傾向の雑誌を提案した。
一つは「帝都女性倶楽部」と同系統のもの。
ただし「倶楽部」の見据えた読者層・購買層が帝都を中心とした一つの文化圏であるのに対し、「友」は名前の通り、帝国全土を対象としていた。
販路も広げ、辺境四領には特派員も駐在させていた。
各地それぞれの独自の雑誌は細々と展開されていたが、全土を対象としたものは女性向け雑誌では初めてだった。
それだけにリスクも高い。
そこでまず、先に広告用の「予告号」、を各地の本屋の数だけ刷り、店頭見本として発売の三ヶ月前から置き、店頭予約の方法を分かり易く入れた。
そしてまた、帝都の本屋には「画報」の「予告号」を。
こちらは特に予約方法は入れなかったのだが、「友」本誌に発行後、広告が掲載されることとなる。
「画報」は当初は帝都ファッション事情が中心なのだが。
何よりまず「多色刷り」であることが目玉だった。
それまで細かい線で描写されていただけのものに、具体的な色が付け加わったのだ。
当初は二色、朱と藍だけで様々な濃淡をつけ、あとは人々の想像に任せた形となったが、やがて三色刷りが可能になった時に、この雑誌は大きく売り上げを伸ばした。
写真もまだこの時代は白黒にしか写らなかったことから、東南辺境領独特の柄物の生地等は写真を着色したものを掲載し、それを現地の織物業界とつなげた。
「友」の売り上げはやがて「倶楽部」に匹敵していくが、「画報」はそれほど上がらなかったが、それでも社交界への影響は大きくなっていくのである。
「そうだ。うちにも元々出版業はあることはある。その中に一つ、計画段階のものがあってな。女性向けの雑誌を中心としたものだ」
「雑誌…… 目的は何ですか」
「目的、というか目標だな。現在一番売れている婦人雑誌を知っているな?」
「ええ」
無論エンジュは知っている。
それこそ、富裕層以上の流行のファッションを中心とした図録の様なものから、女性向け文学誌、庶民の間に広まっている型録、料理本、裁縫本、帝都の店を紹介するガイドブック、下町の娘達が回し読みするゴシップ雑誌の様なものまで網羅している。
しかしその中で最も売れているのは。
「帝都女性倶楽部ですね」
「そう」
帝都女性倶楽部は総合情報誌だ。
値段の割には分厚いページ数、目次を繰ると、上記の様々な雑誌の殆ど全てを網羅している。
毎号連載小説が四~五作、最新のファッションを着た女優の写真、その要素を詰めた自宅で作ることのできる飾り物の作り方、それに読者の体験記だろうか。
「実際あれは非常に面白いです。ただ」
「ただ、何だ?」
「もう少し記事の範囲を広げてもいいんじゃないか、とはよく思います」
ふうむ、と父子爵は顎を撫でた。
「ではお前には新しい女性雑誌を一つ任せよう。そして帝都女性倶楽部を越えろ」
「任せ……? 作って、売る方のですか!?」
「まず形を示せ。それが売れると判断されたら営業部に話をつけてやる」
「製作は私一人ですか?」
「お前は出版業界のことは知らないだろう。だから他部署から幾人か回す。そいつ等と協力して作ってみろ」
「売れるものを、ですか?」
「結果として売れる、それがベストだ」
エンジュは眼鏡の下の瞳を面白そうに細めた。
*
二年後、エンジュの企画が形となった「帝国女性之友」と「帝都女性画報」が同時に本屋の店頭に並ぶ様になった。
エンジュは男女半々のスタッフと共に試行錯誤を繰り返しながら二つの傾向の雑誌を提案した。
一つは「帝都女性倶楽部」と同系統のもの。
ただし「倶楽部」の見据えた読者層・購買層が帝都を中心とした一つの文化圏であるのに対し、「友」は名前の通り、帝国全土を対象としていた。
販路も広げ、辺境四領には特派員も駐在させていた。
各地それぞれの独自の雑誌は細々と展開されていたが、全土を対象としたものは女性向け雑誌では初めてだった。
それだけにリスクも高い。
そこでまず、先に広告用の「予告号」、を各地の本屋の数だけ刷り、店頭見本として発売の三ヶ月前から置き、店頭予約の方法を分かり易く入れた。
そしてまた、帝都の本屋には「画報」の「予告号」を。
こちらは特に予約方法は入れなかったのだが、「友」本誌に発行後、広告が掲載されることとなる。
「画報」は当初は帝都ファッション事情が中心なのだが。
何よりまず「多色刷り」であることが目玉だった。
それまで細かい線で描写されていただけのものに、具体的な色が付け加わったのだ。
当初は二色、朱と藍だけで様々な濃淡をつけ、あとは人々の想像に任せた形となったが、やがて三色刷りが可能になった時に、この雑誌は大きく売り上げを伸ばした。
写真もまだこの時代は白黒にしか写らなかったことから、東南辺境領独特の柄物の生地等は写真を着色したものを掲載し、それを現地の織物業界とつなげた。
「友」の売り上げはやがて「倶楽部」に匹敵していくが、「画報」はそれほど上がらなかったが、それでも社交界への影響は大きくなっていくのである。
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