〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩

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147 再び北西辺境領へ④伯と語る四人

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 宴の翌日、テンダー達四人は辺境伯自身と外を散策していた。

「そう、こちらの子供で意欲があって芽が出そうなのを育ててくれるとありがたいんだが」
「そういう話はリューミンもしていましたが、こちらの仕事には人手は常に必要では」

 伯は頷く。

「うむ。実際これから一つ何とかしたい案件がある。帝都との直通鉄道だ」
「直通…… というと、あの森を切り拓いて?」

 ファン医師が驚く。

「地理に詳しいな」
「いや、その位は…… 自分、かつて軍医をしていたこともありましたから、その辺りは少し敏感になっており」
「君等もだいたい雰囲気は分かるかね?」

 タンダだけはやや首を捻ってはいたが、テンダーもヒドゥンもその辺りは理解していた。

「開墾がし辛い地域ですよね。だから直通路はあっても馬車頼みで、中間に休息できる場所も限られているでしょうし……」
「そう。だが近年の技術の進歩で、工事機材が入る余地も出てきた。それに元々のあの森林の価値も、帝国の一部として確固とした位置を築いている今としてはむしろ弊害の方が多い」
「価値?」
「天然の壁ですか」

 ファン医師の言葉に伯は「そうだ」と短く答えた。

「かつてこの辺りは各地から身を守る必要があった。だがもう今はそういう時代ではない。無論壁として使うための手段自体はこれからも残しておく。が、時代の進歩は目覚ましい。いつまでも支線に頼るだけでは駄目だろう。実際君等も交通の面の苦労があったからこそ我々のこの地には来なかったのだろう?」

 それを言われれば彼等は苦笑するしかない。

「昔から直通の道は北東も北西もそれぞれ持っている。緊急の場合には馬を飛ばし、果てたら替えて、ということで帝都からの使者が数日で来ることができた」
「しかしそれなら、鉄道よりは道路の開発の方が早いのでは? 近年、馬車ではなく燃料で進む自動車も次第に増えてきていますし」
「無論並行して開発を進めていくつもりだ。そしてそれは、帝都に対しての牽制にもなるしな」

 なるほど、とファン医師は頷いた。
 どういうことだろう、とテンダーとタンダは首を傾げる。

「あのな、帝都へ行きたい、というのがこっちの望みなら帝都からも来たい、という奴等の欲望も果たしやすくなるだろ?」

 ヒドゥンはさらっと告げた。

「帝都の方からもこっちに来たいって人材が居るんじゃないですか?」

 伯は頷いた。

「北西はまた別の意図があって直通路は作らない様だ。ただ向こうには資源がある。これから寄ってくる企業を見越しているからこそ自身では何もしないのだろう。だがこちらにはそれはない」
「調査はなされたのですか?」
「ああ。全く無い訳ではないのだが、向こうの資源とは質が違う」
「質?」
「向こうにあるのは燃料の素となるものだ。工業用の資源も無い訳ではないのだが、向こう程の量は無いし、開発することでのマイナス面が多い。だが一方で、向こうに無いものがある」
「無いもの」
「森林は山地に広がる。凍土にならない辺りでは良い水があり――場所によっては湯が噴き出る」
「温泉ですか!」

 テンダーは目を見開いた。

「君は行ったことが?」
「友人の住む南西に行く途中で立ち寄った保養所で……」
「医療的価値も高いですな」
「そう。だから人を動かす場合は道もだが、やはり鉄道の方が良い。長距離馬車も自動車も庶民には手の届かないものだ。実際のところ、気温はともかく雪は少ない。拓くことは容易ではないが、拓いてしまえば支線よりも交通量は上がるだろう」

 壮大だな、とテンダーは思った。
 だがそのためには。

「だからできるだけ帝都の教育や技術が必要ということですか? 開発に参加できるだけの」
「そう。あとは、考え方の違う人員を連れてきたい、ということも。ああ君の甥と姪をその先鋒に使おうとは思っていないよ。まずあの子達には健やかに育って欲しいものだ。……可哀想に、こちらの子供達より痩せ細ってしまって……」
「確かにこちらの子供達は元気だし、肌もつやつやしていますね」
「俺も思いましたよ。のびのびやってる。……正直、ここで充分と思っているんではないですか?」
「いや、それでも型にはまりきらない子というものは居るんだ」

 ふっと伯は遠い目をした。
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