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193 ポーレの結婚式③母親達、そして宴
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金のお鞍に銀の鈴、無蓋馬車が動くたびにしゃんしゃんと音が。
青いポプラの並木道をゆったりと進んでいく。
なおこの無蓋馬車は、ヘリテージュが自分の結婚式の際に使ったものを是非に! と持ち出し。
花とコインの入ったひねり紙はエンジュが用意した。
ちなみにひねり紙も凝っていることに、外側がおめでたいとばかりの明るい薄紅だの山吹色だの色紙なのだが、コインが入っている内側にはちゃんと「友」や「画報」、「123」やテンダー嬢の工房の広告が印刷されているという。
拾うのは大概子供だが、開いた途端訳のわからない子供達が母親に渡すのが狙いである。
構わないか、とエンジュはポーレに訊ねたら。
「いやもうご存分に」
と剛毅な答えを返してきたので、派手に、そして派手を生かしてこの会場である「123」大ホールまでの道をゆっくりと進んで行くこととなったのだ。
到着するとそこには既に新郎新婦の関係者だの、そこから紹介された人々だの、二人の立ち位置を考えると通常ではあり得ない人数が集まっていた。
要は、先日の発表会の打ち上げに、進路側の関係者をも加えたらそうなってしまったのだが。
新郎側にしても関係者は多い。
当人自身の逓信省の上司だの同僚だのもそうだが、単純に学生時代の友人というのもある。
そしてまた、新郎の母である女史の関係者。
おそらくその場で一番緊張していたのは女史と共に参加していたフィリアだろう。
彼女は新年会や、先日の発表会の打ち上げですら出席者の顔ぶれに臆していたのだ。
女史がついていなかったらその辺りの椅子に座り込んで動けなかったかもしれない。
確かに彼女は貴族の館で働いていたので、身分が違う人々を知らない訳ではない。
だがポーレが女史の息子と結婚するとなると話は別だ。
彼女は同等に扱われることとなる。
例えば今この時、フィリアが着ていたのは、テンダー作のドレスだ。
だがフィリアにとってはこの様なドレスは主人側が着るものであって自分とは無縁なものだと思っていた。
なので正直、今でも落ち着かない。
もっともフィリアは気付いているのかどうかだが、テンダー作の彼女のドレスはかなり一般的なそれに近いのだ。コルセット無用、という部分をのぞけば。
フィリアや女史くらいの歳の場合、さすがに新しい意匠をそのまま着るにはハードルが高い。
だがかと言って、今までフィリアが見てきた様なコルセットのドレスを彼女が着るのは――無理なのだ。
「そうなのよね」
女史もやはりこの時のためのドレスを作る時にぼやいていたものだった。
「私達成り上がりは若い頃から締め付けていないから、昔憧れがあったドレスを着たくても体型的に無理があるのよ」
だからこそ似せつつゆったりとしたテンダーのそれはありがたい、というのが女史の言だった。
「若い子はそのまま新しい意匠に飛び込んでいけるけれど、ねえ」
そう、女史は女史で、フィリアと衣装合わせするのが非常に楽しかったらしい。
「こんな仕事していると、ファン以外の女性には敬遠されちゃってねえ……」
ごくごく普通にお茶ができる、同年代の友達の様な義家族ができたことに女史自身かなり喜んでいたのだ。
フィリアは当初勿体無い、と思っていたが、同居してみると「なるほどこれはテンダー様と何処か似たタイプだ」と世話焼きつつの同居になかなかやりがいを見いだしている様だった。
何だかんだいってフィリアは誰かの世話を焼くのが大好きなのだ。
そんな二人を見て子供達は安心して任地に行けるというものだった。
歓談やら挨拶やら知らない同士の自己紹介やら、お祝いとは社交の場でもある。
キリューテリャと共に辺境伯の姫も挨拶しに来た時には、さすがに新郎のエイザンも驚いた。
何せ南東に行ってからは辺境伯との付き合いは逓信省としても大切だ。
――とはいえ、この時点では姫の視線はポーレの衣装に釘付けだったのだが。
「この飾りが素敵すぎ……」
「手芸にご興味は?」
「私の乳姉妹が上手いんだけど! 私はどうしてもそういうのが……」
また一方でヘリテージュの夫である技官のリッテカド伯爵もまた逓信省の新技術に興味を持って話しかけたり。
まあそんな風に、皆あれこれと会話の中でそれぞれの思惑だの興味を持ちつつも、「123」の料理を楽しんだり。
合間には劇団から紹介された楽団と歌手のそれに合わせて踊ったりなど。
そんな風にして、時間はあっという間に過ぎていくのだった。
青いポプラの並木道をゆったりと進んでいく。
なおこの無蓋馬車は、ヘリテージュが自分の結婚式の際に使ったものを是非に! と持ち出し。
花とコインの入ったひねり紙はエンジュが用意した。
ちなみにひねり紙も凝っていることに、外側がおめでたいとばかりの明るい薄紅だの山吹色だの色紙なのだが、コインが入っている内側にはちゃんと「友」や「画報」、「123」やテンダー嬢の工房の広告が印刷されているという。
拾うのは大概子供だが、開いた途端訳のわからない子供達が母親に渡すのが狙いである。
構わないか、とエンジュはポーレに訊ねたら。
「いやもうご存分に」
と剛毅な答えを返してきたので、派手に、そして派手を生かしてこの会場である「123」大ホールまでの道をゆっくりと進んで行くこととなったのだ。
到着するとそこには既に新郎新婦の関係者だの、そこから紹介された人々だの、二人の立ち位置を考えると通常ではあり得ない人数が集まっていた。
要は、先日の発表会の打ち上げに、進路側の関係者をも加えたらそうなってしまったのだが。
新郎側にしても関係者は多い。
当人自身の逓信省の上司だの同僚だのもそうだが、単純に学生時代の友人というのもある。
そしてまた、新郎の母である女史の関係者。
おそらくその場で一番緊張していたのは女史と共に参加していたフィリアだろう。
彼女は新年会や、先日の発表会の打ち上げですら出席者の顔ぶれに臆していたのだ。
女史がついていなかったらその辺りの椅子に座り込んで動けなかったかもしれない。
確かに彼女は貴族の館で働いていたので、身分が違う人々を知らない訳ではない。
だがポーレが女史の息子と結婚するとなると話は別だ。
彼女は同等に扱われることとなる。
例えば今この時、フィリアが着ていたのは、テンダー作のドレスだ。
だがフィリアにとってはこの様なドレスは主人側が着るものであって自分とは無縁なものだと思っていた。
なので正直、今でも落ち着かない。
もっともフィリアは気付いているのかどうかだが、テンダー作の彼女のドレスはかなり一般的なそれに近いのだ。コルセット無用、という部分をのぞけば。
フィリアや女史くらいの歳の場合、さすがに新しい意匠をそのまま着るにはハードルが高い。
だがかと言って、今までフィリアが見てきた様なコルセットのドレスを彼女が着るのは――無理なのだ。
「そうなのよね」
女史もやはりこの時のためのドレスを作る時にぼやいていたものだった。
「私達成り上がりは若い頃から締め付けていないから、昔憧れがあったドレスを着たくても体型的に無理があるのよ」
だからこそ似せつつゆったりとしたテンダーのそれはありがたい、というのが女史の言だった。
「若い子はそのまま新しい意匠に飛び込んでいけるけれど、ねえ」
そう、女史は女史で、フィリアと衣装合わせするのが非常に楽しかったらしい。
「こんな仕事していると、ファン以外の女性には敬遠されちゃってねえ……」
ごくごく普通にお茶ができる、同年代の友達の様な義家族ができたことに女史自身かなり喜んでいたのだ。
フィリアは当初勿体無い、と思っていたが、同居してみると「なるほどこれはテンダー様と何処か似たタイプだ」と世話焼きつつの同居になかなかやりがいを見いだしている様だった。
何だかんだいってフィリアは誰かの世話を焼くのが大好きなのだ。
そんな二人を見て子供達は安心して任地に行けるというものだった。
歓談やら挨拶やら知らない同士の自己紹介やら、お祝いとは社交の場でもある。
キリューテリャと共に辺境伯の姫も挨拶しに来た時には、さすがに新郎のエイザンも驚いた。
何せ南東に行ってからは辺境伯との付き合いは逓信省としても大切だ。
――とはいえ、この時点では姫の視線はポーレの衣装に釘付けだったのだが。
「この飾りが素敵すぎ……」
「手芸にご興味は?」
「私の乳姉妹が上手いんだけど! 私はどうしてもそういうのが……」
また一方でヘリテージュの夫である技官のリッテカド伯爵もまた逓信省の新技術に興味を持って話しかけたり。
まあそんな風に、皆あれこれと会話の中でそれぞれの思惑だの興味を持ちつつも、「123」の料理を楽しんだり。
合間には劇団から紹介された楽団と歌手のそれに合わせて踊ったりなど。
そんな風にして、時間はあっという間に過ぎていくのだった。
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