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第二章。
Roi's point of view...1
しおりを挟むはじめて神子に会ったのは、薬で眠らされて天井から垂れる鎖に繋がれていたときだった。
俺にとっては、5人目の神子だ。
あいつらの姿は、この世界の何よりも抜きん出た容姿をしている。
けれど、この神子はそれらを霞ませてしまうほどに、恐ろしいほどに美しい生き物に見えた。
でも、結局、お前だってあいつらと同じなんだろう?
自分の欲望に忠実で、贅沢三昧を好む召喚者達。
面白おかしく暮らして、誰もこの世界の事なんて考えちゃくれない。
だから司祭の愚鈍で欲に爛れた提案を飲んだ。
思い通りに動かないなら、どんな手段を用いても従わせるように躾ければいい。
それが痛みであれ、快楽であれ、どうでもいい。
だが、神子は、肝心な魔法を使えない役立たずだった。
美しいだけのただの人だ。
希望なんてはなから持ち合わせていない。
絶望は何度も味わわされてきた、
使い物にならないなら、甚振って憂さを晴らしてしまえ。
その思いに囚われて、随分とひどい仕打ちをした。
神子は、他の召喚者達と違った。
自らが課せられた制限を解き放った。
この世界を、イルネージュを救うと、断言した。
あれ程の恥辱を受けたのにも関わらず、だ。
信用に値するのか?また絶望に落とされるのか?
翳りが微塵もない澄んだ菫色の美しい瞳を信じてみても…。
神子の提案で、サールジオにあるサールジオ神殿へ向かうことになった。
俺に神官の真似事をさせるとは、概念に囚われない思考だ。
魔力供給とのたまってアキラを抱くのは、俺に与えられた特権だと思っている。
美しく淫らで蠱惑的なアキラと交わるたびに、心底溺れてしまう。
神子を娶る国王の気持ちを少しだけ理解してしまう。
美しく突拍子もない、どこか規格外のアキラは、国王だって欲しがる。
執拗に弄くり倒して、焦らして乱して、涙しながら果てるアキラの痴態は、もう誰にも見せたくはない。
俺の魔法を興味深そうに瞳を輝かせながら眺める姿も、人のことは言えないが口が悪くて不遜に笑う表情も、屈託な振る舞う自由奔放さも…。
俺はどうかしてしまったのか。
忌々しい国王となんら遜色ないじゃないか。
抱き潰して意識を飛ばしたアキラの身体を、隅々まで清める。
その間も欲望のままに、何度もアキラの身体を貪った。
薄っすらとひらいた綺麗な唇も、何度も何度も味わった。
舌をからませ、唾液を啜り、きつく抱きしめながら欲を胎内に迸らせる。
こんな行為が何度目かなんて覚えちゃいない。
いい加減身体を拭いて服を着せてやらないと、砂漠の夜は恐ろしく冷える。
アキラが風邪でもひいてしまったら可哀相だ。
身なりを整えて、布団の中に大事に仕舞い込んで抱きしめながら眠りについた………
アキラはその美しい容貌に相反してガサツだ。
その割に生活態度はしっかりとしている。
俺より早く起床していることもある。
熱のこもる布団の中がゴソゴソと蠢いて、ひんやりとした空気がふっと入り込んでいる。
アキラが起きたのだろうか。
「知ってるか…僕はチョロいんだぞ…」
一体なんの話をしている…?
唇に少し冷えた指が触れた。
しばらく沈黙したまま動く気配はない。
アキラは何をしているんだろう。
と、温かい吐息が唇にかかり、下唇と上唇を吸いつかれた。
何度も貪った、綺麗でやわい可愛い唇が、稚拙に合さった。
人の寝ている間に何をして…、と、自分のことを棚上げしてしまうところだった。
アキラが自分から求めるのははじめてだ。
いや…これは…求められているのか?
何だ、混乱してきたぞ。
とりあえず、もう少しだけ…寝たふりをしよう。
「僕は…、ロイが好きなのか?」
アキラが俺を?
でもアキラは、同性にどうこうされるのも望んではいないと言っていた。
ましてや、俺なんかのことを…?
「まさかな…」
アキラの唇に反応をしてしまった俺の心とイチモツは、たった二言で天に登り地へ叩きつけられた。
余計なことを考えて寝たふりをして、起きるタイミングをすっかり逃した俺が馬鹿だった。
絶好のチャンスを逃してしまった…。
絶好のチャンス、って何だ。
駄目だ、相当混乱しているようだ。
アキラに起きる気配はない。
朝はまだ早いだろう、俺ももう少し温もりに包まれていよう。
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