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第二章 ダンジョン都市ティリアン

第二話 女じゃねぇか…

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 この魔道具は身に着ける人によって変わり方も異なるので、どんな風になるのかドキドキわくわくしながらネックレスを着けた。
 しかし、何か変わったような感覚はなかった。

「……ん?……え!?」

 声を出してみると、声が完全に別人になっていた。しかもこれは女性の声のような気がする。
 俺は慌てて店内にある鏡で自分の顔を映し出した。すると……

「お、女じゃねぇか……」

 子供らしいところが見え隠れするような美しい女性の顔になっていた。
 更に、髪の毛も肩に届くぐらいの長さになっており、髪の色も黒から白銀に、眼も黒から金に変わっている。変わっていないのは輪郭だけだ。

(うーん……口調どうするか……)

 この顔で男っぽい口調だと違和感しかない。ただ、女性っぽい口調と言われてもよく分からない。

「まあ、人と話すことが会ったら丁寧な口調で話せばいいかな?」

 そう思いながら俺はフードを取ると店の外に出た。

「ん~これからどうするかな……」

 店内にあった時計では午後三時二十分を指していた。
 正直言って今はやることがない。迷宮は明日行くつもりだし、ほしい魔道具も買った。

「……じゃあティリアンを散歩してみようかな?」

 歩いていれば思わぬ発見があるかもしれない。
 それに、ここ最近は戦ってばかりだったのでたまにはこうのんびりした方がいいだろう。
 そう思いながら俺は早速散歩を始めた。

「んー面白そうなものはないかな~……お」

 まず目についたのは面白そうなもの…ではなく美味しそうなものだ。
 目の前の屋台で売られていたのはフルーツと生クリーム(のように見えるやつ)を三角形のパン二つで挟んだフルーツサンドだ。入っているフルーツはイチゴ(のように見えるやつ)、ミカン(のように見えるやつ)、キウイ(のように見えるやつ)の三つだ。
 お値段は八百セルと少々お高い。まあ、金の使い道は特にないので問題はない。
 俺は一つ買うと早速食べてみた。

「……美味しい」

 女性っぽい言葉遣い(?)を意識して「美味ぇ」ではなく、「美味しい」と言ってみた。ただ、どうしてもこの言い方には違和感を持ってしまう。
 その為、人前ではあまり話さないようにしようと思った。



「は~美味しかった」

 俺はフルーツサンドを完食した。
 そして、また食べたいと俺は思ったので、追加で十個買って〈アイテムボックス〉に入れた。

「じゃ、他の所にも行くか」

 俺はこのまま日が暮れるまで散歩を楽しんだ。
 十字路の噴水の前にあるベンチで一息つきながら辺りをぼんやりと眺めたり、ボーっとしながら歩いてうっかり路地裏に入ってしまい、俺が女性の顔であることから、そこにいたチンピラにいつもとは違う理由で絡まれて全員を教育半殺しにしたり、しつこいナンパ男を跪かせてみたりと、平穏な散歩(?)をすることが出来た。

 そして、夕食は散歩をしている時に見つけた魚料理の店で風魚ウインドフィッシュの刺身と米を食べた。刺身はとろサーモンのような味で、醤油がないのが残念だが、それでも美味しかった。
 醤油ってたしか大豆を加工して作ると聞いたことがある。ただ、それ以外のことは全く知らないし、そもそも料理が苦手だからたもし詳しい作り方を知っていたとしても作ることは出来ないだろう。
 まあ、それは次の勇者に頼むとしよう。





 夕食を食べ終わった俺は千セルを払うと宿へ向かうことにした。宿も、散歩をしている時によさそうな所を見つけてある。

「よし、ここだな」

 俺が目をつけておいたのは風月亭という宿だ。値段は一泊朝食付きで二万三千セルだ。
 かなり高いが、ここは多くの人が集まる都市なので、それに合わせて値段を上げてより利益を出しているのだろう。まあ、警備もしっかりしているし、外装も毎日掃除していると思わせるくらいきれいなので特に問題はなさそうだ。
 俺は泊まる為に中に入った。

「泊まりに来ました」

 俺はそう言うと〈アイテムボックス〉から取り出した二万三千セルを入り口にいた宿の従業員に渡した。

「かしこまりました。三階の三〇六号室をお使いください」

 俺は礼を言うと、その部屋へと向かった。



「ん……思ったより広いな」

 小窓の横にあるベッド。その横にはソファーがあり、その前には机が置いてある。これにシャワールームもあるのであの値段でもまあ高いとは思うが文句はない。

「じゃ、シャワーを浴びてから寝るとしますか」

 そう言うと俺はローブと靴を脱ぎ、ネックレス型の変装用魔道具も取り外した。すると、一瞬で顔も声も元に戻った。

「はぁ~元に戻った……」

 俺は元に戻ったことに安堵しつつ、シャワーを浴びた。そして、その後は直ぐにベッドに寝転がった。

「そろそろ寝ようかな……」

 眼をこすりながらそう言うと俺は意識を手放した。
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