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ヒロインよ、王太子ルートを選べ!~本編~
すれ違う二人の気持ち ※王太子視点
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王宮の自室に帰る前に、アラン達とよく集まる円卓の部屋に向かう。最近はマティアスがこの部屋に入り浸っていて、王宮の所有する書物を読んだり研究したりするのに使っている。
何となく自室で一人になるのが嫌だったからか、扉を開けてマティアスがいるのを見つけてホッとした。
「レオ、お帰り。鉱山への旅はどうだった?」
「最悪」
「最悪か。でも、コレットとは会えたんだろう?」
マティアスはコレットのことを好いていたはずだが、最近はそんなことは表に出さない。俺が牽制したのもあるし、功績を上げて将来重要ポストに就きたいという気持ちの方が勝っているようだ。
「……コレットがあのヴォルタースとかいうヤツと、部屋で喋ってた」
「は? 着いたの夜だろ? そんな時間に男を部屋に入れたのか?」
「コレットがそんなことするわけないだろ。俺と間違えて扉を開けたらしい。でもモヤモヤする」
コレットがヴォルタースを自ら部屋に招くなど、絶対にない。そんな不誠実な子じゃないのはよく知っている。
俺がいない間にヴォルタースがコレットの首に手をやってたのは、殺してやろうと思ったぐらい腹が立った。俺のコレットに何度も触りやがって。でも俺が手を出すことをコレットは嫌がるから、何とか我慢した。
ネックレスの事は、百歩譲って許す。あれは俺が選んだものじゃないし、王家のしきたりに沿ってプレゼントしただけのものだから。
俺のモヤモヤは、あの時にコレットが持っていた鉢植えだ。ムーンライトフラワーだ。
ムーンライトフラワーは夏至になると花開く。その花を一緒に見た者は結ばれるという伝説がある。その伝説を、俺はコレットと一緒に叶えたくて、コレットにプレゼントしたんだ。
コレットがあの鉢植えをわざわざ持って行ったこと。そして、部屋の隅にでも置いておけば良い鉢を、わざわざ手に持っていたこと。
コレットはヴォルタースのことを何とも思っていないそぶりをしているが、実はヴォルタースと一緒にムーンライトフラワーの花を見ようとしたんじゃないか? あんな時間に部屋にヴォルタースが来たのは偶然だとしても、ヴォルタースとの視察に鉢を持っていったのはそのためじゃないのか?
夏至が近くて花が咲くかもしれないと、コレットは知っていた。俺があの時部屋にいかなければ、二人で花が咲くのを見た可能性だってあるのだから。
「……結局俺はコレットの気持ちを無視して、強引に突き合わせてただけかもしれない」
マティアスに昨日今日の話をかいつまんで喋りながら、ついつい弱音を吐いてしまった。コレットが俺の気持ちを分かってくれて、俺のキスだって受け入れてくれた。それに舞い上がって喜んでいたけど、結局それは、俺の一方的な気持ちの押し付けに過ぎなかったのかもしれない。
「潮時なんじゃないの?」
マティアスが言う。潮時? どういうことだ?
「正直、コレットは律儀だし責任感も強いから頑張ってきたんだろうけど、レオがコレットのことを思うほど、コレットはレオのことを思っていないと思うよ。幼馴染だからよく知っているけど、元々はエリオットのことを好きだったわけだし」
「おい、ハッキリ言うな。コレットの外聞が悪くなるだろ。二度と口に出すな」
俺だって、コレットの気持ちが俺についてきていないことくらい分かってる。でもマティアスの話を聞くとまるで、ついてきていないどころか、俺の方に気持ちが全く向いていないみたいじゃないか。
「宰相や男爵が必死になってコレットのことを婚約者から降ろそうとしているから、変な噂を立てられたりするんだろ。このまま続けてもコレットにとっては辛いだけだ。コレットを解放してあげれば解決する」
「おいマティアス。それ本気で言ってるのか? コレットとの婚約を解消しろって聞こえるが」
「……そうだよ」
待てよ、お前いつからそんなこと考えてたんだよ。俺は九年間もコレットを縛っていただけだったのか? ああ、泣きたい。
何となく自室で一人になるのが嫌だったからか、扉を開けてマティアスがいるのを見つけてホッとした。
「レオ、お帰り。鉱山への旅はどうだった?」
「最悪」
「最悪か。でも、コレットとは会えたんだろう?」
マティアスはコレットのことを好いていたはずだが、最近はそんなことは表に出さない。俺が牽制したのもあるし、功績を上げて将来重要ポストに就きたいという気持ちの方が勝っているようだ。
「……コレットがあのヴォルタースとかいうヤツと、部屋で喋ってた」
「は? 着いたの夜だろ? そんな時間に男を部屋に入れたのか?」
「コレットがそんなことするわけないだろ。俺と間違えて扉を開けたらしい。でもモヤモヤする」
コレットがヴォルタースを自ら部屋に招くなど、絶対にない。そんな不誠実な子じゃないのはよく知っている。
俺がいない間にヴォルタースがコレットの首に手をやってたのは、殺してやろうと思ったぐらい腹が立った。俺のコレットに何度も触りやがって。でも俺が手を出すことをコレットは嫌がるから、何とか我慢した。
ネックレスの事は、百歩譲って許す。あれは俺が選んだものじゃないし、王家のしきたりに沿ってプレゼントしただけのものだから。
俺のモヤモヤは、あの時にコレットが持っていた鉢植えだ。ムーンライトフラワーだ。
ムーンライトフラワーは夏至になると花開く。その花を一緒に見た者は結ばれるという伝説がある。その伝説を、俺はコレットと一緒に叶えたくて、コレットにプレゼントしたんだ。
コレットがあの鉢植えをわざわざ持って行ったこと。そして、部屋の隅にでも置いておけば良い鉢を、わざわざ手に持っていたこと。
コレットはヴォルタースのことを何とも思っていないそぶりをしているが、実はヴォルタースと一緒にムーンライトフラワーの花を見ようとしたんじゃないか? あんな時間に部屋にヴォルタースが来たのは偶然だとしても、ヴォルタースとの視察に鉢を持っていったのはそのためじゃないのか?
夏至が近くて花が咲くかもしれないと、コレットは知っていた。俺があの時部屋にいかなければ、二人で花が咲くのを見た可能性だってあるのだから。
「……結局俺はコレットの気持ちを無視して、強引に突き合わせてただけかもしれない」
マティアスに昨日今日の話をかいつまんで喋りながら、ついつい弱音を吐いてしまった。コレットが俺の気持ちを分かってくれて、俺のキスだって受け入れてくれた。それに舞い上がって喜んでいたけど、結局それは、俺の一方的な気持ちの押し付けに過ぎなかったのかもしれない。
「潮時なんじゃないの?」
マティアスが言う。潮時? どういうことだ?
「正直、コレットは律儀だし責任感も強いから頑張ってきたんだろうけど、レオがコレットのことを思うほど、コレットはレオのことを思っていないと思うよ。幼馴染だからよく知っているけど、元々はエリオットのことを好きだったわけだし」
「おい、ハッキリ言うな。コレットの外聞が悪くなるだろ。二度と口に出すな」
俺だって、コレットの気持ちが俺についてきていないことくらい分かってる。でもマティアスの話を聞くとまるで、ついてきていないどころか、俺の方に気持ちが全く向いていないみたいじゃないか。
「宰相や男爵が必死になってコレットのことを婚約者から降ろそうとしているから、変な噂を立てられたりするんだろ。このまま続けてもコレットにとっては辛いだけだ。コレットを解放してあげれば解決する」
「おいマティアス。それ本気で言ってるのか? コレットとの婚約を解消しろって聞こえるが」
「……そうだよ」
待てよ、お前いつからそんなこと考えてたんだよ。俺は九年間もコレットを縛っていただけだったのか? ああ、泣きたい。
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