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「ヴァン様、これはどう思います?」
「鎖骨は綺麗に出ているけど、ロールカラーの幅が微妙だね」
「やっぱりそう思いますよね。あと1㎝幅が狭い方がいいですかね」
「2㎝でもいいんじゃないかな?」
先日ルビーからウェディングドレスに使用する生地やレースの在庫が少なく、次の船を待つと結婚式に間に合わないと相談を受けた。そこで考えたのがレンタルドレスだ。もちろんこの世界ではレンタルという概念はない。
しかし、今回注文をしてきているのはオーロラ商会の従業員達なのだ。シェドに付いてきてくれた従業員に、少しでも幸せになる手助けがしたかった。
本店の2階に向うと臨時の作業場になっているサロンに入る。そうすると目に飛び込んできたのは、美しいウェディングドレスを着たマネキンが並んでいたのだ。
鋭い眼差しでチェックをするルビーの真剣な横顔に、前世で見た“プ●フェッショナル仕事の流儀”の主題歌が流れる。
「ルビー、貴方凄いわ。どれも本当に素敵よ」
「お嬢様、いつからそこに?」
「少し前に付いたけど感動して思わず見惚れてしまったわ」
「まあ、それは嬉しい言葉です」
「それに、もう7着も完成しているのね?」
「ええ、それでも後3着は欲しいところですがこの7着はほぼ完成です」
「ウェディングドレスって、見ているだけで興奮しちゃうわよね~」
シェドの男は骨格がいい、ヴァンも恐らく180㎝以上はあるだろう。見た目も潤しいヴァンも私と同じでドレスを見てため息をついていた。
「わよね・・・・?」
「えっと、ルビーこちらはヴァンよ。ヴァンは騎士をしているけど可愛いものやファッションに目がないのよ。ヴァンのしゃべり方も気にしないであげて」
「ヴァンよ。よろしく~」
ヴァンがルビーの手を握ると、興奮したようにぶんぶんと握った手を振る。
「世界を股にかけるルビー店長の作品をここまで近くで見れるなんて感動しかないわ!」
「あ、ありがとうございます」
***
「このウェディングドレスにはトレーンまで届くようなロングベールが似合うと思うの」
「私もそう思っていました!」
最初は戸惑っていたルビーも話しているうちに仲間意識が芽生えたようだ。ふたりのファッションへの並々ならぬ情熱は、初めて会ったとは思えないほど息がぴったりだ。
「ノースリーブばっかりだけど、肌を見せたくないという一定数の女性もいると思うわ。ハイネックのウェディングドレスも必要じゃないかしら」
「それもそうですね。シェドの気候を考えると袖の部分はレースにすると見た目も美しいし、通気性もいいですよね」
「それいいと思うわ!」
「あと、お人形さんみたいに可愛らしいドレスも1着ぐらいは欲しいですね」
「レイシャルはどう思う?」
「う~ん。私だったら・・・ドレスの裾が長いウェディングドレスが着てみたいわ。それでベールもうんと長くして子供達がベールの端を持ってくれるの」
「裾が長い・・・面白いデザインですね」
「ふっふっふ、気にしないで。ちょっと言ってみただけだから」
「あら、もうこんな時間でしたね。では、早速レイシャル様に試着していただかなくては」
今日の試合の後使いの者から、ウェディングドレスがほぼ完成したので試着して欲しいと言われたのだ。前世でも着たことがないウェディングドレスだ。私は喜んで本店を訪れたのだ。
「ルビー、ありがとう」
「ヴァン様はそこでお待ちください。ではレイシャル様、試着室はこちらです」
7着のドレスのどれもが素晴らしく、どれを着るか迷ったがAラインのドレスを選んだ。サテンの光沢が美しいドレスで、肩ひもがないタイプだ。
ルビーの手伝いでようやく着替えたレイシャルが部屋に戻ると、ヴァンはレイシャルを見て何も言わず見つめていた。
「言葉が出ないほど変かしら?」
「レイシャル・・・凄く綺麗だ」
「そんなに驚いた顔をしないでよ。照れくさいじゃない」
レイシャルも初め着るウェディングドレスに興奮気味で鏡の前に立つ。
(ヴァンの言う通り素晴らしいドレスだわ・・・)
「ふっふっふ。私はお茶の用意をしてくるのでしばらく楽しんでくださいね」
ルビーが部屋から出た後も鏡を見つめていたレイシャルだったが、ヴァンはレイシャルの瞳から流れた涙に気づいたようだ。
「ど、どうしたの?」
「ごめんなさい・・・両親にウェディングドレスを着ている姿を見せたかったなと思って」
「そうよね。レイシャルのご両親は亡くなっているのよね・・・レイシャルのご両親はきっと、世界一美しい娘を見て喜んだでしょうね」
「ちょ!ウ、ウエン王子どこへ」
突然廊下からルビーの慌てた声が聞こえた。
「レイシャル!ここにいるのか」
ノックもせずに入って来たのはウエンだった。
「鎖骨は綺麗に出ているけど、ロールカラーの幅が微妙だね」
「やっぱりそう思いますよね。あと1㎝幅が狭い方がいいですかね」
「2㎝でもいいんじゃないかな?」
先日ルビーからウェディングドレスに使用する生地やレースの在庫が少なく、次の船を待つと結婚式に間に合わないと相談を受けた。そこで考えたのがレンタルドレスだ。もちろんこの世界ではレンタルという概念はない。
しかし、今回注文をしてきているのはオーロラ商会の従業員達なのだ。シェドに付いてきてくれた従業員に、少しでも幸せになる手助けがしたかった。
本店の2階に向うと臨時の作業場になっているサロンに入る。そうすると目に飛び込んできたのは、美しいウェディングドレスを着たマネキンが並んでいたのだ。
鋭い眼差しでチェックをするルビーの真剣な横顔に、前世で見た“プ●フェッショナル仕事の流儀”の主題歌が流れる。
「ルビー、貴方凄いわ。どれも本当に素敵よ」
「お嬢様、いつからそこに?」
「少し前に付いたけど感動して思わず見惚れてしまったわ」
「まあ、それは嬉しい言葉です」
「それに、もう7着も完成しているのね?」
「ええ、それでも後3着は欲しいところですがこの7着はほぼ完成です」
「ウェディングドレスって、見ているだけで興奮しちゃうわよね~」
シェドの男は骨格がいい、ヴァンも恐らく180㎝以上はあるだろう。見た目も潤しいヴァンも私と同じでドレスを見てため息をついていた。
「わよね・・・・?」
「えっと、ルビーこちらはヴァンよ。ヴァンは騎士をしているけど可愛いものやファッションに目がないのよ。ヴァンのしゃべり方も気にしないであげて」
「ヴァンよ。よろしく~」
ヴァンがルビーの手を握ると、興奮したようにぶんぶんと握った手を振る。
「世界を股にかけるルビー店長の作品をここまで近くで見れるなんて感動しかないわ!」
「あ、ありがとうございます」
***
「このウェディングドレスにはトレーンまで届くようなロングベールが似合うと思うの」
「私もそう思っていました!」
最初は戸惑っていたルビーも話しているうちに仲間意識が芽生えたようだ。ふたりのファッションへの並々ならぬ情熱は、初めて会ったとは思えないほど息がぴったりだ。
「ノースリーブばっかりだけど、肌を見せたくないという一定数の女性もいると思うわ。ハイネックのウェディングドレスも必要じゃないかしら」
「それもそうですね。シェドの気候を考えると袖の部分はレースにすると見た目も美しいし、通気性もいいですよね」
「それいいと思うわ!」
「あと、お人形さんみたいに可愛らしいドレスも1着ぐらいは欲しいですね」
「レイシャルはどう思う?」
「う~ん。私だったら・・・ドレスの裾が長いウェディングドレスが着てみたいわ。それでベールもうんと長くして子供達がベールの端を持ってくれるの」
「裾が長い・・・面白いデザインですね」
「ふっふっふ、気にしないで。ちょっと言ってみただけだから」
「あら、もうこんな時間でしたね。では、早速レイシャル様に試着していただかなくては」
今日の試合の後使いの者から、ウェディングドレスがほぼ完成したので試着して欲しいと言われたのだ。前世でも着たことがないウェディングドレスだ。私は喜んで本店を訪れたのだ。
「ルビー、ありがとう」
「ヴァン様はそこでお待ちください。ではレイシャル様、試着室はこちらです」
7着のドレスのどれもが素晴らしく、どれを着るか迷ったがAラインのドレスを選んだ。サテンの光沢が美しいドレスで、肩ひもがないタイプだ。
ルビーの手伝いでようやく着替えたレイシャルが部屋に戻ると、ヴァンはレイシャルを見て何も言わず見つめていた。
「言葉が出ないほど変かしら?」
「レイシャル・・・凄く綺麗だ」
「そんなに驚いた顔をしないでよ。照れくさいじゃない」
レイシャルも初め着るウェディングドレスに興奮気味で鏡の前に立つ。
(ヴァンの言う通り素晴らしいドレスだわ・・・)
「ふっふっふ。私はお茶の用意をしてくるのでしばらく楽しんでくださいね」
ルビーが部屋から出た後も鏡を見つめていたレイシャルだったが、ヴァンはレイシャルの瞳から流れた涙に気づいたようだ。
「ど、どうしたの?」
「ごめんなさい・・・両親にウェディングドレスを着ている姿を見せたかったなと思って」
「そうよね。レイシャルのご両親は亡くなっているのよね・・・レイシャルのご両親はきっと、世界一美しい娘を見て喜んだでしょうね」
「ちょ!ウ、ウエン王子どこへ」
突然廊下からルビーの慌てた声が聞こえた。
「レイシャル!ここにいるのか」
ノックもせずに入って来たのはウエンだった。
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