上 下
24 / 38

トレーニングの成果

しおりを挟む
「ライン様はお話したことがありますか?」
「いや、ないな」
「そうですか」

 ほっと胸を撫で下ろす。よかった、彼女の声が直接届いていなくて。きっとライン様にさっきみたいなことを言うことはないだろうけど、嫌な態度を取るかもしれないから、なるべくなら会ってほしくない。って思うのも私の我儘かなぁ。

「ところで、今日はダイエットをしないのか?」
「やります。その前にこれを」

 私は引き出しからラッピングされた箱を取り出した。困惑顔でライン様が受け取る。

「これは?」

「私が作ったダイエット中でも食べられるお菓子です。カロリーが低いものを選んで作ったので物足りないかもしれませんが、もしよかったらあとで召し上がってください」

「食べる。ありがとう」

 食い気味に食べるって言ってくれた。嬉しい!

 料理本に焼き菓子の作り方が載っていたから、それを参考にして作ってみたんだよね。調理場の隅を貸してくださった方々お世話になりました。

 最近甘い物を控えているみたいだから、少しでも気分転換になったらいいな。

「よし、運動をしよう。昨日より増やしていい」
「素晴らしいです。でも、無理はなさらないでくださいね」
「分かっている。貴方が無理そうだと判断したらそこで中断してもいいから」

 相変わらず瞳はこの世の闇だけど、顔色も良くなってきたから効果が出ていると思う。あと半月もすれば見た目で分かるくらい変わるんじゃないかな。

 すでに何回か取り組んでいるので、私の見本が無くても出来るようになった。同じメニューずっとやったら、私が痩せちゃうところだった。

 ということで、一昨日からは私は監督としてライン様の運動をチェックしながら、自分の魔法の勉強をさせてもらっている。

 ライン様に聞いたところ、ライン様も生活魔法なら少し出来るらしい。ちなみに、魔力は人並なので普段は全く使わないそう。ということで、今のところの目標は二人でお空の散歩をすること。

 二人で黙々とそれぞれのメニューをこなす。魔法の方も少しずつ慣れてきて、今ではハンカチをふわふわ浮かせるようになった。そろそろ自分自身に試してみてもいいかもしれない。

「ふんッ」

 両手のひらをお腹に向けて、気合の声を上げる。顔にも力が入っているのが分かる。今の私、間抜けじゃないよね? ライン様の前でおブスになっていたらどうしよう。

 ちらりとライン様を見遣る。目が合った。ちょっと笑われた。

「笑わないでください」
「すまない。微笑ましいと思って」
「それならいいです」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約者の義妹に結婚を大反対されています

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:50,837pt お気に入り:4,904

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,661pt お気に入り:4,892

【完結】あなたにすべて差し上げます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,753pt お気に入り:5,702

異世界バーテンダー。冒険者が副業で、バーテンダーが本業ですので、お間違いなく。

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7,570pt お気に入り:75

婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,926pt お気に入り:4,192

初恋の王女殿下が帰って来たからと、離婚を告げられました。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:24,416pt お気に入り:6,940

処理中です...