貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

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第四章

対策

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 絶望の街から飛んで十五分、リルは木に寄りかかって息を整えていた。

「絶対怒ってたよね……」

 家出してから五年以上、手紙を出さなくなって数か月。こちらの情報がノーバー家にいくようなことはしていないが、王都でもリルを探す張り紙を見ることもなく、てっきりリルの存在は忘れ去られていたかと思っていた。

「兄様が近くにいないか確認しておこう」

 魔法玉を取り出し、そこに右目を投影させる。それを飛ばし、付近を探し回った。街の中で三番隊を見つけたので、そこの先頭へ行くとカラットが無表情で歩いていた。

「そうそう、兄様はいつもこんな表情だった。あとお父様、も……お父様だ!?」

 カラットの横にはリルの父であるザラ・ノーバーがいた。なるほど、今回三番隊が遠征したのは、どうやら彼が関係しているようだ。

「もしかして、ノーバー家ってわりと高い地位にいるのかな。全然知らなかった」

 メイドの他に、勉強はもちろん魔法学を教えてくれる教師がいたので恵まれている方ではあると思っていたが、これは想定以上だ。

「魔法学ってみんなが学ぶものじゃないもんね。それを十歳に教えてくれていたのを考えればそうか」

 リルが腕組みをして唸る。

「お父様が遠征されているから護衛でついてきたってこと? 軍を動かす程の家だとは……流されて王宮魔法士にならなくて本当によかった」

 もしバレて連れ戻されでもしたら、自由気ままな生活が終了してしまう。それは絶対に避けなければいけない。

「今回のはカラット兄様の見間違いってことで、しばらく王都には寄り付かないようにしよう」

 幸い、ちょうどルッツたちと会わずともコミュニケーションが取れる魔法具を開発したところだ。王都に行く用事も無い。リルはチョコとともに少し南へ行き、森や山を散策して回った。

「兄様とお父様があそこにいるってことは、逆に考えればあそこ以外は大丈夫ってことだ。じゃあ、とりあえず慌てることはないね」

 ルッツたちから連絡もないので、まだ山を訪れていないのだろう。リルはのんびりと旅初日を楽しんだ。

 せっかくなので、その場で野営することにした。山に帰らず、知らない場所で一人、作戦を練りたいというのもある。

「まずは、兄様に百パーセントバレたと考えていい。問題は当主であるお父様に報告しているかどうか」

 カラットは普段王宮にいて、父親と会うこともない。今回の遠征で報告をしなければリルの生活が脅かされることはない。万が一報告していたとしてもあの父親なら放っておくかもしれないが、問題が起きた時は最悪な状況を考えて行動しておいた方が無難だ。

「明日帰宅したら山全体に結界を張って、ルッツ様にはテレビ電話で口留めしておこう。明日以降まだ電話の存在に気付いていない場合は、下手に動かない方がいい。王宮に電話を持ち込むなんて危険だし」


 慌てて自ら墓穴を掘っては今後の生活が危ぶまれる。あそこの山は気候が良く、狂暴な魔物もいない。知り合った人たちもみんな気の良い人だ。あそこを手放したくはない。
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