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「柏木諒です。本日から後期研修医としてこの心臓外科で働かせていただきます。よろしくお願いします。」

「柏木君は東帝大主席卒の優秀な子だ。もう2年の研修期間も終えているからね。バリバリ頼むよ。」

荒木賢治先生、心臓外科として国内だけでなく海外でも名の通った有名人。
数々の難関手術を成功させていて、日本中から荒木先生の元へ患者が集まる。

「じゃあ、担当してもらう患者のとこ案内するから着いてきてくれ。」

「はい。」

そこから何人か患者を回った。
先生の担当する患者はかなりの数がいるが、俺が共に担当するのは数人だ。
カルテは頭に入れてきたから話して打ち解けるのは割と簡単だった。

自分の外観が多少いいことは自覚している。少し笑顔を見せたらほとんどの人はいい気分になる。医者になったのだって勉強ができたからなった。特に志とかそういうものはない。心臓外科に来たのも、この病院で花形の科だからだ。

学生時代からずっと周りがバカにしか見えなかった。周りの同級生がテスト前に焦っているのを見て、そんなに焦るなら勉強すればいいのにと冷めた目で見ていた。大学の合格発表だって周りが一喜一憂しているのを見て違和感があった。だって受かる自信しかなかったから。

国家試験だってそうだ。確実に受かると思っていたし、受かって嬉しいとも思わなかった。

だからようやく、レベルの高いところで学べる。荒木先生の元で学ぶのは楽しそうだ。

患者に寄り添うとか、そう言うのには興味がない。患者の病気を治すのが俺の仕事で、メンタルのケアは他の科の仕事。
全部やってたら医者の身がもたない。

「じゃあ、最後は特別室だから着いてきて。」

特別室、か。この病院の10階の1フロアはすべて特別室だ。国の要人や著名人も多く通院するからこそ用意されてるフロア。そこに入るにはカードキーが必要で、担当医以外はこれを持つことは許されない。看護師等は事前に担当医から申請のあったもののみが申請されて時間のみ滞在が許される。面会も審査が通らなければできないという徹底ぶりだ。
まぁ、それに値するだけの値段もするんだけどな。普通の個室の何倍もの値段がする特別室はそんじゃそこらのやつが使えるようなもんじゃないし、使いたいと言って使えるものでもないからな。

特別室の3室は診察室で、個室でゆったりしたまま診察も受けられるようになっている。勝ち組は待つことすらしなくていいってわけだ。

この病院に来て3年目だが、入るのはもちろん初めてだ。
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