【R18】BL短編集

戌依 寝子 (旧いろあす)

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【完結】冒険の書【ファンタジー/触手】

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「今日で、今日で終わらせる」
 100年以上続いている魔族との戦いに決着を着けるべく、俺は魔王城の門前に立っていた。
 数々の騎士・勇者と呼ばれる者たちが戦い、そして散っていったこの場所で、今なお更新され続けるお伽噺を終わらせる。
 意気込みに応えるように鼻息を漏らす愛馬はここで置いていかなければならないが、轡は綱がない。彼女は賢い子だ。きっと待っていてくれる。
 それに、万が一のことがあったら…。
 そこまで考えて無意識に沸いた弱気を振り払うように首を振った。
 この城の雰囲気がそうさせるのだろう。
 年中暗雲が立ち込め、薄暗く、大地の恵みに見放された場所。
 門番の類はいないようだ。錆びついた鉄門扉にグッと力を籠めると「ギィイ」と軋んだ音を立てて門が開いた。
 ここまで、城に近づくに連れて苛烈になる敵との攻防に、それ以上を覚悟していたがあまりに拍子抜けだ。不気味ですらある。
 息を詰めて、いよいよその敷地内へ足を踏み入れる。
 1歩入ったからと言って急に景色が変わる訳でもない。相変わらず暗い空に、不毛の道が続いていた。
「罠…か…?」
 警戒して道を進むが敵の気配はない。
 呆気なくたどり着いた大仰な装飾がされた扉にも、仕掛けが施されているような様子はなかった。
 込み上げる薄ら寒さを振り払うように扉に手をかける。しかしそれは力を入れる前に、まるで来客を歓迎するように音もなく内側に開いた。
「ようこそ」
 扉の前には家令のような装いの男が立って、慇懃に腰を折っていた。
「っ!」
 想定外の光景に、行動が一瞬遅れる。
 飛びずさって剣を構える俺に、男は白けたような視線を向けて背を向けた。
 殺気どころか警戒の欠片も無い、不意打ちを受けても制圧できるとでも言いたいのだろうか。
「魔王様がお待ちです」
 どういうことだ。
 歓迎されている、という訳ではなさそうだが…。
 …斬り掛かるか?
 しかし、歩き始めた男の背中は無防備に見えて隙がなく、遠ざかった事でタイミングを逃してしまった。
 ここは大人しくついて行こう。
 最終的にそう決めて、剣を納めた。
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