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ローダンセの花

41.グロキニシア*

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 焦った。まさかあんなこと聞かれるなんて。
 タクシーに乗っている間、ずっと主税の質問がぐるぐる回っていた。家について支払いをしようとしたタクシーは「お連れ様に貰ってますよ」と言って帰って行った。
 酔ってるくせに、まだそんな気遣いができたのか。
 部屋に帰ってシャワーを浴びる。酔いはすっかり冷めていた。
 濡れた髪を乾かしている間もあのとろんとした目が頭から離れない。
 あれは、あの回答で正解だったのか?
 貰った花束を活けながら考える。オキナグサ。ちゃんとメモった。
 そもそも俺の気持ちはどうなんだ。
 セックスしたくてマッチングパーティーに参加して、なんだかんだあったけどアイツは色んな意味でセックスとかどうでもいい、一緒に居ると楽しい相手っていう存在。
 …ホントに?
 ぞく、と背筋が痺れた。
 いやいや、ないでしょ。あの童貞とどうこうなるなんて。
 でも、最近の主税は童貞臭さが薄れてて、ネックになってるのはあの長い前髪とダサい眼鏡くらい。
 そうやって考えると、仕事とか、映画とか、気遣いとか、尊敬できるような人柄で、ゲームでも引っ張ってくれるような存在で。
 あれ、俺、主税に何一つ勝ってないじゃん。それって、そもそも揶揄えるような相手じゃなくない?
 最近じゃ逆にドキドキさせられて、目が見れなくて。
 どんどん息が上がって、鼓動が高鳴る。
 違う。この気持ちは、違う。
 …ホントに?
 自分の中で熱っぽい欲が沸いてくる。
 ベッドに入って身体を縮こませた。駄目だ。きっと欲求不満なんだ。最近主税と遊ぶのが楽しすぎてそういうのはご無沙汰だったから。
 湧いて来た欲に抗えずにティッシュを手繰り寄せて掛け布団をずらす。
 部屋着のズボンを下げて、少し硬くなった性器を手のひらで包み込む。
 呼吸がどんどん荒くなってきて、それに合わせるみたいに手の中が熱くなった。
 それをゆっくり上下に扱いてやると、甘い電流のような痺れが腰から背筋に駆け上がってくる。
「ん…、く…」
 思考の隅にとろんと溶けた目の主税がチラつく。
『どういう存在?』
 わからない、でも、この熱はアイツに向いてる。否定したいのに、手が止まらない。
 どんどん高ぶって、上下に動く手はどんどん速度を増していく、
『ちょっとの差なんだよ』
 甘く聞こえた声が頭の中でリフレインする
 高ぶった熱はもうどうしようもないくらい熱くて、甘くて、蕩けそうな快感になって腹を侵す。
「あ、…っ、んっ」
 長い前髪の向こうの、ちょっと鋭い目に捉えられる。
『薫くんのことは、何でも知りたいよ?』
 腰がかくんと跳ねた。
「んっ、ちか、ら…っ」
 びゅくっ、びゅっ、と、手のひらに熱い迸りを感じて、一瞬硬直した身体が一拍置いてくたりと弛緩する。
 快感の名残で身体がひくんと跳ねた。その反動で力の抜けた全身がベッドに沈み込む。
 荒い息を整えながら鼓動が落ち着くのを待っていると、ふと冷静になる瞬間が訪れて血の気が引いた。
 こんなのは違う。友達って言ったばかりじゃないか。
 きっと欲求不満なんだ。
 早急になんとかしないと。
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