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第三話「旧友、クレス」
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「っ……頭痛ぇ……」
あれ……なんだっけ……。あのパーティ抜けて、確か――――
「あぁああああああ……!」
ベッドの上で勢いよく飛び跳ねる。
顔を触る。手を確かめる。窓に映る自分の顔を見つめる。
息子のサイズもついでに確認。
「うっ……」
頭の中でガンガンと鳴り響く何かに、思わず頭を抱えてしゃがみ込む。
「あったまぁ……痛ぇ……」
そうか……昨日はそのまま帰ってきて酒飲んで……。
ダンジョンから帰還後、若返った勢いそのままで歓楽街に行ったはいいものの……。
歓楽街の受付の坊主に、
「――――子どもの入店はお控えください」
と言われ。
エルフ族の姉ちゃんに、
「――――大きくなったら相手してあげるからねっ」
と胸で押し返され。
獣人の子には、
「――――小さいと食べちゃうぞー、がおー」
とか言われて追い出されて……。(お前も小さかっただろうが……。)
とにかく、男として出し切れないものがあった。そのせいでムシャクシャしていた俺は自宅でしっぽり酒でもと……。
「んで、そのあとは確か……そのままヤケ酒に手を伸ばしてワインを一杯飲んだらフラフラになって……」
気付いたら――――――――――朝。
歓楽街の女性たちには相手にされず、酒には耐性がなくなった。大剣も持てない……。
「若返ったら色々やりたい事があったのによ、何もここまで若くしなくても……」
ガラスに映る自分の姿は、まさに駆け出しの新人。冒険者の卵。
これからの未来が明るい、黒髪の青年。
「まぁ、おっさんよりかはマシだな……」
スカーレット……お前が目指した高み……エアリエルの頂上……。
俺はもう一度だけ……、このチャンスを得て登ってもいいのか……?
ゴーレム討伐の大編成、その時に裏ギルドの連中にやられた仲間……。遺体も見つからず行方不明になった双剣使い……。
女に背中を預けるなんざ性に合わねぇと思っていた。だが、あいつだけは、あいつだけはどんな時でも信頼できた。
あいつらに邪魔さえされなければ、ゴーレムだって討伐できたかもしれねぇ。
「……ちっ」
朝から嫌な気分だぜ……。
気分も悪いし頭も痛ぇ。こんな日は酒場でマリアを撫で回したいところだが……。
昨日のモンスターのこともあるし、ギルド長に会いに行かねえとだな。
「うーん……、体の調子は良さそうだな」
腕を伸ばしたり屈伸したり。
おっさんとは違って軽いし動きやすい。突然、寝起きで飛び跳ねても腰を痛めない。
「若いって素晴らしいな……」
強いて言うなら、ダンジョンに大剣を置いて来てしまったのは悔やまれるが、持てないなら仕方がないか……。
家に飾ってるだけだった剣でも持って行こう。
「っ……頭がいてぇ……」
ポーションで治せるか……?
「バッグの中に入ってたような気がするんだが」
冒険者の一人暮らしの部屋は狭い。
玄関から入ってすぐにテーブルと椅子、ベッド、他は道具や装備が転がっているだけ。
自分が歩く場所以外、木製の床はその姿が見えない。
適当に倒して手に入れた素材もその辺に散らばっている。
「毒消し、火傷、治癒……酒に効くポーションってないのか……」
そんな都合のいいもの。あるわけがないか……。
そもそも酒で頭痛なんて生まれて一度もなかったのに……。この年で二日酔いだなんて――――――
「って、まだ子どもだろ」
……………………。
つまらないツッコミに時間が止まる。
若返ったせいでテンションが微妙にズレている気がする。
落ち着いて、大人の余裕ってやつを持っておかないと……。
ということで――――――
「乗り気じゃねぇが、とりあえずギルドに向かうか……」
あれ……なんだっけ……。あのパーティ抜けて、確か――――
「あぁああああああ……!」
ベッドの上で勢いよく飛び跳ねる。
顔を触る。手を確かめる。窓に映る自分の顔を見つめる。
息子のサイズもついでに確認。
「うっ……」
頭の中でガンガンと鳴り響く何かに、思わず頭を抱えてしゃがみ込む。
「あったまぁ……痛ぇ……」
そうか……昨日はそのまま帰ってきて酒飲んで……。
ダンジョンから帰還後、若返った勢いそのままで歓楽街に行ったはいいものの……。
歓楽街の受付の坊主に、
「――――子どもの入店はお控えください」
と言われ。
エルフ族の姉ちゃんに、
「――――大きくなったら相手してあげるからねっ」
と胸で押し返され。
獣人の子には、
「――――小さいと食べちゃうぞー、がおー」
とか言われて追い出されて……。(お前も小さかっただろうが……。)
とにかく、男として出し切れないものがあった。そのせいでムシャクシャしていた俺は自宅でしっぽり酒でもと……。
「んで、そのあとは確か……そのままヤケ酒に手を伸ばしてワインを一杯飲んだらフラフラになって……」
気付いたら――――――――――朝。
歓楽街の女性たちには相手にされず、酒には耐性がなくなった。大剣も持てない……。
「若返ったら色々やりたい事があったのによ、何もここまで若くしなくても……」
ガラスに映る自分の姿は、まさに駆け出しの新人。冒険者の卵。
これからの未来が明るい、黒髪の青年。
「まぁ、おっさんよりかはマシだな……」
スカーレット……お前が目指した高み……エアリエルの頂上……。
俺はもう一度だけ……、このチャンスを得て登ってもいいのか……?
ゴーレム討伐の大編成、その時に裏ギルドの連中にやられた仲間……。遺体も見つからず行方不明になった双剣使い……。
女に背中を預けるなんざ性に合わねぇと思っていた。だが、あいつだけは、あいつだけはどんな時でも信頼できた。
あいつらに邪魔さえされなければ、ゴーレムだって討伐できたかもしれねぇ。
「……ちっ」
朝から嫌な気分だぜ……。
気分も悪いし頭も痛ぇ。こんな日は酒場でマリアを撫で回したいところだが……。
昨日のモンスターのこともあるし、ギルド長に会いに行かねえとだな。
「うーん……、体の調子は良さそうだな」
腕を伸ばしたり屈伸したり。
おっさんとは違って軽いし動きやすい。突然、寝起きで飛び跳ねても腰を痛めない。
「若いって素晴らしいな……」
強いて言うなら、ダンジョンに大剣を置いて来てしまったのは悔やまれるが、持てないなら仕方がないか……。
家に飾ってるだけだった剣でも持って行こう。
「っ……頭がいてぇ……」
ポーションで治せるか……?
「バッグの中に入ってたような気がするんだが」
冒険者の一人暮らしの部屋は狭い。
玄関から入ってすぐにテーブルと椅子、ベッド、他は道具や装備が転がっているだけ。
自分が歩く場所以外、木製の床はその姿が見えない。
適当に倒して手に入れた素材もその辺に散らばっている。
「毒消し、火傷、治癒……酒に効くポーションってないのか……」
そんな都合のいいもの。あるわけがないか……。
そもそも酒で頭痛なんて生まれて一度もなかったのに……。この年で二日酔いだなんて――――――
「って、まだ子どもだろ」
……………………。
つまらないツッコミに時間が止まる。
若返ったせいでテンションが微妙にズレている気がする。
落ち着いて、大人の余裕ってやつを持っておかないと……。
ということで――――――
「乗り気じゃねぇが、とりあえずギルドに向かうか……」
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