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第三話「旧友、クレス」

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 今となっては片手で数える程しか居ない旧友の一人、元仲間でもあるギルド長、エルフ族のクレスに会いに行く。

 ギルドの場所は家からも近く、すぐに辿り着いた。のだが――――――――

「――――俺の話を聞いてくれ!」
「はいはい、子どもは初級クエストねー」

 ギルドの受付嬢に軽くあしらわれていた。

 獣人でありつつ、綺麗で可愛らしい顔つきと茶髪のポニーテール。そこから覗かせているイヌ耳が冒険者たちから絶大な人気を誇っているアイシャ。

 イヌ耳をぴくぴくと動かすアイシャは愛想笑いを浮かべている。

 正装の白いブラウスに赤いリボンを首元に垂らすギルドの制服。スカートではなくズボンを女性従業員に履かせているのはあいつの趣味でしかない。

 暑い時にはリボンもつけずにボタンが一つや二つ外れている時もある。その時の男冒険者たちの目はモンスターたちと変わらない。

 胸の大きな受付嬢を狙って話しかけ、胸元を覗き込むエロ冒険者となる。

 だがしかし――――

「あっちぃ……。朝から疲れるわー……」

 リボンを緩めてブラウスのボタンが一つ、二つと外れていく。

 肌色がちらちらと、はためく布の向こう側に見え隠れするのだが、彼女の胸はというと――――すとんとまっすぐ、垂直、壁、崖? つまり、板である。

 彼女の胸元は絶壁であり、体と服装だけを見れば男にしか見えない。

 そんな色気のない体には目もくれず。

「だから! 俺はビオリスだって言ってるだろ⁉」
「いつも来るおじさんもビオリスって名前だったけどさー、同じ名前の子どもがギルド長に会いたいとか言われてもねー。ビオリスなんか君よりもすごい大きいよ? でっかい大剣も背負って野蛮人みたいだったし、からかってくるから苦手だったし、加齢臭もたまにあったし」
「……」

 ひ、ひどい言われようだな……。

 しかし、ここで無駄に言い争っても仕方がない。

 俺は咳ばらいをして、心を少し落ち着かせて彼女へと話しかける。

「なんで分かってくれないんだ……。とりあえず、ギルド長のクレスにビオリスが尋ねてきたって言ってくれればいい。頼むよ」
「ギルド長は新人には会わないってばー。お引き取りくださーい」

 ギルドの受付嬢に断られ続けてもう五回目……。

 さすがに周りの目も痛くなってきたが、クレスに会って話をしなければならない。

 新しいモンスターのことも、俺がそのモンスターに若返らされたことも……。

「――――はぁ……これだから若い子は……」
「――――駆け出しの若造がギルド長に会いたいだなんてバカな奴……」
「――――ああいう奴って空気読めないんだよな」

 周りから聞こえてくる言葉。

 朝のこの時間帯は七階層や八階層といった上層部に行く中級冒険者が多い。

 そんな彼らの注目の的になっているのは、あまり好ましくない……。俺の平穏な生活が失われてしまう……。

 既に平穏な暮らしは昨日で失われているが――――――
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