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第五話「ギルドでの再登録」
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「新人冒険者は全員Fランクからのスタートだが?」
「お、俺の今まで積み上げてきたギルド貢献やクエストの成果はどうなる⁉」
「いや、新規の登録扱いだからな。実績もクソもないぞ」
さも当然のようなクレスの口ぶり。
「いやいや……」
俺はクレスの言葉をかき消すように手を振って否定した。
「待ってくれ……。じゃぁ、俺が今、ダンジョンに登っていい階層は?」
「一階層だな」
「………………本気で言ってるのか?」
「ああ、本気だぞ?」
俺が冒険者を始めた時にはなかったギルド。
クレスとパーティを組んでいたこともあり、ギルド指定のランクは最初からAだった。
ギルド要請の依頼もこなしてSランクまで到達したのに……。
そんな俺がFからだと……。
「なぁクレス、冒険者ランクくらいどうにかならないのか?」
「無理だな」
真顔でまっすぐ拒否された。
「別にお前ならランクくらい簡単に上げられるだろう?」
「色々と面倒くさいんだよ……」
手続きやらクエストやら……。ギルドが作られてからというもの、昔と違ってダンジョンへの入り口は管理されて自由ではなくなった。
冒険者の証である首飾りか腕輪を付けてないと入ることすら許されない。
五階層にある安全な町も、ギルド員が配備されているせいで、六階層に上がれるのは一部のみ……。
「はぁ……面倒くせぇ……」
「まぁ、そう言うな。あとの手続きは私が適当に済ませてやるから、酒場でも行って英気を養え」
「行っても酒が飲めないんだよ……」
「なら南西の歓楽街は?」
「子どもはお断りだとよ……」
「あのビオリスが酒も飲めず歓楽街からも……フフッ……」
小バカにしたようなクレスの笑いに、眉間に力が入る。
「なぁクレス、殴ってもいいか?」
「フフッ……いや、すまないすまない……クフッ……」
クレスは謝りつつ、手で隠している口からは笑いが漏れている。
「あー、くそっ……。お前のところに来たのが間違いだった……。あとは適当にやってくれ。俺は帰る……」
こんな所に居てられるか……。
俺は立ち上がってクレスの部屋をあとにする。
「なぁビオリス、シズクはどうするんだ?」
「どうするもこうするも、お前のギルドの従業員だろ」
「置いていかれても困るんだが」
「持っていかれても困るだろ」
「……ふむ」
腕組みをして真剣な顔をして悩むクレス。だが、考えている内容は果てしなくどうでもいい事だろう……。
「まぁ、女性ならいいか。ではまたな、ビオリス」
「はいよ……」
俺が連れてきたのがもし男だったら、こいつは連れて帰らせたんだろうか……。
俺はギルドを出たあと、服だけ買いに行きまっすぐ家へと帰ることにした。
強制的にダメになった酒と性欲は食欲へと変換し、なんとか乗り切る。
「はぁ……食った食った……」
歯に挟まった肉や野菜が舌を使って除去できる。肩こりもない。体も軽い。
身体的な面で言えば最高だが――――――
「冒険者を一からか……」
二十年前の始めたころとは違って家もあるし、クエストの報酬で得た金も残っている。
狩っていたモンスターの素材も部屋の中に散らばっているから、新しい装備を揃えるには問題ないだろう。
「昔に比べればぬるいな……」
あの頃はウルフに囲まれて大ケガしたっけな……。
まぁ、戦闘をした経験はしっかり残っているし大丈夫だろう。
「服は合わないし買わなきゃな……それと装備か……あとはアイテムだけ補充して……」
そんなもんかな。
「ふあぁ……寝よう」
また明日……、町にでて…………。
それからしばらく経ったある日、冒険者の大剣がダンジョンで見つかり大騒ぎになっていた。
あまり使われることのない種類の武器だったため、持ち主がすぐに判明。
大剣の持ち主の名はもちろんビオリス・シュヴァルツ。
当たり前だが、ダンジョンから帰った彼を見た者は居ない。誰も、若返った青年がビオリスだと知らないのだから当然である。
そうして、ビオリス・シュヴァルツはエアリエルの町、ギルドから行方不明扱いとされるのだった――――――
だが、彼がそのことを知るのは、まだ少し先のお話である――――――
「お、俺の今まで積み上げてきたギルド貢献やクエストの成果はどうなる⁉」
「いや、新規の登録扱いだからな。実績もクソもないぞ」
さも当然のようなクレスの口ぶり。
「いやいや……」
俺はクレスの言葉をかき消すように手を振って否定した。
「待ってくれ……。じゃぁ、俺が今、ダンジョンに登っていい階層は?」
「一階層だな」
「………………本気で言ってるのか?」
「ああ、本気だぞ?」
俺が冒険者を始めた時にはなかったギルド。
クレスとパーティを組んでいたこともあり、ギルド指定のランクは最初からAだった。
ギルド要請の依頼もこなしてSランクまで到達したのに……。
そんな俺がFからだと……。
「なぁクレス、冒険者ランクくらいどうにかならないのか?」
「無理だな」
真顔でまっすぐ拒否された。
「別にお前ならランクくらい簡単に上げられるだろう?」
「色々と面倒くさいんだよ……」
手続きやらクエストやら……。ギルドが作られてからというもの、昔と違ってダンジョンへの入り口は管理されて自由ではなくなった。
冒険者の証である首飾りか腕輪を付けてないと入ることすら許されない。
五階層にある安全な町も、ギルド員が配備されているせいで、六階層に上がれるのは一部のみ……。
「はぁ……面倒くせぇ……」
「まぁ、そう言うな。あとの手続きは私が適当に済ませてやるから、酒場でも行って英気を養え」
「行っても酒が飲めないんだよ……」
「なら南西の歓楽街は?」
「子どもはお断りだとよ……」
「あのビオリスが酒も飲めず歓楽街からも……フフッ……」
小バカにしたようなクレスの笑いに、眉間に力が入る。
「なぁクレス、殴ってもいいか?」
「フフッ……いや、すまないすまない……クフッ……」
クレスは謝りつつ、手で隠している口からは笑いが漏れている。
「あー、くそっ……。お前のところに来たのが間違いだった……。あとは適当にやってくれ。俺は帰る……」
こんな所に居てられるか……。
俺は立ち上がってクレスの部屋をあとにする。
「なぁビオリス、シズクはどうするんだ?」
「どうするもこうするも、お前のギルドの従業員だろ」
「置いていかれても困るんだが」
「持っていかれても困るだろ」
「……ふむ」
腕組みをして真剣な顔をして悩むクレス。だが、考えている内容は果てしなくどうでもいい事だろう……。
「まぁ、女性ならいいか。ではまたな、ビオリス」
「はいよ……」
俺が連れてきたのがもし男だったら、こいつは連れて帰らせたんだろうか……。
俺はギルドを出たあと、服だけ買いに行きまっすぐ家へと帰ることにした。
強制的にダメになった酒と性欲は食欲へと変換し、なんとか乗り切る。
「はぁ……食った食った……」
歯に挟まった肉や野菜が舌を使って除去できる。肩こりもない。体も軽い。
身体的な面で言えば最高だが――――――
「冒険者を一からか……」
二十年前の始めたころとは違って家もあるし、クエストの報酬で得た金も残っている。
狩っていたモンスターの素材も部屋の中に散らばっているから、新しい装備を揃えるには問題ないだろう。
「昔に比べればぬるいな……」
あの頃はウルフに囲まれて大ケガしたっけな……。
まぁ、戦闘をした経験はしっかり残っているし大丈夫だろう。
「服は合わないし買わなきゃな……それと装備か……あとはアイテムだけ補充して……」
そんなもんかな。
「ふあぁ……寝よう」
また明日……、町にでて…………。
それからしばらく経ったある日、冒険者の大剣がダンジョンで見つかり大騒ぎになっていた。
あまり使われることのない種類の武器だったため、持ち主がすぐに判明。
大剣の持ち主の名はもちろんビオリス・シュヴァルツ。
当たり前だが、ダンジョンから帰った彼を見た者は居ない。誰も、若返った青年がビオリスだと知らないのだから当然である。
そうして、ビオリス・シュヴァルツはエアリエルの町、ギルドから行方不明扱いとされるのだった――――――
だが、彼がそのことを知るのは、まだ少し先のお話である――――――
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