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第六話「Fランククエスト」
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ギルドで登録を済ませてから三日後、服や装備のサイズ変更などなど……。買い物を終えてようやくダンジョンへ突入することができた。
「……」
一階層と二階層は洞窟のような空間が広がり、道中は二手に分かれていたりする。
一度ここで迷ってしまえば、不慣れな冒険者は遭難してしまう。
現在は灯りや看板があるのでそんなことにはならないだろうが、今でもここで行方不明になる奴だっている。
油断すれば、もう二度と町には帰れない。
「ふんふふーん♪」
「……」
若返った体がどんなものか、適当に一人で登ろうと思っていたんだが……。
俺の後ろを歩く髪を結んだポニーテールの獣人が一人……。
「――――わー、懐かしいなー。スライムとかウルフとか狩りまくって換金してたなぁ。腕が鈍ってないか心配だよー」
そう言いながら、頭の後ろで手を組み、散歩のようにのんびり歩くのは―――――――ギルド受付嬢のアイシャだった。
「なぁ、アイシャ……」
「ん、なにかな?」
ダンジョン用に身軽な装備に着替えたアイシャ。
胸元だけを隠しただけの赤い服――――いや、布と言っても過言ではない。
それは女性の胸のを隠すためだけの布……。だが、アイシャにとっては衣類の一つとなっているようだ。
加えて、動きやすそうな、かなり丈の短い赤色のパンツは、アイシャの太ももを隠す気はないらしい。
全体的に布面積が少なく、素早さを重視した服装なのは間違いないだろう。ついでに引き締まった体には、中々そそるものがある……。
だが、そもそも――――――――
「なんで俺のクエストにお前がついてくるんだ?」
後ろを歩いていたアイシャへと質問を投げかける。
俺の視界には絶壁のまな板が映った。
「そんな嫌そうな顔しないでよね。私だって嫌なんだからさー」
「ハッキリ嫌って言うのはどうかと思うぞ……」
「はいはい、気をつけますぅー」
アイシャの奴、自由すぎないか……。
「ってか、ギルドの受付嬢がダンジョンについてくるなんて聞いてないぞ」
「あれ、君は知らないの?」
「なにをだ?」
「あれだよ、君は新人だから、最初はギルドの誰かがついて行くことになってるんだよ。つまり、お守り役ってことだねー」
アイシャはウインクをしながらはにかんだ。
「頼んだ覚えはないぞ」
俺の言葉にイラついたのか。アイシャはむぅっと口を膨らませた。
「頼まれてなくてもやらなきゃいけないのー、ほんとは帰りたいけど、仕事だからねっ」
「帰っていいぞ」
「なっ……! だぁーかぁーらぁー!」
ドカドカと地面を踏みつけ、アイシャが近づいてくる。
至近距離、もう少しで肌が当たる手前でアイシャが立ち止まる。
「な、なんだ……?」
「新人さんにはかーなーらーずーっ! 誰かがついてこないといけないのー! 子どものクセに生意気だぞぉー!」
俺の頬に指を突き刺しながら言うアイシャ。
「へふに、いらふぁいんらが……」
指が食い込み過ぎているせいでまともに喋れない……。
「君が『要る』とか『要らない』とか、決められることじゃないの、分かった?」
今ので俺の言ったことが分かるのか……。
「まったくもー……」
言い終えたアイシャが後ろに下がっていく。
「というわけで、まずはスライムかウルフとの戦闘からだね」
「いや、そんなんじゃ足りないんだが……」
せめてウルフの上、ベアウルフくらいはやらないと俺の今の実力が分からない。
「もー、君も頑固だなー。そんなに言うなら私はなにもしないよ?」
「それで構わないさ」
むしろ、その方がありがたい。
「ふーん、あくまでも強気なんだねー。まっ、そういうの嫌いじゃないけどさー」
再び頭の後ろで手を組むアイシャ。
だが、突き出るような胸はない。
「はいはい……」
こんなところでゆっくりしている場合じゃないんだ。
いやまぁ、別に急ぐこともないんだが……、やはり若返ったせいなのか。それとも、おかげと言うべきか。調子が良い分、動きたくて体がうずうずしている。
足は自然と前に進んで行く。
「アイシャ、クエストの内容は?」
「ん? スライムかウルフの討伐だけど?」
「その次はなんだ? 最低でもBランクのクエストは教えて欲しいんだが」
「……」
背後からの足音が消えた。
振り返るとアイシャがその場に立ち尽くし、その表情は少し不機嫌そうに見える。
「……」
一階層と二階層は洞窟のような空間が広がり、道中は二手に分かれていたりする。
一度ここで迷ってしまえば、不慣れな冒険者は遭難してしまう。
現在は灯りや看板があるのでそんなことにはならないだろうが、今でもここで行方不明になる奴だっている。
油断すれば、もう二度と町には帰れない。
「ふんふふーん♪」
「……」
若返った体がどんなものか、適当に一人で登ろうと思っていたんだが……。
俺の後ろを歩く髪を結んだポニーテールの獣人が一人……。
「――――わー、懐かしいなー。スライムとかウルフとか狩りまくって換金してたなぁ。腕が鈍ってないか心配だよー」
そう言いながら、頭の後ろで手を組み、散歩のようにのんびり歩くのは―――――――ギルド受付嬢のアイシャだった。
「なぁ、アイシャ……」
「ん、なにかな?」
ダンジョン用に身軽な装備に着替えたアイシャ。
胸元だけを隠しただけの赤い服――――いや、布と言っても過言ではない。
それは女性の胸のを隠すためだけの布……。だが、アイシャにとっては衣類の一つとなっているようだ。
加えて、動きやすそうな、かなり丈の短い赤色のパンツは、アイシャの太ももを隠す気はないらしい。
全体的に布面積が少なく、素早さを重視した服装なのは間違いないだろう。ついでに引き締まった体には、中々そそるものがある……。
だが、そもそも――――――――
「なんで俺のクエストにお前がついてくるんだ?」
後ろを歩いていたアイシャへと質問を投げかける。
俺の視界には絶壁のまな板が映った。
「そんな嫌そうな顔しないでよね。私だって嫌なんだからさー」
「ハッキリ嫌って言うのはどうかと思うぞ……」
「はいはい、気をつけますぅー」
アイシャの奴、自由すぎないか……。
「ってか、ギルドの受付嬢がダンジョンについてくるなんて聞いてないぞ」
「あれ、君は知らないの?」
「なにをだ?」
「あれだよ、君は新人だから、最初はギルドの誰かがついて行くことになってるんだよ。つまり、お守り役ってことだねー」
アイシャはウインクをしながらはにかんだ。
「頼んだ覚えはないぞ」
俺の言葉にイラついたのか。アイシャはむぅっと口を膨らませた。
「頼まれてなくてもやらなきゃいけないのー、ほんとは帰りたいけど、仕事だからねっ」
「帰っていいぞ」
「なっ……! だぁーかぁーらぁー!」
ドカドカと地面を踏みつけ、アイシャが近づいてくる。
至近距離、もう少しで肌が当たる手前でアイシャが立ち止まる。
「な、なんだ……?」
「新人さんにはかーなーらーずーっ! 誰かがついてこないといけないのー! 子どものクセに生意気だぞぉー!」
俺の頬に指を突き刺しながら言うアイシャ。
「へふに、いらふぁいんらが……」
指が食い込み過ぎているせいでまともに喋れない……。
「君が『要る』とか『要らない』とか、決められることじゃないの、分かった?」
今ので俺の言ったことが分かるのか……。
「まったくもー……」
言い終えたアイシャが後ろに下がっていく。
「というわけで、まずはスライムかウルフとの戦闘からだね」
「いや、そんなんじゃ足りないんだが……」
せめてウルフの上、ベアウルフくらいはやらないと俺の今の実力が分からない。
「もー、君も頑固だなー。そんなに言うなら私はなにもしないよ?」
「それで構わないさ」
むしろ、その方がありがたい。
「ふーん、あくまでも強気なんだねー。まっ、そういうの嫌いじゃないけどさー」
再び頭の後ろで手を組むアイシャ。
だが、突き出るような胸はない。
「はいはい……」
こんなところでゆっくりしている場合じゃないんだ。
いやまぁ、別に急ぐこともないんだが……、やはり若返ったせいなのか。それとも、おかげと言うべきか。調子が良い分、動きたくて体がうずうずしている。
足は自然と前に進んで行く。
「アイシャ、クエストの内容は?」
「ん? スライムかウルフの討伐だけど?」
「その次はなんだ? 最低でもBランクのクエストは教えて欲しいんだが」
「……」
背後からの足音が消えた。
振り返るとアイシャがその場に立ち尽くし、その表情は少し不機嫌そうに見える。
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