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第三章
エルの異変①
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〈父:フリッツィSide〉
アメリアに抱かれて入って来た、エルの様子がいつもと違った。
いつもなら、おやつを楽しみに目をキラキラさせながら元気に入ってくる。しかし今日は何処か寂しげで不安そうな顔をしている。
午前中までは確かに元気だったはずだ。こんな表現をするエルは一度も見たことが無い。
不安げにするエルを心配し、迎えに行くと、ぎゅうっとしがみついてきた。
その後もウィルフリードやバルドリック、ルイーザが話しかけるが、あまり喋らない。
バルドリックの言葉通り、おやつを食べれば元気になるだろうか?
フルーツムースをスプーンで掬い、エルに食べさせる。
口を開けて食べたかと思ったら、ペッと吐き出してしまったっ!!
エルが寝ている間に話していた、毒の混入を疑い緊張が走る。
「いなない…っ!!いなない…っ!!こりぇいなないっ!!うわぁぁぁ~~~んっ!!!!」
要らないと頻りに言いながら鳴き出すエルシーア。
「エル、エルっ!!どうしたんだいっ!?」
ハンカチで涙と汚れてしまった口周りを拭く。
「うわぁぁ~~ん…っ、ひっ、ひっ…」
しゃくりあげるエルの言葉を辛抱強く待つ。
「ばみぇー ない…」
「こえ… ばみぇー ないのぉ…。うわぁぁ~ん…」
カタカタカタカタ…
地震でもないのに突然サロンのテーブルの上にあるティーカップなどが揺れだす。
《なかせた…》
《えるをなかせた…》
《ゆるさない…ゆるせない…》
《やっちゃう?やっちゃえ…》
すると今度は窓も空いていないのに、風がカーテンを揺らす。気のせいだろうか、室内の温度が段々と下がっていると様な気がする。
だが、誰も動く事はできない。何かに押さえつけられているようだ…っ。
「落ち着け、精霊の子らよっ!!」
ガゥっ!!とシロガネ殿が吠えると、室内が元に戻る。
精霊?今の現象は全て精霊がやったと言うのか!?!?
「フリッツィ。先程、エルが何と言ったか考えろ」
先程のエルの言葉?
“ばみぇー”?バメイの事か?しかし、バメイじゃないとはどう言う事だ??
「どういう事だ…?」
私が思わず口に出して呟く。
「恐れながら、旦那様…」
すると、サロンの端に待機していたセバスが前に出てきて声をかけてくる。
「何だ?話せ」
「はっ。本日のおやつですが、バメイとは違う別の料理人が作ったのです。
バメイはその…、先の話し合いでおやつを作る時間がありませんでしたので…」
「なるほど。だから“バメイじゃない”か…。確かに今までエルシーアの口にするもの全てをバメイが準備していた。私達ではわからない味の違いに気がつき、吐き出したのか…」
「「「「エル…」」」」
家族全員が心配そうにエルを見つめる。
とりあえず、毒の心配は無さそうだ。
しかし、エルは味の違いに気がつくほど敏感…いや過敏になっていたのか。全く気が付かなかった…。
【エルシーアは本人が気がつかない内に、王都に対して過敏になっている。本人も気がついていないんだ、其方達が気がつかないのも無理は無い】
私が落ち込んでいると、頭の中にシロガネ殿の声が響く。私だけではない、妻達にも聞こえていると様だ。
「「「「そんな…」」」」
【ここは我とペルルに任せよ。其方達はその顔をどうにかしろ。其方達がそんな不安げな表現をしていると、エルが余計に不安がり落ち着かなくなる。
其方達はよく考えろ。エルシーアは確かにいつも元気で賢いかもしれぬ。だが、2歳にもならぬ幼子であることを忘れるな】
シロガネ殿の言葉に、私達全員が、はっ!!となる。
確かにそうだ…。エルシーアはまだ2歳にもなっていない。いつの間にその事を忘れていたんだ…?本当にどうしようもなく自分が情けない。
「シロガネ殿、申し訳ありません。そしてありがとうございます…」
【うむっ】
「エル、エルシーアよ、我とペルルと共に裏庭に行こう。精霊樹の実が熟れておる。一緒に食べようではないか」
シロガネ殿はそう言うと、妻の膝の上からピョンッと降り、その体長を大きくする。全長で3m程だろうか。その尻尾でエルの頬をくすぐり、気を引く。
「ひっく…ひっく…ちろぎゃね…??」
「うむ。シロガネだ。我の背に乗れ。裏庭に行くぞ」
「うん…」
エルが頷いたので、エルの腕の中にいたペルル殿を降ろし、シロガネ殿の背にソッと乗せる。その後にペルル殿は自分でピョンッとシロガネ殿の背に乗った。
「しっかり捕まっておれよ。では、裏庭にゆくぞっ!!」
そう言うと、エルとペルル殿を乗せたシロガネ殿は転移で裏庭に消えた。
アメリアに抱かれて入って来た、エルの様子がいつもと違った。
いつもなら、おやつを楽しみに目をキラキラさせながら元気に入ってくる。しかし今日は何処か寂しげで不安そうな顔をしている。
午前中までは確かに元気だったはずだ。こんな表現をするエルは一度も見たことが無い。
不安げにするエルを心配し、迎えに行くと、ぎゅうっとしがみついてきた。
その後もウィルフリードやバルドリック、ルイーザが話しかけるが、あまり喋らない。
バルドリックの言葉通り、おやつを食べれば元気になるだろうか?
フルーツムースをスプーンで掬い、エルに食べさせる。
口を開けて食べたかと思ったら、ペッと吐き出してしまったっ!!
エルが寝ている間に話していた、毒の混入を疑い緊張が走る。
「いなない…っ!!いなない…っ!!こりぇいなないっ!!うわぁぁぁ~~~んっ!!!!」
要らないと頻りに言いながら鳴き出すエルシーア。
「エル、エルっ!!どうしたんだいっ!?」
ハンカチで涙と汚れてしまった口周りを拭く。
「うわぁぁ~~ん…っ、ひっ、ひっ…」
しゃくりあげるエルの言葉を辛抱強く待つ。
「ばみぇー ない…」
「こえ… ばみぇー ないのぉ…。うわぁぁ~ん…」
カタカタカタカタ…
地震でもないのに突然サロンのテーブルの上にあるティーカップなどが揺れだす。
《なかせた…》
《えるをなかせた…》
《ゆるさない…ゆるせない…》
《やっちゃう?やっちゃえ…》
すると今度は窓も空いていないのに、風がカーテンを揺らす。気のせいだろうか、室内の温度が段々と下がっていると様な気がする。
だが、誰も動く事はできない。何かに押さえつけられているようだ…っ。
「落ち着け、精霊の子らよっ!!」
ガゥっ!!とシロガネ殿が吠えると、室内が元に戻る。
精霊?今の現象は全て精霊がやったと言うのか!?!?
「フリッツィ。先程、エルが何と言ったか考えろ」
先程のエルの言葉?
“ばみぇー”?バメイの事か?しかし、バメイじゃないとはどう言う事だ??
「どういう事だ…?」
私が思わず口に出して呟く。
「恐れながら、旦那様…」
すると、サロンの端に待機していたセバスが前に出てきて声をかけてくる。
「何だ?話せ」
「はっ。本日のおやつですが、バメイとは違う別の料理人が作ったのです。
バメイはその…、先の話し合いでおやつを作る時間がありませんでしたので…」
「なるほど。だから“バメイじゃない”か…。確かに今までエルシーアの口にするもの全てをバメイが準備していた。私達ではわからない味の違いに気がつき、吐き出したのか…」
「「「「エル…」」」」
家族全員が心配そうにエルを見つめる。
とりあえず、毒の心配は無さそうだ。
しかし、エルは味の違いに気がつくほど敏感…いや過敏になっていたのか。全く気が付かなかった…。
【エルシーアは本人が気がつかない内に、王都に対して過敏になっている。本人も気がついていないんだ、其方達が気がつかないのも無理は無い】
私が落ち込んでいると、頭の中にシロガネ殿の声が響く。私だけではない、妻達にも聞こえていると様だ。
「「「「そんな…」」」」
【ここは我とペルルに任せよ。其方達はその顔をどうにかしろ。其方達がそんな不安げな表現をしていると、エルが余計に不安がり落ち着かなくなる。
其方達はよく考えろ。エルシーアは確かにいつも元気で賢いかもしれぬ。だが、2歳にもならぬ幼子であることを忘れるな】
シロガネ殿の言葉に、私達全員が、はっ!!となる。
確かにそうだ…。エルシーアはまだ2歳にもなっていない。いつの間にその事を忘れていたんだ…?本当にどうしようもなく自分が情けない。
「シロガネ殿、申し訳ありません。そしてありがとうございます…」
【うむっ】
「エル、エルシーアよ、我とペルルと共に裏庭に行こう。精霊樹の実が熟れておる。一緒に食べようではないか」
シロガネ殿はそう言うと、妻の膝の上からピョンッと降り、その体長を大きくする。全長で3m程だろうか。その尻尾でエルの頬をくすぐり、気を引く。
「ひっく…ひっく…ちろぎゃね…??」
「うむ。シロガネだ。我の背に乗れ。裏庭に行くぞ」
「うん…」
エルが頷いたので、エルの腕の中にいたペルル殿を降ろし、シロガネ殿の背にソッと乗せる。その後にペルル殿は自分でピョンッとシロガネ殿の背に乗った。
「しっかり捕まっておれよ。では、裏庭にゆくぞっ!!」
そう言うと、エルとペルル殿を乗せたシロガネ殿は転移で裏庭に消えた。
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