転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉

文字の大きさ
133 / 166
第三章

夜更けの密談①

しおりを挟む
〈父:フリッツィSide〉



執務室から寝室に続く扉を静かに開け、音を立てないように中に入る。
寝室のベッドに掛けられている天蓋をそっと開け、すやすやと眠るエルを見つめ、目を細める。

「あなた、王宮に今から行かれるのですか?」

エルの隣で眠っていた筈の妻から声をかけられる。

「すまない。起こしてしまったか?」

「わたくしは大丈夫ですわ」

妻は寝ていた体を起こし、優しくエルの頭を撫でる。

「あなた、エルが一緒に眠れないのを寂しがっていたわ。なくべく早く帰ってきてくださいまし」

「あぁ。私もエルと一緒に眠れないのが寂しいからね。早く帰るとしよう」

妻に抱きつく様に眠るエルの頭を撫でる。
エルの頭を撫でながら、どう話を切り出し、早く帰れるかの算段を考える。

「今から王宮にゆくのか?」

エルの枕元にペルル殿と一緒に丸まって寝ていたシロガネ殿が、顔を起こし聞いてくる。

「はい。これから王宮に向かい、明後日のお披露目の儀式で、魔力属性やスキルを公開しないように話をするつもりです」

「そうか」

「シロガネ殿、私と共に陛下へ話をしてくださいますか?」

「うむ。全てはエルシーアを護るため。其方らの話に付き合おう」

「ありがとうございます。では、私が抱いて連れて行くということでよろしいですか?」

「構わん」

「では、失礼します」

シロガネ殿の許可をもらい、そっと体を抱き上げる。

「ペルル殿、どうかエルの護りをよろしくお願いします」

エルの枕元で、私とシロガネ殿の会話を聞いていたペルル殿に、エルの護りをお願いする。

〔エルの護りは任せておけ。それよりも、エルが起きる前に帰って来い〕

「お気づかい、ありがとうございます。では、よろしくお願いします。
ハリー、君は眠っていてくれ。直ぐ帰ってくるから」

ペルル殿に頭を下げ、妻に頬におやすみのキスを贈る。

「シロガネ殿、参りましょう」

「あなた、どうか気をつけて」

「行ってくる」

寝室の扉を出て、地下の転移陣へと向う。
地下までの道すがら、シロガネ殿といろんな話をする。

「陛下は私の話を無視する様な人柄ではありません。しかし、お恥ずかしいながら、この王国に住まう貴族は一枚岩ではないのです。
陛下が納得しても不満を表す貴族は居るでしょう。
そこで申し訳ないのですが、シロガネ殿の白虎としてのお名前とお力をお借りしたいのです」

「我の名前と力を貸すことは厭わん。しかし、この国と子を護るためと言うのに、納得できん愚かな人間がいるとはな」

「7歳のお披露目の儀式は、より優れた魔力、スキルを持つものを取り込むのに絶好の機会ですからね」

「ふむ。全く理解できんな」

「ふふっ、シロガネ殿にしてみればそうなんでしょうね。
さて、地下の転移陣へと着きました。この転移陣へを潜れば、陛下の執務室へと繋がります。
まずは私が陛下と話をしますので、シロガネ殿の良きタイミングで会話に混じってください」

「あい、わかった」

「では、転移します。
『王宮、陛下の執務室へと転移』」

私は転移陣へと魔力を流し、陛下の待つ執務室へとシロガネ殿と共に転移した。


しおりを挟む
感想 221

あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

おせっかい転生幼女の異世界すろーらいふ!

はなッぱち
ファンタジー
赤ん坊から始める異世界転生。 目指すはロマンス、立ち塞がるのは現実と常識。 難しく考えるのはやめにしよう。 まずは…………掃除だ。

転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~

土偶の友
ファンタジー
 サクヤは目が覚めると森の中にいた。  しかも隣にはもふもふで真っ白な小さい虎。  虎……? と思ってなでていると、懐かれて一緒に行動をすることに。  歩いていると、新しいもふもふのフェンリルが現れ、フェンリルも助けることになった。  それからは困っている人を助けたり、もふもふしたりのんびりと生きる。 9/28~10/6 までHOTランキング1位! 5/22に2巻が発売します! それに伴い、24章まで取り下げになるので、よろしく願いします。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

処理中です...