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女装編
第12話 夢にまで見たオッパイ
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朝、目を覚ますと女になって……いなかった。
男のままなので、奏の恋人役をするのに問題はない。
「ヤスも私服をスカートにすればいいのに」
「いや、女体化していないから男なんだし、私服くらいはズボンで許してよ」
隔離された堤江洲女学園でも、文化的な最低限の生活が送れるように補償されており、毎月決まった額は通販で嗜好品を買うことができる。
「で、奏さんの恋人になったんだって?」
和子はちょっと怒り気味に泰彦に言った。
「どこからそれを?
恋人じゃなくて、恋人のフリ」
「何で黙ってたのさ」
「ゴメンゴメン、本当の恋人になったわけじゃないし、言う必要もないかなって」
「ホントに恋人じゃないの?」
「あくまでフリだよ」
「まぁ、いいや。でも、奏さんってヤス好みだからホントに恋人になった方がよかったんじゃない?」
「えへへ、カズもそう思う?」
顔がにやける。
昼を過ぎた頃、奏の家の執事が現れた。
男装の麗人で、背筋がシャキッとしている。
「お久しゅうございます。奏一おぼっちゃま」
「その名前は捨てたって言ってるでしょ。おぼっちゃまもやめてよ」
「申し訳ありません、奏お嬢様。
ところで、そちらの方は?」
「ワタシの恋人、霧山泰彦君」
「霧山です。初めまして」
「執事の坂元です。あなたが奏お嬢様の新しい恋人ですか。
どことなく旦那様に似ておいでのようで」
「そうなんですか?」
「あくまで雰囲気だよ」
(ひょっとして性癖が顔に出るのかも)
「ということだから、お父様には心配無用と伝えておいてくれ。
それと響二にも」
「キョウジさんっていうのが弟さん?」
「そう、縁談を持ちかけてくる黒幕は弟なんだ。
ワタシが女体化したことを自分の責任だと感じていて」
(実際は、そう仕向けた奏さんのせいなんだけど……)
「継承権が無くなったワタシが路頭に迷わないようにと、いいところへ嫁がせようと画策してるんだ。
お父様を巻き込んで」
「なるほど」
「ところで、失礼ですが霧山様はみたところ女性ではないようですが」
「ヤス君は女体化しない体質なんだ」
そんなことはまだハッキリ分かっていない、と言おうと思ったが奏に無言で止められた。
「そうでございましたか。ところで、つかぬことを伺いますが、お二人はどこまで進展さなっていますか?」
昨晩のことを思い出して顔が紅潮した。
それを見た執事はすべてを察し、深々とお辞儀をした。
「奏お嬢様をよろしくお願いいたします」
それから、奏と執事は二人で家のことを話し合い、小一時間ほどで帰っていった。
「今日はありがとうね。ヤス君」
執事と話していた時はどことなく強い口調だったのが、いつもの穏やかな奏の口調に戻っていた。
「いや、大したことしてないし」
「本当にありがとう。坂元は観察眼が鋭いですから。昨日の口裏合わせをしていなかったらバレるところでした」
「確かに、何も言わなくても分かってたみたい」
「これからも、ずっと恋人でいてくれますか?」
「えっ? あっ? ええっ……!?」
「ふふふ、冗談ですよ」
どこまで冗談か分からないけど、このまま女体化しないならそれもアリかなと想像する泰彦であった。
その夜、泰彦は夢を見た。自分に大きなオッパイが付いている夢を。
一人、裸で廊下を歩いていた。
足元はオッパイが邪魔をして見ることができない。
歩いていくと大きな鏡が出てきた。
覗き込むと女体化した自分が映る。
大きなオッパイは、Dカップはあるだろうか。
両手でタプタプさせてみる。
オッパイに注意が集中したが、他の部位も女性のそれになっていた。
邪魔なものがなく風通しがよくなった股間。
全体的にムッチリとふくよかな体。
長い髪の毛。
そして何より泰彦を驚かせたのは顔である。
「ママにそっくり!?」
女体化した泰彦は女性らしさがプラスされ、幼い頃に亡くしたママに似てきていたのである。
甘えたくても甘えられなくなった幼い頃の感情が蘇る。
大好きな対象と同一化した自分を認識すると、泰彦の心にポッカリと空いていた穴が多幸感によって埋められていった。
揉む方から揉まれる方へと変わってしまった泰彦。
気がつくと鏡の移る自分が元の男の自分に替わっていた。
ベッドに横たわり泰彦(男)にオッパイを揉まれる泰彦(女)。
オッパイを触られることで他人との触れ合いを肌で感じ安心感に包まれる。
乳首を触られると敏感に反応し快楽を得る。
泰彦(男)は胸の谷間に顔を埋める。
なんだか男の自分が可愛らしい子供のように思えた。
泰彦(男)は左の乳首に口をつけ舌先で乳首を根ぶり回しチュウチュウと吸い始めた。
なんだか男の自分が可愛らしい赤ちゃんのように思えた。
乳首を吸われて母性が目覚めた泰彦(女)は、オッパイから母乳が出るのを感じた。
お乳を飲む自分と、お乳を与える自分。
溶け合うように体を寄せあう二人はやがて一つとなり、大きなお腹の泰彦(女)だけとなった。
一つの体に二つの命。
人肌に温められた羊水の中、プカプカ浮かぶ泰彦は夢を見ていた。
やがて外の世界へいき、多くの友達や、運命の人と出会う夢を。
今はまだ閉ざされた囲いの中にいる自分……。
男のままなので、奏の恋人役をするのに問題はない。
「ヤスも私服をスカートにすればいいのに」
「いや、女体化していないから男なんだし、私服くらいはズボンで許してよ」
隔離された堤江洲女学園でも、文化的な最低限の生活が送れるように補償されており、毎月決まった額は通販で嗜好品を買うことができる。
「で、奏さんの恋人になったんだって?」
和子はちょっと怒り気味に泰彦に言った。
「どこからそれを?
恋人じゃなくて、恋人のフリ」
「何で黙ってたのさ」
「ゴメンゴメン、本当の恋人になったわけじゃないし、言う必要もないかなって」
「ホントに恋人じゃないの?」
「あくまでフリだよ」
「まぁ、いいや。でも、奏さんってヤス好みだからホントに恋人になった方がよかったんじゃない?」
「えへへ、カズもそう思う?」
顔がにやける。
昼を過ぎた頃、奏の家の執事が現れた。
男装の麗人で、背筋がシャキッとしている。
「お久しゅうございます。奏一おぼっちゃま」
「その名前は捨てたって言ってるでしょ。おぼっちゃまもやめてよ」
「申し訳ありません、奏お嬢様。
ところで、そちらの方は?」
「ワタシの恋人、霧山泰彦君」
「霧山です。初めまして」
「執事の坂元です。あなたが奏お嬢様の新しい恋人ですか。
どことなく旦那様に似ておいでのようで」
「そうなんですか?」
「あくまで雰囲気だよ」
(ひょっとして性癖が顔に出るのかも)
「ということだから、お父様には心配無用と伝えておいてくれ。
それと響二にも」
「キョウジさんっていうのが弟さん?」
「そう、縁談を持ちかけてくる黒幕は弟なんだ。
ワタシが女体化したことを自分の責任だと感じていて」
(実際は、そう仕向けた奏さんのせいなんだけど……)
「継承権が無くなったワタシが路頭に迷わないようにと、いいところへ嫁がせようと画策してるんだ。
お父様を巻き込んで」
「なるほど」
「ところで、失礼ですが霧山様はみたところ女性ではないようですが」
「ヤス君は女体化しない体質なんだ」
そんなことはまだハッキリ分かっていない、と言おうと思ったが奏に無言で止められた。
「そうでございましたか。ところで、つかぬことを伺いますが、お二人はどこまで進展さなっていますか?」
昨晩のことを思い出して顔が紅潮した。
それを見た執事はすべてを察し、深々とお辞儀をした。
「奏お嬢様をよろしくお願いいたします」
それから、奏と執事は二人で家のことを話し合い、小一時間ほどで帰っていった。
「今日はありがとうね。ヤス君」
執事と話していた時はどことなく強い口調だったのが、いつもの穏やかな奏の口調に戻っていた。
「いや、大したことしてないし」
「本当にありがとう。坂元は観察眼が鋭いですから。昨日の口裏合わせをしていなかったらバレるところでした」
「確かに、何も言わなくても分かってたみたい」
「これからも、ずっと恋人でいてくれますか?」
「えっ? あっ? ええっ……!?」
「ふふふ、冗談ですよ」
どこまで冗談か分からないけど、このまま女体化しないならそれもアリかなと想像する泰彦であった。
その夜、泰彦は夢を見た。自分に大きなオッパイが付いている夢を。
一人、裸で廊下を歩いていた。
足元はオッパイが邪魔をして見ることができない。
歩いていくと大きな鏡が出てきた。
覗き込むと女体化した自分が映る。
大きなオッパイは、Dカップはあるだろうか。
両手でタプタプさせてみる。
オッパイに注意が集中したが、他の部位も女性のそれになっていた。
邪魔なものがなく風通しがよくなった股間。
全体的にムッチリとふくよかな体。
長い髪の毛。
そして何より泰彦を驚かせたのは顔である。
「ママにそっくり!?」
女体化した泰彦は女性らしさがプラスされ、幼い頃に亡くしたママに似てきていたのである。
甘えたくても甘えられなくなった幼い頃の感情が蘇る。
大好きな対象と同一化した自分を認識すると、泰彦の心にポッカリと空いていた穴が多幸感によって埋められていった。
揉む方から揉まれる方へと変わってしまった泰彦。
気がつくと鏡の移る自分が元の男の自分に替わっていた。
ベッドに横たわり泰彦(男)にオッパイを揉まれる泰彦(女)。
オッパイを触られることで他人との触れ合いを肌で感じ安心感に包まれる。
乳首を触られると敏感に反応し快楽を得る。
泰彦(男)は胸の谷間に顔を埋める。
なんだか男の自分が可愛らしい子供のように思えた。
泰彦(男)は左の乳首に口をつけ舌先で乳首を根ぶり回しチュウチュウと吸い始めた。
なんだか男の自分が可愛らしい赤ちゃんのように思えた。
乳首を吸われて母性が目覚めた泰彦(女)は、オッパイから母乳が出るのを感じた。
お乳を飲む自分と、お乳を与える自分。
溶け合うように体を寄せあう二人はやがて一つとなり、大きなお腹の泰彦(女)だけとなった。
一つの体に二つの命。
人肌に温められた羊水の中、プカプカ浮かぶ泰彦は夢を見ていた。
やがて外の世界へいき、多くの友達や、運命の人と出会う夢を。
今はまだ閉ざされた囲いの中にいる自分……。
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