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第一話 脅迫された悪役令息は初恋に溺れる

02-2.

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「本題に入れよ」

 ディーンは机に置いた鞄に視線を落とす。

 鞄の中にはアレンが送ってきた脅迫文の書かれた手紙がある。

「どこまで知ってやがる」

 ディーンは脅迫された内容を否定するつもりはない。

 侯爵家の悪事をすべて知っていると書かれた手紙を受け取った時の恐怖感は残っているものの、それが根拠のない言葉だとは思えなかった。

 公には出ないように気を配っていたものの、大公家の権力を振りかざされてしまえば、口を開いてしまった共犯者もいるだろう。

「すべて知っていると書いただろ?」

「だから、何を知ってるのか。話せって言ってんだよ」

 ディーンの言葉に対し、アレンはわざとらしく微笑んだ。

 ……単身で乗り込んだのは間違いだったか。

 身の危険を感じる。

 笑顔を向けられたのにもかかわらず、肉食動物が獲物を見るような眼で見られているかのような錯覚に陥った。

 ……いや、でも、ヘンリエッタに関することで失敗をしたのが、ばれると余計に面倒な目になるし。

 周囲に相談をする相手がいなかったとはいえ、護衛の騎士を連れてくるべきだったかもしれない。

 ……連れてきたところで、セバスの爺みたいに追い返されるか。

 老年の執事さえも追い返されたことを思い出す。

 どちらにしても、ディーンだけしか大公邸に招き入れるつもりはなかったのだろう。

「王太子に近づこうとする令嬢と令嬢の一家を恐喝の末、社交界から追放。妹を王太子の婚約者にする為に賄賂を渡し、税金の一部を横領。侯爵領では奴隷商による人身売買の黙認、その上、亜人狩りをさせているだろう?」

 アレンは淡々と侯爵家が犯してきた行為を上げていく。

「宰相は評判こそ悪いが、国の利益にもなっている。宰相を手放す方が国にとっての損害になるだろうから、侯爵を追求することは難しいだろう」

 アレンの言葉に、ディーンは安堵する。

 侯爵家が犯してきた罪の多くは、ディーンの独断によるものだ。

 侯爵領での出来事に関しては、兄のブライアンによるものだが、ディーンが庇うこともできるだろう。

 一つ一つは貴族にとって大事にはならないようなことだ。

 しかし、それが重なり合えば、大きな罪になる。
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