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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる
06-17.
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……心臓の音が聞こえてしまいそうですわ。
メルヴィンの穏やかな顔を見ると鼓動が早くなる。恋しい気持ちがあふれ出しそうになる。それを抑え込む方法をアデラインは知らなかった。
「そうですわね。家族には正気を疑われましたもの」
「それはそうだろうな。心配にもなるだろう」
「わかっておりますわ。でも、お父様もお母様も条件を守るなら、好きにやってみていいと言ってくださったのよ」
アデラインの行動を止めようとする両親たちの姿を思い出す。
そこまでしなければならないのならば、婚約を白紙に戻せばいいと何度も言われたが、アデラインは両親の反対を押し切って、騎士となった。
だからこそ、男装がばれてしまえば、大人しく騎士であることを諦めて結婚をするという条件が課せられることになったのだ。
それが両親がアデラインを大切にしており、心から心配をしているからこその条件だったと知っている。
「お兄様なんて酷いのですよ。男装がばれて、それを理由に婚約を白紙に戻されることに20,000フォード賭けましたのよ」
「カーティスらしいな。賭け事の対象にしかならないとからかったのだろう」
「ええ。酷いお兄様でしょう? ですが、私の勝ちですわ。こうしてメルヴィン様の愛を勝ち取ることができたのも、私の奇策があってこそですもの」
アデラインの言葉を聞き、メルヴィンは笑った。
……笑っているお顔も素敵なこと。
いつまでも見ていられる。
アデラインは幸せな時間を堪能していた。
「そうか。それで、賞金でなにを買うつもりだ?」
メルヴィンの問いかけに対し、アデラインは首を傾げた。
……20,000フォードでなにが買えるのでしょう?
侯爵邸に呼び出されることが多い宝石商と会話をすることも不可能な金額だ。ドレスを一着買うこともできず、新しい剣や暗器を購入するのにもお金が足りない。
……アクセサリーは難しいかしら。
宝石箱の奥底に眠る安物のアクセサリーならば、手に入るかもしれない。
しかし、自由に使えるお金として渡されても、微妙に困る金額だった。
生まれた時から貴族であるアデラインには金銭価値がよくわからない。
身の回りにあるものは、すべて、最高品質で揃えられている日々を過ごしてきた為、平民にとっての大金である20,000フォードで購入することができるものがなにかすぐに思いつかなかった。
メルヴィンの穏やかな顔を見ると鼓動が早くなる。恋しい気持ちがあふれ出しそうになる。それを抑え込む方法をアデラインは知らなかった。
「そうですわね。家族には正気を疑われましたもの」
「それはそうだろうな。心配にもなるだろう」
「わかっておりますわ。でも、お父様もお母様も条件を守るなら、好きにやってみていいと言ってくださったのよ」
アデラインの行動を止めようとする両親たちの姿を思い出す。
そこまでしなければならないのならば、婚約を白紙に戻せばいいと何度も言われたが、アデラインは両親の反対を押し切って、騎士となった。
だからこそ、男装がばれてしまえば、大人しく騎士であることを諦めて結婚をするという条件が課せられることになったのだ。
それが両親がアデラインを大切にしており、心から心配をしているからこその条件だったと知っている。
「お兄様なんて酷いのですよ。男装がばれて、それを理由に婚約を白紙に戻されることに20,000フォード賭けましたのよ」
「カーティスらしいな。賭け事の対象にしかならないとからかったのだろう」
「ええ。酷いお兄様でしょう? ですが、私の勝ちですわ。こうしてメルヴィン様の愛を勝ち取ることができたのも、私の奇策があってこそですもの」
アデラインの言葉を聞き、メルヴィンは笑った。
……笑っているお顔も素敵なこと。
いつまでも見ていられる。
アデラインは幸せな時間を堪能していた。
「そうか。それで、賞金でなにを買うつもりだ?」
メルヴィンの問いかけに対し、アデラインは首を傾げた。
……20,000フォードでなにが買えるのでしょう?
侯爵邸に呼び出されることが多い宝石商と会話をすることも不可能な金額だ。ドレスを一着買うこともできず、新しい剣や暗器を購入するのにもお金が足りない。
……アクセサリーは難しいかしら。
宝石箱の奥底に眠る安物のアクセサリーならば、手に入るかもしれない。
しかし、自由に使えるお金として渡されても、微妙に困る金額だった。
生まれた時から貴族であるアデラインには金銭価値がよくわからない。
身の回りにあるものは、すべて、最高品質で揃えられている日々を過ごしてきた為、平民にとっての大金である20,000フォードで購入することができるものがなにかすぐに思いつかなかった。
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