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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる
07-2.
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「痛い目には遭いたくないでしょう?」
ドロシーはエリーの頬を指で掴む。
力を込めて掴まれている頬は痛くてしかたがないだろう。それなのに、エリーはなにも弱音を吐くことはしなかった。
「その道具と使い方をアタシに教えなさい」
ドロシーは何度目になるかわからない言葉を口にした。
ドロシーは知らなかった。
頬を抓る程度の暴力は拷問とは呼ばないことも、その程度で屈するような弱い心を持っていないということも、エリーのアデラインに対する忠誠心の高さも、なにもかも知らなかった。
だからこそ、その姿は痛々しいものだった。
エリーはドロシーに対し、冷めきった視線を向けていた。
それは、あまりにも痛々しい恋心に振り回されるドロシーに対し、同情をしてしまうものの、大公家のメイドを名乗るのにはお粗末すぎる態度に呆れてしまっていた。
「ドロシー」
エリーを軟禁している部屋の扉が開けられ、名を呼ばれた。
ドロシーは慌てながらエリーの頬から手を離し、緊張を隠せない面持ちで振り返った。そこにいるのは厳しい顔をしたメイド長だった。
「坊ちゃまがエリーさんを呼んでおります」
「そんな!」
「手荒な真似はしていませんね。ベラ、エリーさんを案内しなさい」
メイド長の声掛けを待っていたかのように、ドロシーと同年代のメイド、ベラが部屋に入る。それから、何事もなかったかのようにエリーの前に立った。
「エリーさん。お待たせいたしました。アデライン様の元にご案内いたします」
ベラはドロシーの姿が目に入っていないかのようだった。
「……この対応は、お嬢様は知っていますか?」
エリーは場の雰囲気に飲みこまれないようにする。
異質な雰囲気だった。まるでドロシーの単独で行われていたかのように振る舞いながらも、ここにエリーがいることを誰もが知っている。
それが不気味でしかたがなかった。
「知らないのですね。それならば、お嬢様に会う前に顔を洗わせてください。あの方は変化に敏感ですので」
エリーは告げ口をするつもりはなかった。
アデラインの手を煩わせたくなかった。
それだけの思いがドロシーの感情を逆なでするとは思ってもいなかった。
ドロシーはエリーの頬を指で掴む。
力を込めて掴まれている頬は痛くてしかたがないだろう。それなのに、エリーはなにも弱音を吐くことはしなかった。
「その道具と使い方をアタシに教えなさい」
ドロシーは何度目になるかわからない言葉を口にした。
ドロシーは知らなかった。
頬を抓る程度の暴力は拷問とは呼ばないことも、その程度で屈するような弱い心を持っていないということも、エリーのアデラインに対する忠誠心の高さも、なにもかも知らなかった。
だからこそ、その姿は痛々しいものだった。
エリーはドロシーに対し、冷めきった視線を向けていた。
それは、あまりにも痛々しい恋心に振り回されるドロシーに対し、同情をしてしまうものの、大公家のメイドを名乗るのにはお粗末すぎる態度に呆れてしまっていた。
「ドロシー」
エリーを軟禁している部屋の扉が開けられ、名を呼ばれた。
ドロシーは慌てながらエリーの頬から手を離し、緊張を隠せない面持ちで振り返った。そこにいるのは厳しい顔をしたメイド長だった。
「坊ちゃまがエリーさんを呼んでおります」
「そんな!」
「手荒な真似はしていませんね。ベラ、エリーさんを案内しなさい」
メイド長の声掛けを待っていたかのように、ドロシーと同年代のメイド、ベラが部屋に入る。それから、何事もなかったかのようにエリーの前に立った。
「エリーさん。お待たせいたしました。アデライン様の元にご案内いたします」
ベラはドロシーの姿が目に入っていないかのようだった。
「……この対応は、お嬢様は知っていますか?」
エリーは場の雰囲気に飲みこまれないようにする。
異質な雰囲気だった。まるでドロシーの単独で行われていたかのように振る舞いながらも、ここにエリーがいることを誰もが知っている。
それが不気味でしかたがなかった。
「知らないのですね。それならば、お嬢様に会う前に顔を洗わせてください。あの方は変化に敏感ですので」
エリーは告げ口をするつもりはなかった。
アデラインの手を煩わせたくなかった。
それだけの思いがドロシーの感情を逆なでするとは思ってもいなかった。
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