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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる

07-4.

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「坊ちゃまがお決めになれたことです」

 メイド長は淡々と告げる。

 強引にドロシーの手に押し付けた封筒は、前もって用意されていたのだろう。誰もが引き受けたがらないエリーの軟禁をドロシーに押し付けた時点で決まっていたことだった。

「ドロシー。貴女はアデライン様の専属メイドになりたいと言っていましたね」

「それがいけなかったとでも言うのですか!?」

 ドロシーは理解ができなかった。

 しかし、渡された解雇通知を床に叩きつけることもできない。

「いいえ」

 メイド長は冷たい声で否定する。

「アデライン様は代筆者のことを存じておりました。その上で代筆者に会いたいと申されたそうです」

 メイド長の話をドロシーは理解ができない。

 手紙の代筆を行っていたのはドロシーだ。

 しかし、それは大公家のメイド見習いとして孤児院から売り出されてから、すぐに与えられたドロシーだけの仕事だ。孤児院出身でありながらも、字を書くことに長けていた。それがドロシーの明暗を分けた。

「それなら、どうして、解雇に?」

 ドロシーは首を傾げた。

 六年間、手紙を代筆していた。メルヴィンの字に似せるようにと指示があっただけであり、手紙の内容は指示されていなかった。

 最初こそは遠慮がちに書いていた。

 それが次第に恋心が混じる文章へと変わっていった。

「坊ちゃまはアデライン様を独り占めしたいのでしょう」

 メイド長はドロシーに同情をしていた。

 ドロシーは仕事が得意ではない。六年の年月を働いていても、未だにメイド見習いから昇格することができない。それでも、解雇されなかったのは代筆者としての使い道があったからである。

 代筆者が必要となくなれば、ドロシーの役目も終わりだ。

 それをメイド長は遠回しに告げていた。

「仕事の斡旋はしてあげます。それ以降は自分で決めなさい。ドロシー、今から、すぐに荷物をまとめてきなさい。今日中に次の職場に連れて行きます」

 メイド長の言葉は冷たいものだった。

 次の仕事先を用意してあるのはメイド長の同情によるものだった。
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