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第二話 男装の令嬢は聖女を守りたい

01-2.

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「はい。お嬢様からも公言して構わないと言い付けられております」

 アデラインは肯定する。

 ディーンはアデラインの言葉の意味を理解するだろう。

「それは、……最悪だな」

 ディーンは言葉を選ぼうと一度は口を閉じたものの、すぐに本音を口にした。

 他に表現のしようがなかった。

「最悪ですか?」

「あぁ。最悪だ。最悪としか言いようがない」

「理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 アデラインは純粋に問いかけた。

 ……最悪といわれる筋合いはないのですが。

 婚約者の逢瀬は問題ではない。

 それどころか、仲睦まじい姿は微笑ましいものだ。今までの仲が最悪であったとしても、互いに歩み寄ろうとしていると前向きにとらえられてもおかしくはない。

 ……ディーンは私の気持ちを知っているはずです。

 幼馴染たちはアデラインの恋心を知っている。

 抑えきれない恋心をセシリアに打ち明け、それが次第に幼馴染たちの間で広がっていた。幼馴染たちはアデラインの恋心を知っているからこそ、男装をするというアデラインの選択を否定せず、こうして協力までしてくれている。

 それなのにもかかわらず、最悪だとディーンは断言した。

「もちろんだ。アデラインに伝えてくれ」

 ディーンはアディ・エインズワースとアデラインが別人であることを強調するように、わざとらしくアデラインの名を口にした。

 貴族として生まれ、騎士に選ばれた後も貴族社会と繋がりを持っている者たちならば、遠慮なく盗み聞きをしているだろう。

 それを利用したのだ。

 誰もアディの正体に違和感を抱かないように、ディーンは息をするように演技をする。それはあまりにも自然な振る舞いの為、誰も違和感を抱かない。

「次のパーティで騎士団長の顔を殴らねえといけない用事ができた。そのせいで騎士を辞めさせられたら、お前らの婚約を邪魔してやるから覚悟しておけ」

 ディーンは冗談を口にしているわけではない。

 この場で明言をしたのは、誰にも止められないようにする為だ。

「一言一句、間違うことなく伝えてくれよ」

 本気で殴るつもりなのだろう。

 ディーンの言葉に対し、アディは顔を引きつりながらも何度も頷いた。
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