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第二話 男装の令嬢は聖女を守りたい

01-1.騎士団長の補佐役の仕事は天職だった

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 翌日、アデラインは昼食を兼ねた休憩時間で訪れた騎士団食堂にて、昨日の噂を耳にすることになった。

「騎士団長殿とアデラインが一緒に居たって厄介な噂が流れたもんだぜ。そう思わないか、アディ?」

 当然のようにアデラインの隣に昼食を並べたディーンは、返答次第では協力者を止めると言わんばかりの顔をしていた。

 オルコット侯爵家の後継者として相応の教育を受けているディーンの表情の変化を読み取る者は、周囲にはいない。アデラインならばわかるだろうと訴えるかのように、わざとらしい振る舞いだった。

「セシリアも気が気じゃないみたいでな。すぐにでも話を聞きたいと言ってたくらいだぜ。今頃、お茶会の招待状が届いてる頃じゃねえかな」

 ディーンは他人事のように話をする。

 しかし、アデラインの正体を知っている為、わざと噂が広まるように仕向けているようにも見えた。

「そうですか」

 アデラインは食事の手を止める。

 ……本当に噂が広まるのは早いわね。

 瞬く間に広まっていったのだろう。

 数日以内に噂を真実のように書き、噂から膨らめた妄想を書き連ねたような悪趣味な新聞記事が出回るだろう。アデラインもどのような内容で書かれることになるのか、想像すらできなかった。

「お嬢様が外出されたのは事実です。使用人一同、耳を疑いましたから」

 アデラインは当事者としてではなく、エインズワース侯爵家の使用人でもあるアディ・エインズワースとして肯定した。

 ……全員に疑われたものね。

 アデラインの外出を知っているメイドたちの驚く姿は酷いものだった。

 エリーは取り乱しており、現実の出来事であると受け止められない様子だった。アデラインの世話をしているメイドたちの動揺がもっとも酷かったが、それはエインズワース侯爵邸で働く使用人たちの大半が同様の反応を示したことだろう。

 アデラインは使用人たちから愛されている。

 それは前世も今世も同じだ。

「……事実なのか?」

 ディーンは信じられないと言わんばかりの顔をした。どうやら、本気で驚いているようだ。
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