センパイ番外編 

ジャム

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アキタ x イズミサワ

夢で会えたら④

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サイト250万ヒット記念に書いたSS 第4弾 です。
※夢オチですが、男同士の妊娠出産ネタが出てきます。嫌悪感のない方のみお楽しみ下さい。


④ケイタの夢

セージが変な夢を見てから、少し元気がない。
いい夢だと言ってたのに、なぜか寂しそうな顔をしてる。

そんな事を考えながら眠ったせいだろうか。

オレはその夜、とてもリアルで恐い夢を見た。



「え・・?ここ、どこ?」
眩い光りに照らされて、目を開けると、腹部の激痛に驚き、体を捩ろうとして肩を上から押えられた。

「ケイタ!がんばれ!!」

「え・・な、何?え!?え?セージ?」

「力抜いて」

誰かの声。
訳がわからない。

「痛い・・っなに、これ・・イタ・・いっ・・痛い・・っ」

体の中を割かれるような痛みに、体が痙攣する。

両足が何かに固定されていて、逃げたくても逃げられない。

痛みに首を仰け反らせると、目の前にはセージの顔。

「あと、ちょっとだ」
また誰かの声。


何があとちょっとなんだ・・!?


「ちょっ、まって・・」

「待ったなし」
今度はキビキビとした女の人の声。

「はい、あと少しよ~、うまい、うまい」


だから、何がうまいんだ・・!?


「ケイタ、がんばれ!」

オレの顔を覗き込むセージの髪がバッサバサと揺れ、セージの目元が見えない。

「セージ・・」

と、その瞬間。

「フギャーー!オアーー!!オギャーッ」
と、赤ん坊のけたたましい泣き声が無機質な室内に響いた。


「やった!!ケイタ!!よくやった!!産まれたぞ!産まれた!!」

「え、うまれた?って・・え?」


うそだよな・・まさか・・オレ?


自分のすぐ顔の横へ、ナースらしい格好のおばさんがタオルに包んだ赤ん坊を持って来て見せる。

「ほらー、元気な男の子よ~!かわいいわねー!この目、ママ似ね~!」

そう言われて、マジマジと赤ん坊の顔を見つめるが、ギュッと目を瞑って泣いている赤ん坊の顔のどこが自分と似てるのかわからない。

「あの、ちょ、まって・・」


ナニコレ。
どうなってんの?
まさか・・今、オレが産んだ・・とか言う・・!?
コレを!?
オレが!?


「セージ・・」

どうしよう。オレ、子ども産んじゃったみたい。


こわごわ、セージの顔を見上げると、セージは目を真っ赤にさせてナースから赤ん坊を受け取っている。

その腕に抱いた赤ん坊をキラキラとした目で見つめ、「ちょっと兄貴達に見せてくる!」とドアの外へと飛び出して行ってしまった。

その直後、廊下から拍手喝采。万歳三唱、一体何人そこにいるんだよって人数の声がして、青褪めた。


いや、こんな事ある筈ない・・、これは夢だ。
絶対、夢だ。
そうだ、変な夢なんだ。
そう思って、自分の体に、目を覚ませと、言い聞かせる。

早く、早く、セージが戻ってくる前に、目を覚ませ、オレ!





パチッと目が開いた。
ほーら・・夢だった。
あ~・・恐かった。

赤ん坊産むとか・・どんだけセージに、母性本能くすぐられてんだ、オレ・・。

確かに、セージの子どもなら・・欲しい。

どんなに可愛いだろう。セージのミニチュア。

自分に似てる子どもなんて、遠慮したいけど、セージにそっくりの子どもなら、毎日キスしまくって愛してあげたい。



少し体を起こして、やけにリアルな夢だったな、と、水でも飲もうかとベッドから降りようとしたら。

すぐ隣に、小さな体が横たわっている事に気づく。

お腹にタオルケットを掛け、ぷにぷにした手足を折り畳んで、小さく丸まっている。

どう見ても、セージじゃない・・。
見た目、3歳程の大きさの子どもだ。


まさか・・自分の胸を抑えてみるが、心当たりがない。

何の心当たりかと言えば、誰かの子どもを預かったとか、遊びに来てるとか、親戚の子とか、拾って来た子とか・・。



とにかく。
自分が産んだ以外の心当たりが無いのだ。



マジ・・だったのか・・!?アレ・・!
オレ・・本当に赤ちゃん産んだのか・・!



そっと手を伸ばして髪を撫でてみる。

小さな子どもらしい、細くて柔らかな髪質に、自然、口元が弛んだ。

「汗かいちゃって・・」


そっか。
オレの子なんだ。オレとセージの。


そう思ったら、泣きたくなった。

胸の奥がじんわりとあったかくて、なんでか涙が溢れてくる。

グズグズと鼻を啜っていたら、寝ていた子どもが目を覚ましてしまった。

「まあま・・泣いてるの?」

小さな体を器用に腹筋で起こし、自分の腿の上に手をついて、ちょこんと自分の隣に座る子どもに、顔を下から覗き込まれた。


セージだよ・・これ、セージのミニチュア・・!


「まあま。ないない・・イタイのないない・・」

そう言って、ヨロヨロと立ち上がると、小さな手を伸ばして、ぎこちない動きでオレの頭を撫でてくれる。


どうしよう。

すごい幸せかも。

オレ、こんな幸せになったら、明日死んじゃうかも。

そう思うと、受け入れ難い。

どうしても、何かまだ裏があるんじゃないかとか、これは夢なんじゃないかとか疑ってしまう。

だけど、この可愛さは卑怯過ぎる。

体温の高い子どもの体。

それを両腕の中に抱き締める。


「まあま、まだイタイ?」

自分の胸に当たり前のように顔を埋める子どもに、オレは首を横に振った。

「もう、大丈夫だよ。ありがとう」


痛くないよ。何も痛くなんかない。

けれど、涙が零れてしまう。

こんなに愛しい存在に出会った事がない。

この温もりがオレのものなら、なんだってする。


だから、これが夢なら覚めないでくれ。
そう思わずにはいられなかった。
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