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サウアーの家は、彼の収入を考えるとつましいものだった。使用人も、通いの家政婦がふたりしかおらず、つまり今は誰もいなかった。
暖炉の火が焚かれていないと、広くはない居間もひんやりとしている。
「ごちゃごちゃしていて、悪いな」
「いいえ、こちらが押しかけたんだもの」
居間の壁には大きな本棚があって、沢山の書物が並べられていた。小さめのテーブルとソファが壁沿いに置かれていて、メーアはそのソファに腰を降ろした。
床にある毛足の短い絨毯は、独特の幾何学模様が織り込まれ、つやつやしている。たしか、ずっと東の国の品物だ。壁には、カラフルな鑑賞用のタイルが飾られ、暖炉の上には、みごとな絵付けの施された皿が並べられている。
サウアーは、てきぱきと暖炉に火を入れた。手馴れた様子だった。両親を失ってから長く、自分のことを一人でこなしてきたので、家政婦がいなくてもたいていのことはできるという。料理もすると聞いて、メーアは驚いた。
彼は上着を脱いで、白いシャツに紺色のパンツと言う格好になった。長靴は脱いで、歩きやすい部屋履きに変えている。ラフな格好だが、体を鍛え上げたサウアーが着ると、だらしなくは見えなかった。
読みかけの本が、テーブルの上に伏せられている。どうやら、少年向けの冒険談のようだった。これを読んでいるところを想像すると、ほほえましい。ページがわからなくならないように、紐の栞を挟みこんで、メーアはその本をテーブルの端にどけた。
「この服はどうだ?」
彼が持ってきたのは、淡い紅色のドレスだ。すべすべした生地で作られており、襟元は広く開いているが袖は長い。襟ぐりと、すその部分に細かく縫い付けられたビジューが、光を反射してきらきらした。胸下を絞っている以外は緩やかなつくりなので、おそらく着られるだろうとメーアは胸をなでおろした。タイトな作りのものは、着られる自信がない。
「それじゃあ、これを、お借りしてもいいかしら」
「いや、やるよ」
すその細かなよりぐけといい、ビジューの縫い付けといい、手の込んだ上等な品だ。売ればかなりの値がつくだろう。
サウアーは、頭をばりばりと掻いて、視線を逸らして言う。
「本当は、あんたに贈り物として渡そうと思ってたんだ。だから、多分、サイズも合うと思う」
「さ、サイズ?」
「あんたの仕立てをよくしている仕立て屋に頼んで、調整してもらった」
自分の服のサイズを知られていると思うと、いたたまれない気持ちになるが、サウアーにとっては、そこは問題ではないのだろう。
「……では、ありがたく」
「一人で着られるか?」
「ええ、大丈夫よ」
コルセットをぎゅうぎゅうに締めるスタイルではないので、きっとなんとかなるだろう。
サウアーが部屋を出て行ったのを確認して、メーアは肩からかけていた彼の上着を脱いだ。
大きく破られたドレスの胸元がすうすうする。
その部分を見ていると、先ほど自分の胸にむしゃぶりついてきた男を思い出して、体が震えた。ドレスの中の太腿も硬直する。まだあの酒臭い息が、自分の顔の横に漂ってくるような錯覚を覚えて、メーアは首を横に振った。
大丈夫。私は大丈夫。だって、未遂に終わったし、サウアーが助けに来てくれた。
彼が用意しておいてくれた水差しの水で、ハンカチを湿らせて、かるく首筋をぬぐう。あの男たちに触れられた部分が、まだぬめぬめするような気がして、気持ち悪かった。
ドレスを脱いで、ぎょっとした。
乳輪のまわりに、はっきりと歯型がついていた。とたんに、涙がこみ上げてきたが、ぐっとこらえる。
だから、大丈夫だ。私は、大丈夫。
だが、淡紅色のドレスを手にして、動けなくなった。
しばらくして、ドアをノックされた。
二度、三度とノックがあり、
「着替え終わったか?」
いぶかしげな顔をしたサウアーが、ドアの隙間から部屋を覗き込んだとき、メーアは上半身裸のまま、床にへたりこんでいた。
「おい?!」
サウアーが近くまで来たが、メーアの格好を見てそれ以上近づいていいのかわからず、おろおろする。
メーアは、新しいドレスに顔をうずめて、肩を震わせていた。
涙でドレスが汚れてしまう。サウアーに心配かけてしまう。色々な思いがこみあげるが、泣くのをやめられない。
壊れ物に触れるように、サウアーがそっとメーアの肩にふれた。
「……怖かった」
きっといつも以上に見られない顔になっているだろう。涙だけじゃなくて、鼻水もでているし、化粧は落ちているし、髪もくちゃくちゃだ。でも、彼の顔を見たかった。そうすれば、勇気がわくような気がして。
「怖かったんです、怖かった。触られて、服を……破かれて。もうだめだって、思いました」
しゃくりあげて、涙を手でぬぐう。
「怖かったな」
抱き寄せられ、メーアはサウアーの胸にしがみついた。かすかに甘い香水の匂いがする。
頭を撫でられると、後から後から涙がこぼれた。
「メーア」
名前を呼ばれ、顔をあげると、青い瞳が間近にあった。そして、ふわりと口付けられる。なだめるような優しさに、メーアは目をつぶった。
二度、三度と、ついばむような口付けを繰り返した後、サウアーはメーアの肩に手を置いて、その目を覗き込んで言った。
「二度と。二度とこんな目にはあわせない。俺が一生、あんたを守る。あらゆる苦難を、あんたから遠ざけてみせる。だから、頼む、俺の――俺の妻になってくれないか」
まっすぐな目をして、手を握られて。
彼は、じっとメーアの答えを待っていた。託宣を待つ、神官のように。
その目に打算や、駆け引きの色は見えない。ただただ、自分とともにありたいと訴えている。いままでそんな風に、自分を求めてくれる人は、誰一人としていなかった。だから、そういうことは、自分には縁がないのだと、あきらめていた。今日までは。
メーアはため息をついた。
「こんな弱っているときに――卑怯ですよ、エルンスト・サウアー」
そう言うと、彼が一瞬、泣きそうな顔をした。
「あなたはもっと計画的で、頭脳明晰で、損得勘定がしっかりできている方だと思っていました。それが、情にほだされて、こんな年増に引っかかるなんて」
「メ……」
サウアーの唇の前に、人差し指をたてて、メーアは彼の言葉を封じた。
「襲われたとき、私は、あなたを、――あなたに助けを求めました。父でもなく、あなたを。これがどういう意味かわかりますか? ……私を、一生守ってくださいますか? 本当に」
「あ、ああ、もちろんだ」
力任せに抱きしめられて、メーアは苦笑した。少し苦しい。やや伸びた彼のひげが、頬にちくちくする。
「一生、一生あんたを大事にする。だから、だから」
何度も口付けられる。されるがままだったメーアだが、途中から、自分でも彼の唇を求めた。
唇同士をあわせていると、おずおずと、サウアーが舌で唇をなぞってくる。メーアは、そっと口を開いた。すると、ためらいがちに、サウアーの舌が唇の隙間から侵入してきて、軽く前歯をなぞり、さらに奥に進んできた。
柔らかくて温かなものが、口内をさぐっていく。その感覚に、メーアは没頭した。上あごのを内側をなでられると、頭蓋にむかって掻痒感に似た痺れが走る。何度もそこを撫でられ、たまらず口を大きく開けると、声がもれた。
「んん……」
薄く目を開けると、青い目と視線がかち合う。
うっとりしているところを見られたと思うと、羞恥心で顔が熱くなった。そしてなぜか、へその下がきゅうっとなる。
「目を開けるなんて、反則です」
「こういうことに、ルールはないだろ」
そう問い返されても、初めてなので、作法もよくわからない。
メーアはそこで初めて、サウアーの脚の間を見て、思わず彼の顔を見た。
サウアーは気まずそうに視線を逸らした。
「いや、その……悪い。だが、大丈夫だ、今日はそんなことしない。もちろん、結婚が無事済むまで、……その、我慢するようにするから」
急によそよそしくなって、彼はそそくさと身を離して、メーアの肩に、放り出されていた自分の上着をかけた。
よく見れば、耳が赤い。青い目がうろうろと落ち着かなく床をさまよっている。
メーアは自分の体を見下ろした。
くびれがなくてぽよんと出たお腹に、太い腿。触り心地は悪くないだろうけれど、見た目はいまいちだ。胸よりおなかがでていないだけ、ましだろうか。少なくても、今流行の腰のくびれを強調するドレスを着た若い娘たちのような美しさはない。
だが、彼は。こんな自分を見て、欲情している。しかも、神聖なもののように、手を触れるのをためらっている。
そのことに、背筋がぞくぞくした。喜びと期待が入り混じって、胸を満たす。
「ねえ、エルンスト」
彼の頬に手を添える。名を呼ばれて、サウアーがようやく顔をあげた。
「メーア?」
「私、あなたに結婚を申し込まれて、最初はとても驚いたけれど、うれしかったんです。今日はとても素敵な日だと思ったの。でも、あんなことがあって、台無しになってしまった」
眉宇を曇らせると、サウアーもつられて暗い顔になる。ああ、可愛らしい。メーアは今すぐ彼の唇に自分のそれを押し当てたい衝動をこらえながら、続けた。
「だからねえ、エルンスト。今日を私の素敵な日にしてくださらない」
彼はすぐに察して、首を横に振った。
「だ、だけど、そんな、あんたいいのか? さっきあんなことがあったのに」
「あんなことがあったからこそ。あなたがどれだけ私に優しくできるか、証明してください」
唇を押し当てる。彼の唇に。
初めは硬く閉じていた唇だが、先ほどの彼を真似て、その合わせ目をちろちろと舐めていると、やがて開いて、メーアの舌を受け入れた。
暖炉の火が焚かれていないと、広くはない居間もひんやりとしている。
「ごちゃごちゃしていて、悪いな」
「いいえ、こちらが押しかけたんだもの」
居間の壁には大きな本棚があって、沢山の書物が並べられていた。小さめのテーブルとソファが壁沿いに置かれていて、メーアはそのソファに腰を降ろした。
床にある毛足の短い絨毯は、独特の幾何学模様が織り込まれ、つやつやしている。たしか、ずっと東の国の品物だ。壁には、カラフルな鑑賞用のタイルが飾られ、暖炉の上には、みごとな絵付けの施された皿が並べられている。
サウアーは、てきぱきと暖炉に火を入れた。手馴れた様子だった。両親を失ってから長く、自分のことを一人でこなしてきたので、家政婦がいなくてもたいていのことはできるという。料理もすると聞いて、メーアは驚いた。
彼は上着を脱いで、白いシャツに紺色のパンツと言う格好になった。長靴は脱いで、歩きやすい部屋履きに変えている。ラフな格好だが、体を鍛え上げたサウアーが着ると、だらしなくは見えなかった。
読みかけの本が、テーブルの上に伏せられている。どうやら、少年向けの冒険談のようだった。これを読んでいるところを想像すると、ほほえましい。ページがわからなくならないように、紐の栞を挟みこんで、メーアはその本をテーブルの端にどけた。
「この服はどうだ?」
彼が持ってきたのは、淡い紅色のドレスだ。すべすべした生地で作られており、襟元は広く開いているが袖は長い。襟ぐりと、すその部分に細かく縫い付けられたビジューが、光を反射してきらきらした。胸下を絞っている以外は緩やかなつくりなので、おそらく着られるだろうとメーアは胸をなでおろした。タイトな作りのものは、着られる自信がない。
「それじゃあ、これを、お借りしてもいいかしら」
「いや、やるよ」
すその細かなよりぐけといい、ビジューの縫い付けといい、手の込んだ上等な品だ。売ればかなりの値がつくだろう。
サウアーは、頭をばりばりと掻いて、視線を逸らして言う。
「本当は、あんたに贈り物として渡そうと思ってたんだ。だから、多分、サイズも合うと思う」
「さ、サイズ?」
「あんたの仕立てをよくしている仕立て屋に頼んで、調整してもらった」
自分の服のサイズを知られていると思うと、いたたまれない気持ちになるが、サウアーにとっては、そこは問題ではないのだろう。
「……では、ありがたく」
「一人で着られるか?」
「ええ、大丈夫よ」
コルセットをぎゅうぎゅうに締めるスタイルではないので、きっとなんとかなるだろう。
サウアーが部屋を出て行ったのを確認して、メーアは肩からかけていた彼の上着を脱いだ。
大きく破られたドレスの胸元がすうすうする。
その部分を見ていると、先ほど自分の胸にむしゃぶりついてきた男を思い出して、体が震えた。ドレスの中の太腿も硬直する。まだあの酒臭い息が、自分の顔の横に漂ってくるような錯覚を覚えて、メーアは首を横に振った。
大丈夫。私は大丈夫。だって、未遂に終わったし、サウアーが助けに来てくれた。
彼が用意しておいてくれた水差しの水で、ハンカチを湿らせて、かるく首筋をぬぐう。あの男たちに触れられた部分が、まだぬめぬめするような気がして、気持ち悪かった。
ドレスを脱いで、ぎょっとした。
乳輪のまわりに、はっきりと歯型がついていた。とたんに、涙がこみ上げてきたが、ぐっとこらえる。
だから、大丈夫だ。私は、大丈夫。
だが、淡紅色のドレスを手にして、動けなくなった。
しばらくして、ドアをノックされた。
二度、三度とノックがあり、
「着替え終わったか?」
いぶかしげな顔をしたサウアーが、ドアの隙間から部屋を覗き込んだとき、メーアは上半身裸のまま、床にへたりこんでいた。
「おい?!」
サウアーが近くまで来たが、メーアの格好を見てそれ以上近づいていいのかわからず、おろおろする。
メーアは、新しいドレスに顔をうずめて、肩を震わせていた。
涙でドレスが汚れてしまう。サウアーに心配かけてしまう。色々な思いがこみあげるが、泣くのをやめられない。
壊れ物に触れるように、サウアーがそっとメーアの肩にふれた。
「……怖かった」
きっといつも以上に見られない顔になっているだろう。涙だけじゃなくて、鼻水もでているし、化粧は落ちているし、髪もくちゃくちゃだ。でも、彼の顔を見たかった。そうすれば、勇気がわくような気がして。
「怖かったんです、怖かった。触られて、服を……破かれて。もうだめだって、思いました」
しゃくりあげて、涙を手でぬぐう。
「怖かったな」
抱き寄せられ、メーアはサウアーの胸にしがみついた。かすかに甘い香水の匂いがする。
頭を撫でられると、後から後から涙がこぼれた。
「メーア」
名前を呼ばれ、顔をあげると、青い瞳が間近にあった。そして、ふわりと口付けられる。なだめるような優しさに、メーアは目をつぶった。
二度、三度と、ついばむような口付けを繰り返した後、サウアーはメーアの肩に手を置いて、その目を覗き込んで言った。
「二度と。二度とこんな目にはあわせない。俺が一生、あんたを守る。あらゆる苦難を、あんたから遠ざけてみせる。だから、頼む、俺の――俺の妻になってくれないか」
まっすぐな目をして、手を握られて。
彼は、じっとメーアの答えを待っていた。託宣を待つ、神官のように。
その目に打算や、駆け引きの色は見えない。ただただ、自分とともにありたいと訴えている。いままでそんな風に、自分を求めてくれる人は、誰一人としていなかった。だから、そういうことは、自分には縁がないのだと、あきらめていた。今日までは。
メーアはため息をついた。
「こんな弱っているときに――卑怯ですよ、エルンスト・サウアー」
そう言うと、彼が一瞬、泣きそうな顔をした。
「あなたはもっと計画的で、頭脳明晰で、損得勘定がしっかりできている方だと思っていました。それが、情にほだされて、こんな年増に引っかかるなんて」
「メ……」
サウアーの唇の前に、人差し指をたてて、メーアは彼の言葉を封じた。
「襲われたとき、私は、あなたを、――あなたに助けを求めました。父でもなく、あなたを。これがどういう意味かわかりますか? ……私を、一生守ってくださいますか? 本当に」
「あ、ああ、もちろんだ」
力任せに抱きしめられて、メーアは苦笑した。少し苦しい。やや伸びた彼のひげが、頬にちくちくする。
「一生、一生あんたを大事にする。だから、だから」
何度も口付けられる。されるがままだったメーアだが、途中から、自分でも彼の唇を求めた。
唇同士をあわせていると、おずおずと、サウアーが舌で唇をなぞってくる。メーアは、そっと口を開いた。すると、ためらいがちに、サウアーの舌が唇の隙間から侵入してきて、軽く前歯をなぞり、さらに奥に進んできた。
柔らかくて温かなものが、口内をさぐっていく。その感覚に、メーアは没頭した。上あごのを内側をなでられると、頭蓋にむかって掻痒感に似た痺れが走る。何度もそこを撫でられ、たまらず口を大きく開けると、声がもれた。
「んん……」
薄く目を開けると、青い目と視線がかち合う。
うっとりしているところを見られたと思うと、羞恥心で顔が熱くなった。そしてなぜか、へその下がきゅうっとなる。
「目を開けるなんて、反則です」
「こういうことに、ルールはないだろ」
そう問い返されても、初めてなので、作法もよくわからない。
メーアはそこで初めて、サウアーの脚の間を見て、思わず彼の顔を見た。
サウアーは気まずそうに視線を逸らした。
「いや、その……悪い。だが、大丈夫だ、今日はそんなことしない。もちろん、結婚が無事済むまで、……その、我慢するようにするから」
急によそよそしくなって、彼はそそくさと身を離して、メーアの肩に、放り出されていた自分の上着をかけた。
よく見れば、耳が赤い。青い目がうろうろと落ち着かなく床をさまよっている。
メーアは自分の体を見下ろした。
くびれがなくてぽよんと出たお腹に、太い腿。触り心地は悪くないだろうけれど、見た目はいまいちだ。胸よりおなかがでていないだけ、ましだろうか。少なくても、今流行の腰のくびれを強調するドレスを着た若い娘たちのような美しさはない。
だが、彼は。こんな自分を見て、欲情している。しかも、神聖なもののように、手を触れるのをためらっている。
そのことに、背筋がぞくぞくした。喜びと期待が入り混じって、胸を満たす。
「ねえ、エルンスト」
彼の頬に手を添える。名を呼ばれて、サウアーがようやく顔をあげた。
「メーア?」
「私、あなたに結婚を申し込まれて、最初はとても驚いたけれど、うれしかったんです。今日はとても素敵な日だと思ったの。でも、あんなことがあって、台無しになってしまった」
眉宇を曇らせると、サウアーもつられて暗い顔になる。ああ、可愛らしい。メーアは今すぐ彼の唇に自分のそれを押し当てたい衝動をこらえながら、続けた。
「だからねえ、エルンスト。今日を私の素敵な日にしてくださらない」
彼はすぐに察して、首を横に振った。
「だ、だけど、そんな、あんたいいのか? さっきあんなことがあったのに」
「あんなことがあったからこそ。あなたがどれだけ私に優しくできるか、証明してください」
唇を押し当てる。彼の唇に。
初めは硬く閉じていた唇だが、先ほどの彼を真似て、その合わせ目をちろちろと舐めていると、やがて開いて、メーアの舌を受け入れた。
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