わたし、九尾になりました!! ~魔法と獣医学の知識で無双する~

惟名 水月

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妖狐の里編

4話 ケットシー

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 背丈もちょうど同じくらいだったので、俺はルカの服を借りることにした。お尻のとこにしっぽを出す用の穴が空いているが、仕方無い。白衣を着れば見えないだろう。

 服の用意も必要だな……

「ところで、なんでルカはあんな森の中にいたんだ?」

 俺はルカに尋ねた。

「あのね!流行病にはヒポクラテスって言う植物から取れる実が効くって人間から聞いたんだ!だからそれを探しに行こうと思って!」

「ヒポクラテスの実か……」

――もしや、森の番人たるアルラウネならその場所をしってるかもしれんのう

 またなんかよくわからない奴らが出てきたぞ。アルラウネ?

――アルラウネは森奥深くに住むといわれているが、わらわも詳しい場所はわからぬ

「そうなると、まずはこの里の妖狐たちの様子を見るのが先だな、ルカ案内してくれないか?」

「イーナ様の頼みとあらば、どんとこいだよ!」

 ルカは里の端にある家へと案内してくれた。

 最初の患者

 妖狐のお爺ちゃん、年齢は……まあ俺には計り知れないんだろう

 主訴:腹痛、下痢



 あれ?

 問診を終えて、家を出た俺はルカに尋ねた。

「この里で流行ってるのって腹痛とか下痢なのか?」

「そうなの!定期的に腹痛や下痢が流行って、すごい勢いで広まるんだ!ちょっと前からまた流行りだして大変なの!」

「サクヤの病気とはまた違うものらしいな」

――そうなのか、む

「しかし、放ってはおけないしな」

 そうは言ったものの、現状俺に出来る手段は問診、聴診、レントゲン(透視)のみだ。これだけではとうてい病気の同定なんて不可能であるのは事実だ。

「とりあえず、やるべき事は沢山あるんだ。診療体制を整えなきゃいけないし、薬の用意だって必要だ。後は、公衆衛生の改善もしないといけない」

――はて?こーしゅーえいせいとは?

 同じ疑問をルカも持ったようだ。俺は説明を続ける。

「病気を治すって言うのはわかりやすい治療なんだけど、病気にならないように予防するって言うのも重要な治療法の一つなんだ」

「例えば、綺麗な飲み水の確保、後は汚い水の処理、そうだな、後は安全な食べ物の確保って言うのもあるな」

――ふむ、なにやら、やることが一杯ある事だけはわかったわい

「まずやるべき事をリストアップして優先順位を付けるのが大事かな」

「イーナ様!ルカに手伝えることがあればやるよ!!あと健康な里のみんなもきっと協力してくれるはずだよ!」

「そうだな、とりあえずは綺麗な水の確保が一番重要かな、この里で流行っている病気の様子を見ると、いま出来る治療法は脱水症状にならないように、水をきちんと飲ませることだね。ルカ、水飲み場に案内して欲しい」

「水はね、里の外れの川からとってきてるんだよ!川の水とっても綺麗なんだよ!」

 ルカに案内された川の水は確かに透き通るように綺麗であった。

「水はまあ綺麗か、けどそのままとってくるんじゃ危ないからな、煮沸消毒は必要だよ。」

「しゃふつ? しょうどく?」

 ルカは首をかしげる。

「どんなに綺麗でも、水の中には細菌って言われる生物やウイルスっていわれるもの、あと虫とかもいるからね!」

 まずは、衛生環境を整えることが必要だな…… 

 やることがもりもりと増えていくぞ……

「そういえば、トイレってどうなってるの?」

「トイレちゃんとあるよ!それでね、集めて肥料として畑とか森にまくの!美味しい野菜が取れるんだよ!」

 これもそのうち改善が必要だな……

 この里の課題は何となく分かった。これは改善点を、後でみんなに伝えてなんとかして貰うしかない。

 あとは……

「なあルカ、アルコールって知ってる?」

「アルコール?」

 分からないようだった。

「お酒のことだよ」

――わらわ、お酒は知っとるぞ、大好物じゃ

「お酒はこの里でも作ってるよ!」

 一つ、視界が開けた。お酒があればエタノールは得られる。

「なんでお酒のこときくの?もしかしてイーナ様もお酒すきなの!」

 確かにお酒は好きだけど……

「お酒を飲むと酔っ払うだろ?あれはアルコールって言う成分のせいなんだ。そしてアルコールを精製するとエタノールっていう薬が得られる。エタノールがあればいろんな細菌とかウイルスとか悪さする奴らを殺すことが出来るんだよ」

――お酒って凄いんじゃの……

 それにエタノールがあれば、いずれジエチルエーテルも作れるだろう。麻酔薬であるジエチルエーテルが手に入れば、手術も可能になる。

「あとは、塩だ、塩は何かと必要になる」

「山の方にしょっぱい水の湖があって、そこで塩は取れるの!」

 塩の確保もなんとか出来そうだ。

「塩は何に使うの?」

「塩からは塩素って言う成分がとれてね、それも消毒作用があるんだ!あとはそのまま水を飲ませるよりも、ちょっと塩を入れた水を飲ませた方が、病気の時にはいいんだよ。」

 しかし、妖狐はすごい力を持っているけど、まだまだ知識では人間には及ばないんだな……

「まずは、いろいろと整備が必要だな」

「イーナ様すごい!!とりあえず里のみんな集めよう!」

 ルカはきらきらした目で言った。

――それならわらわにまかせるがよい

 こうして、集まった里の妖狐に同じような説明を俺は繰り返した。みんな最初はよくわかっていないような感じではあったが、病気を治すためだというと俺の考えに快く賛同してくれた。

「それでまずはなにをすればいいんですか?」

 妖狐を代表して里長が問いかけてきた。

「それが問題だな。足りないものがおおすぎる」

 何から手を付けるべきか悩んでいると集まっている妖狐達の方から声が上がる。

「ならばちょうど良いニャ!ボクらは水を綺麗にする植物を知ってるニャ!!」



 えっ? ニャ?

 聞き慣れない語尾に皆一斉に声のした方向を見る。明らかに狐ではない。

「ぼくはケットシー、猫の妖精なのニャ」

「ケットシー?」

――森に住む猫じゃ

 また何かよくわからない奴らが出てきた。猫は続ける。

「じつは妖狐の皆様に助けてもらえないかニャと思ってきたんだニャ」

「妖狐の皆様は神通力って言う、不思議な力を使うと聞いたニャ」

「ボクらアルラウネと一緒に、アルラウネの里っていう綺麗なところで暮らしてるんだけど、最近、よく鬼の群れが襲ってきて、大変なのニャ。だから妖狐の皆様のお力を借りれないかと思って来たのニャ!」

 アルラウネ。先ほど出てきた森の番人とやらだ。

――しかし、ケットシーよ、貴様らは魔法を使えるじゃろ、それでも対抗出来ないというのか?

 サクヤは猫に問いかける。

「追い払っても追い払っても鬼達はしつこいのニャ!痛い目に合わせなきゃだめなのニャ!」

――まあよい、ケットシーよ、わらわが力を貸してやろう、その代わりに植物は貰うぞ

「もちろんなのニャ!ケットシーとアルラウネと妖狐はみんな友達なのニャ!」

 なんか、俺の入る隙がないままに話が決まってるんですけど……

 この猫なんかお調子者だし……

「いやちょっと待って……鬼の群れって……」

 俺が口を開くと、間髪いれずにルカが口を挟む

「大丈夫だよ!イーナ様滅茶苦茶強いもん!!鬼なんて敵じゃないよ!!」

 そうだ、そうだ!

 イーナ様、サクヤ様お願いします!

 妖狐達も乗り気になってしまった。

「ええ……」

――良いではないか、イーナよ、ヒポクラテスの実とやらも手に入るかもしれん



 こうして、半ば強制的に鬼退治の旅に向かうこととなった……

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